「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー・クロノグラフ」という名称にあるように、このモデルのクロノグラフ機能に組み合わされているのは、パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)である。この機能は、日付、曜日、12カ月の月名を表示するだけでなく、月の日数や4年毎の閏年も計算に入れて自動調整し、カレンダーの各情報を正しく表示する高度な複雑機構である。

この時計に刺激を受けるのは、こんな男だ!


・技術の最先端に目を向けている人
・とことん頂点を極めたい人
・ロジカルな思考を好む人

グレゴリウス暦に基づくパーペチュアルカレンダーは、通常100年単位で設計されている。現在を起点として時計が休みなく動き続けるとしたら、次に閏年が平年になる西暦2100年まで人為的なカレンダー修正はいっさい不要という、高度に計算されたメカニズムである。IWCの「ダ・ヴィンチ」が“天才”たるゆえんは、一般的には閏年と月・日・曜日表示だけのパーペチュアルカレンダー機構に、4桁の西暦表示も加えた独創性にある。

ダイヤル上、7‐8時位置に4桁の西暦表示を備える。12時位置のインダイヤル内に見えるのがムーンフェイズ

西暦表示は、世紀の2桁の数字を記した「センチュリースライド」と呼ばれるバーと、10年と1年の数字を記した回転ディスクを組み合わせて行われ、それぞれ100年、10年、1年毎に一つ先へと進むきわめて精巧な仕組みになっている。センチュリースライドの交換と、閏年が平年になる西暦2100年、2200年、2300年に時計師が修正を加えるだけで(2400年は閏年なので修正不要)、2599年まで表示可能という、ほぼ手間いらずのパーペチュアルカレンダーなのだ。

そのカレンダー機構と同様に驚かされるのが、ムーンフェイズの正確さだろう。時計上のムーンフェイズの表示と実際の月の満ち欠けとの間に生じるずれは、なんと577.5年に1日分という高精度。これほどの機構を腕時計というコンパクトなサイズに収め、すべての機能がリュウズのみで操作できる画期的なメカニズムは、コレクション名の由来となったレオナルド・ダ・ヴィンチの異才を想起させるほど秀逸である。

1985年に誕生した初代「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー」。秀逸な永久カレンダーとクロノグラフを併せ持ちつつ、量産モデルでコストパフォーマンスが抜群という点でも画期的だった
永久カレンダー機構を設計した伝説の時計師クルト・クラウス氏。いまだ現役で、ジュネーブサロンなどに姿を見せる

新世代モデルが、初代のダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダーと異なるのは、クロノグラフの大幅に進化した機能と表示である。操作面では、計測中にリセットと再スタートが一度に素早く行えるフライバック機能が備わり、積算については、12時位置のサブダイアルに経過時間がふつうの時計のように時針と分針で表示され、さらにここにムーンフェイズ表示も統合されている。このような設計はIWCでは初の試みである。ムーブメントも以前とはまったく違う最新の自社製自動巻きに置き換えられている。

8分の1秒まで正確に計測可能なクロノグラフと、500年以上も先のカレンダーをプログラミングした永久カレンダー。一つの複雑時計にミクロとマクロの世界が同時に存在するのは、まさに機械式時計の超絶技術ならではだ。手元に最高精度のタイムピースがある喜びは、技術職のみならず、ハイエンドを求めるビジネスマンにも感じて欲しいものだ。

働く男を刺激するクロノグラフ#10
IWC「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー・クロノグラフ」

ステンレススティールケース。ケース径43mm。自動巻き。アリゲーター・ストラップ。3気圧防水。338万円(税別)

初代「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー」から30年以上を経て2017年に発表された21世紀の新世代モデルは、ラウンドケースに回帰した新しいデザインを採用し、クロノグラフの時・分積算計とムーンフェイズを統合したサブダイアル、68時間のパワーリザーブとリュウズのみで永久カレンダーの全表示を送ることができる自社製自動巻きの新型ムーブメントなどが特色。

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