好みはダークスーツ

当社はホテルや旅館、レストランなどをトータルプロデュースする会社です。トータルプロデュースはマーケティングからコンセプトワーク、プランニング、オペレーションまでを一貫して手掛け、事業の収益までに責任を持つ独自の仕組みです。運営施設にはリゾートホテル「カフー リゾート フチャク コンド・ホテル」や高級宿泊施設「箱根・翠松園」やホテルブランド「ふふ」などがあります。

私は22歳のとき、父の事業を引き継ぎました。ベンチャーという言い方もない時代です。若くても銀行に何億円もの出資を頼みにいく必要がある。そこで相手から若く見られないようにクラシカルなスーツをあえて選んでいました。恐らく実年齢より10歳くらい年上に見えていたと思います。それから30年以上たった今もダーク系を好んで着ています。ブラック、グレーが中心でネイビーまで。腕時計も黒色です。ブランドにこだわらず、相手に失礼のない着こなしを大切にしています。

この日はネクタイとチーフをブラック系で統一。すっきりとした印象に。サービス業ということもあり、あくまで控え目が、加藤社長のビジネススタイル

ホスピタリティの限界数

私たちがホテルやレストランをプランニングするとき、とても大切にしていることがあります。「地の力」と「デザイン力」「ホスピタリティ」の3つです。

とりわけスモールラグジュアリーリゾートのカテゴリーでは強く意識しています。その一つである「箱根・翠松園」は元三井財閥の別荘です。そこに立つと地の力を感じ、なぜ別荘地として選んだかがわかります。そうした地の力を感じると、即座に施設のコンセプトやデザインすら浮かんでくるものです。

そして、もう一つがホスピタリティです。「箱根・翠松園」は3000坪の敷地の中に客室は23室しか設けていません。スモールラグジュアリーリゾートは50室以上造らないと決めているのです。スタッフの目が行き届かないという理由ですが、それは料理面に一番よく表れます。新鮮な魚を使ってお刺身を作り、美味しさが落ちないうちにご提供できるのは100人が限界です。つまり2人部屋50室が、私たちが自信を持って運営できる限界数なのです。

投資効果を考え、もっと客室を増やしたほうがいいと言われることもありますが、自分たちで決めた基準を守り切る。それが私の経営哲学と言えるかもしれません。

愛用の逸品~大切な方へお礼状を書くレターセット

私たちが運営するホテルやレストランをよくお使いいただくお客様や、名刺を交換した大切な方たちに対して、毎日、お礼状を書いています。はじめたのは4~5年前からでしょうか。隙間時間があればペンを走らせます。感謝を示すには電話やメールでも可能な時代ですが、書状の効果は高く、わざわざ書いてくれたと喜んでいただけます。

加藤 友康/Tomoyasu Kato
カトープレジャーグループ代表取締役兼CEO
1965年、大阪府生まれ。5人兄弟の3男。父親の事業を弱冠22歳で引き継ぐ。89年に開業した「つるとんたん」をはじめ、ホテル、レストラン、また公共施設の再生を含め、あらゆるレジャー事業のプロデュースを手掛ける。

text:Top Communication
photograph:Tadashi Aizawa
hair & make:RINO