荒木町の名バーテンダーがこっそり指南

今回、ハイボールの美味しい作り方のコツをお聞きするのは荒木町の『バー エルラギート』。重厚感のある扉を開け、上質なシガーの香りが鼻をくすぐる店内に入ると、バックバーには、あらゆるボトルが整然と並べられており、本多さんが「いらっしゃいませ」と、柔和な笑顔で迎え入れてくれた。

店主の本多 聡さん。知識や技術はもとより、つかず離れずのサービスも心地良い

本多さんにお願いしたのは「自宅で極上のハイボールを簡単に作る方法」。ハイボールはもちろん、緻密で精巧なカクテルにも定評のある本多さんが提案してくれたのは、聞けば必ず試してみたくなる、簡単だけれども奥が深いハイボールの作り方だった。

氷の選び方と霜を取るだけで、格段にキレが変化

「ハイボールを自宅で美味しく作るために一番大切なポイントは?」と訊ねると、開口一番「氷の大きさの一点に尽きます」と本多さん。

グラスを事前によく冷やしておくこと、泡を壊さないようにゆっくりステア(軽くかき混ぜる)こと、ベースのウィスキーはできるだけ良いものを使うこと。といった内容の回答を想像していたため「氷の大きさ」とはかなり予想外だった。

氷の選び方と霜を取るだけで、格段にキレが変化

「実際飲み比べてみるとよくわかりますが、氷が大きいとハイボールの持ち味である炭酸のキレを感じづらくなってしまいます。味わいは好みによって変わりますので、なるべく均等な大きさの氷を選んでハイボールを作り、自分好みの味になる氷の大きさをみつけることをお薦めします。氷の形状にあまり意味はないので、コンビニのロックアイスでかまいません」

なるほど。本多さんが氷の大きさを使い分けて作ったハイボールを飲み比べてみると、子どもの握りこぶし大を2~3個使用した一杯よりも、それよりも小ぶりの氷を5~6個使った氷で作ったハイボールの方が、炭酸のキレが格段によい。

「薄張りのグラスのほうが口当たりがよいとか、ベースのウィスキーは厳選したほうがよいとか、そういうのは気にしなくても氷の大きさひとつで美味しさが変わります」。

美味しさのコツは炭酸を飛ばさないこと

なるべく同じ程度の大きさの氷をグラスいっぱいに入れて、静かにウィスキーを注ぐ
ウィスキーと炭酸水の比率は、1対2が目安。炭酸を飛ばさないよう、そっと注ぐ
ステアは、持ち上げるように1度まぜる程度に

氷についてもうひとつの大切なポイントは「霜を落とすこと」。泡のキレを消さないために炭酸水をゆっくりと注ぐのがハイボール作りの定石だが、「氷の霜が炭酸を飛ばしてしまうので、一度水で霜を落としてから、炭酸を氷とウィスキーの隙間にそっと注ぐイメージでいいと思いますよ。ステアは、氷を上に持ち上げるくらいで完成です」。