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私たちの周りはモノやコトで溢れかえっている。それらに気を取られ、深く思考することや頭を空虚にしてリセットすることを疎かにしがちだ。「MOGANA」の美しくも簡素な空間は日常生活とは異なる思考やリフレッシュをもたらしてくれるだろう。
(STYLE編集部)

「MOGANA」という少し変わった名前は、古語の終助詞である“~であったらいな”という期待の意味を持つ「もがな」に由来する。そこに「この旅が人生を豊かにするきっかけとなれば」、「MOGANAとの出会いが日常を愉しむきっかけとなれば」との願いを重ね合わせ名付けられた。

ベッドやソファなどのインテリアも山口氏がデザインし、香川県、岡山県の家具職人が製作。部屋履きサンダルやクッションのデザインは、日本的な美意識を大切にしたファッションブランド「matohu」が担当。「matohu」のオリジナルファブリックを鼻緒にした部屋履きサンダルは、大阪の老舗草履屋が製作している。さらに金沢のデザイナーが手がけるオリジナルの部屋着や、山中漆器の茶筒や湯呑、南部鉄器の急須など、日本の上質なデザインに触れることができる。

室町時代に税金が間口の大きさで決まったことから生まれた「鰻の寝床」。京町家の特徴を生かして、通路に再構築している

訪れるゲストを最初に迎えるコンシェルジュルームは、通りに面した前庭と水平に拡がりのある空間。そして次に現れるロビー・ライブラリーは天井高く吹き抜けた垂直に広がりのある空間となっている。その二つの空間を繋ぐのは、京町家の「鰻の寝床」を生かした38メートルにもおよぶ長い廊下だ。壁や天井に格子を嵌めた造りとなっており、床に敷き詰めた畳織のステンレスもモダンな雰囲気を醸し出している。

バスルーム

4タイプある部屋は、壁や床、家具の素材や組み合わせが部屋ごとに異なる。素材感を際立たせる構成で、漆喰をイメージした珪藻土塗装の壁に木材の床を合わせて異素材を愉しむ空間や、大理石の床に職人による真っ白な鏡面塗装を施した家具を配して白で統一した空間、いぶし銀色に塗装して日本瓦色に仕上げたアルミ素材を使ったグレーの空間など、こだわりの設えで、いずれもスタイリッシュだ。

ロビーライブラリーには、巨大な壁面モニターがあり、日本の四季をテーマにした映像を流している。また、メディテーションルームでは常設で、日本のファッションブランド「matohu」が着物のエッセンスを生かして現代的に提案している「長着」のアーカイブが並ぶ。

館内照明にもこだわったというバーと照明器具が見えないつくりの廊下の天井が生む木漏れ日のような陰影

職人の技とモダンなテイストが融合された「BAR MOGANA」は、職人によって貼られた24金の金箔が天井一面を覆っている。バーでありながらも棚にはアルコール類などを一切並べず、極限までミニマムに仕上げた空間に添えられた盆栽、ひときわ輝く天井との対照的なコントラストが印象的だ。一枚石でできた長いバーカウンターが1階の吹き抜けに突き出るように繋がり、ロビー・ライブラリーとバーの一体感が感じられる。18時~20時までは、ゲストにアペリティフが準備されており、バーは宿泊者以外も利用が可能だ。

淡路島の肥沃な土でこだわりの器を創り出す「Awabi ware」と「樂久登窯(らくとがま)」によるオリジナルの食器を用いた朝食

淡路島の素材を使った朝食や、薬膳に基づき食材の効能を取り入れたバーやルームサービスなども見逃せない。“和”の感性を活かしておいしく美しい「日本人のための薬膳」を提案する国際薬膳学院との取り組みによりメニューも個性的だ。「部屋呑みセット」は、薬膳利き酒師が季節に応じてオススメの日本酒を選び、そのお酒にぴったりの薬膳おつまみが付く。薬膳と旬の食材、出汁を使ったお茶漬けや麺などの夜食メニューも体にやさしそうだ。

究極のシンプルな空間で心を無にし仕事への活力をチャージするために、大人の京都の旅を計画してみてはいかがだろうか。

問い合わせ情報

問い合わせ情報

MOGANA(モガナ)
住所:京都府京都市中京区小川通御池下る壺屋町450
TEL:075‐606‐5281
宿泊料金:1室2名様 朝食付き 5万円~(税・サ込)


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text:Rina Araki