――英国ではコノリーはブランドとしてすでに有名ですが、英国ほどの認知度は日本ではまだないようです。コノリーとはどんなブランドなのか、簡潔にご説明いただけますか?

コノリーは皮革製品中心のライフスタイルブランドです。コノリーレザーはフェラーリやベントレー、ロールス・ロイスといった美しい車やコンコルドといった旅客機に使用され、英国王室にも革製品を提供してきました。製品にある偉大な美と価値によって人々の生活にある種の感動を与えてきたブランドです。私たちはラグジュアリーブランドの先にあるものを目指しています。今まで男性のお客様が多かったのですが、最近は女性のお客様も購入されています。これはブランドが成長するのに非常に重要だと考えています。

――なぜこの時期に日本でコノリーをオープンされたのでしょう? 日本の市場にはどんな可能性があるとお考えですか?

日本の市場は商品の品質、クラフツマンシップ、ヘリテージに対して大変理解があるからです。非常に洗練されていますし、コノリーを拡大するにあたり、日本に良いパートナーがいたことも、私たちにとってとても重要でした。

高級車に使われているのと同じコノリーレザーを使った唯一のバッグ「グリップバッグ」 39万円(税別)、カラー:グリーン/レッド、W49cm×H30cm×D26cm

――この店はロンドンに続いて2店舗目ですが、コノリーというブランド認知を高めるにあたり、鍵となるポイントはなんでしょうか?

まずクオリティ、エレガンス、デザインで、次にブランドの持つヘリテージも重要でしょう。同時に、コノリーというヘリテージ・ブランドが前進するために、新しいデザインや技術、新たなデザイナーやアーティストとコラボレーションを行っていくことも必要です。例えば、日本のオーディオ・テクニカ、フェンダー・ギターとも協業しています。

他の要素では物語を構築していくことです。コノリーは今までロールス・ロイスといったロマンティックで美しい車にレザーを供給してきた歴史があります。これが人々がこのブランドを愛する理由となっているのです。日本の人々はコノリーの中にヨーロッパのハンドメイドで仕上げられたレザーの歴史、デザイン、クオリティを見ていただけることでしょう。

――それでは消費者にとってコノリーの価値、哲学やブランド理念はどんなものだと思われますか?

私たちはラグジュアリーブランドであり、それは信頼の上に成り立っています。オーセンティックで信頼のおけるブランドである必要があります。したがって、デザインは他のブランドとは明確に違いがわかる、けれども控えめなものであるべきです。コノリーは他の大手のブランドと比べ、もっと落ち着いたテイストを持ち、独自性があります。とても英国的なブランドですが、旧来の英国のイメージに固執しているわけではありません。

私にとって重要なことは、コノリーが次世代のラグジュアリーブランドとして認識されることです。今では20代の若いお客様もいます。これは私の娘のような若い世代に本物の製品を販売することなのです。彼らはラグジュアリーが本質的なものだと理解していますし、このことを嬉しく思います。

――つまり、次の世代のラグジュアリーは従来とは異なり、より本質的なものを売ることだとお考えなのでしょうか?

そうですね。ステータス性というよりは、もっとその製品自体のこと、良いデザインや作り、ずっと使い続けることのできる品質といったことです。ここ何年もサスティナビリティは重要になってきていますので、出来る限りサスティナブルな製品を作ることを心がけています。これは過去のラグジュアリーとは大きく異なる点です。

洗練されたアイテムが並ぶコノリー銀座店内観

――ラグジュアリーの市場の鍵を握るのは若年層だというのはここ何年もの市場動向のテーマですが、若い顧客層を獲得するために具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

若いお客様が購入できるエントリーレベルの価格帯のものを揃えています。衣類に関しても同様で、快適でスポーティーでありながら、クラシックな製品です。同時にインスタグラムといった現代的な方法でお客様にアプローチし、その視聴者の80%は25歳から45歳です。

――コノリーにはラグジュアリーと言われるファッションブランドにあるような奇抜なデザインで視線を集めるアイテムといったものが無いようですが?

私たちは非常に注意深くデザインを考案し、無駄の無い、その姿であるべきデザインを決定しています。タイムレスなデザインであれば10年、15年使い続けることが可能だからです。将来にもそれは残ることでしょう。時間を経て味わいを増し、数年後にはそれがクラシックとなるのです。

――ところで、どうして人々はコノリーのようなハンドメイドの革製品に愛着を持つのでしょう?

それは機械で作られたものにはない、クラフツマンシップによる手仕事を感じるからでしょう。使い捨てでなく、自然でかつ環境に良い製品です。さらに、使い始めよりも使うことで味わいが増す製品です。このバッグに引っかき傷をつけてしまったとしましょう。最初はショックを受けるかもしれませんが、次第にこの傷を美しいと思い、愛するようになります。これらの革製品はとても堅牢でもあるのです。アイデアとコノリーの歴史を合わせて、ひとつの革製品に作りあげるのは、私たちにとって非常に面白い旅路なのです。

若い世代とも接点を持つというコノリー

――今までのお話から伺うと、コノリーはもはや皮革製品のブランドというだけでなく、ライフスタイルブランドと捉えていいのでしょうか?

それは重要なポイントですね。ラグジュアリーブランドはレザー製品のみに留まってはいられません。なぜなら、これからのお客様は生活の中で持てるもの、着ることができるもの、座ることができるもの、ポケットにいれることができるものといった、あらゆる側面での製品を欲しているからです。幾つかのラグジュアリーブランドはこうしたライフスタイルブランドになれる可能性があります。しかしながら、大半のブランドはひとつの領域には強く、他の領域ではそうではない。私たちの持つ歴史とスタイルを用いながら、コノリーにはこうした全方向の製品を供給できる強みを発揮できる可能性があります。

――ライフスタイルブランドとしての方向性、それこそがロンドンの旗艦店に展覧会のスペースがあったり、家具を販売する理由ですね。

その通りです。店を活気づけ、ブランドに生命を吹き込むための戦略です。プレゼントを探しに店に足を運んでくださるお客様も多いのですが、これはライフスタイルブランドにとって大切なことです。コノリーには他にはない、大事な方々を喜ばせるに相応しいものがあると認識してくださっている証だからです。

――コノリーのベストセラーはなんですか?

シーバッグが圧倒的なベストセラーです。小さな皮革製品、ウォレットなども人気があります。最近はシューズも売れ始めています。

――日本のお客様に最後にメッセージをお願い致します。

ぜひ、ストアに足を運んでください。東京のストアはコノリーのエッセンスを取り入れつつ、ロンドンとは異なる日本独自の意匠も取り入れています。偉大な過去と未来が反映されたコノリーの製品をきっと気に入ってくださるとことと思います。

長谷川喜美/Yoshimi Hasegawa
ジャーナリスト。イギリス、イタリアを中心にヨーロッパの魅力を文化の視点から紹介。メンズスタイル、車、ウィスキー等に関する記事を雑誌を中心に執筆。最新刊『サルトリア・イタリアーナ(日本語版)』(万来舎)を2018年3月に上梓。今年、英語とイタリア語の世界3カ国語で出版。著書に『サヴィル・ロウ』『ハリスツィードとアランセーター』『ビスポーク・スタイル』『英国王室御用達』など。

問い合わせ情報

問い合わせ情報

コノリー 銀座店
東京都中央区銀座7‐6‐19
TEL:03‐3574‐3411

※6月18日(火)まで、日本橋髙島屋本館2階のギャラリー ル シックでポップアップストア展開中。


text:Yoshimi Hasegawa
photograph:Mutsuko Kudo