――“ビジネスマンは効率良く働くべき”とのことですが、具体的に実践されていることはありますか。

業務や会議をスケジュール通りに行うことを基本としています。また、無駄な時間をつくらないことも効率を高めるポイント。私の場合は昼食を外食に頼らず、用意したものを社内でとるようにしています。外食の場合、お店が混んでいたりすると予想以上に時間を浪費してしまう場合がありますから。

――時間の有効活用といった考え方は、なにか切っ掛けがあって生まれたのでしょうか?

妻に注意されたことがひとつの切っ掛けです。あるとき待ち合わせに遅れてしまい、「私の時間を返して」とクレームを受けまして(笑)。そこであらためて痛感しました。ルーズな行動は、他人に対して大きな悪影響を与えてしまうと。プライベートな約束ならまだしも、会社全体のなかでそういった悪影響が積み重なると、やがて大きなトラブルに繋がりかねません。それ以来、スケジュールに対する考え方がよりシビアになりました。

――スケジュール通りに働けばスムーズに業務も片づき、ひいては無駄な残業などもなくなるということですね。

その通りです。当社では週ごとの休みに加え、会社として長期休暇を年間3度取得するように促しています。ゴールデンウイーク、夏休み、年末年始の休日ですね。しっかり長期休暇を取得してリフレッシュすることで、普段の業務への集中力も高まると考えています。

――社長自身はオフタイムをどのように過ごされていますか。

40歳を過ぎた頃からジム通いを始めており、主に筋トレなどワークアウトを行っています。目的のひとつは体幹を鍛えること。上半身、下半身ともにバランス良く筋肉を付けることで代謝が上がり、スマートな体型をつくり出せるのです。また、体幹が整えば姿勢も良くなります。そしてバランス良く筋肉が付いたかどうかを確認する意味で、ランニングやサイクリングなども同時に行っています。

――体を理想的につくり上げることで、服装などスタイルも洗練されたものになるということですね。

体型づくりに加え、身体の代謝を上げると体内の老廃物も排出できます。身体にとって不必要なものを外部に出すことは、アンチエイジングの基本。肌も健康的に保たれ、シワも防げるといいます。せっかく揃えた服の見映えを損なわないためにも、着る人も努力すべきと考えます。

スーツと同じくNAOKI‐Rでオーダーした革ジャン。オフのスタイルでも遊び心を忘れない

――今日のスーツスタイルは、若々しい雰囲気がとても印象的です。

細身スタイルを自分の個性のひとつにしています。これまでもシャープなスーツを選んできましたが、NAOKI‐Rの一着は、なかでも若々しいデザインがポイント。オーダーメイドゆえに体にフィットした仕立てであるのはもちろん、一般的なブランドでは見られないこだわりが込められています。そのひとつが特別な素材使い。このスーツの生地も非常にしなやかな薄手ウールを使用しており、細身でありながら快適な着心地が味わえます。

――オンタイムは常にスーツスタイルなのでしょうか。

いえ、そうではありません。我々ゲーム業界の人間は非常にラフなスタイルで働くことも多いです。出張で海外の会議などに出席しても、ネクタイを締めているのは日本人くらい。私も普段はコットンパンツにシャツといった装いですが、レセプションや会議のシーンではスーツスタイルで臨みます。義務感で着用するのではなく、ひとつの選択肢としてスーツを選ぶということです。義務感や惰性で着用したスーツ姿はどうしても“着せられた”感じになりがち。一張羅のポテンシャルを引き出す意味でも、積極的にスーツと向き合い楽しむよう心掛けています。

辻本春弘/Haruhiro Tsujimoto
カプコン 代表取締役社長
1964年、大阪府生まれ。大阪商業大学商経学部卒業。87年カプコンに入社し、アミューズメント施設運営事業の立ち上げに貢献。97年に取締役に就任し、家庭用ゲームソフト事業の強化に注力。2007年、創業者である父・辻本憲三から社長職を引き継ぎ現職に。

text:Tsuyoshi Hasegawa(Zeroyon)
photograph:Sadato Ishizuka
hair & make:RINO