東京・銀座の並木通りに店舗を構えるアワーグラス銀座店は、シンガポールに本社を置くアジア最大規模のディストリビューター、アワーグラス（THE HOUR GLASS）の日本唯一の店舗です。時計好きに「銀座の時計店と言えば？」と尋ねたらまず名前が挙がるのがここ。
スイスやドイツの一流ブランド本社とも強いパイプを持つ同店の桃井敦さん（ザ アワーグラス ジャパン代表取締役社長）が提案する「最初の1本」の選び方。それは、高級ブランドとは何かを知り尽くした、プロならではのものでした。
アワーグラス銀座店が薦める最初の1本：パテック フィリップ「カラトラバ（5196）」
Q. パテック フィリップを薦める理由は？
最高峰の時計ブランドとして世界的に認知されているのがパテック フィリップです。その最大の理由は「どんなに古い時計であろうと直し切る」点にあります。1839年の創業時のものから現行品まで、それが自社の正規品だと認められれば「修理できない」とは決して言いません。しかも、その時計がつくられた当時の製法で修理する場合もあります。というのも、時計のムーブメントはいくつもの部品が相互に連関し合っているため、一部だけ最新の製法を使った場合、うまく作動しないことがあるからです。これほど徹底した修理・修復（レストア）体制を整えているのは、時計ブランド多しといえどもパテック フィリップ以外にはありません。
Q. 「カラトラバ」を薦める理由は？
いくつかあるコレクションの中で、最もパテック フィリップらしい顔立ちなのがこの「カラトラバ」です。1932年に最初のモデルがつくられてから、ケース径やディテールのマイナーチェンジはあったものの、現在に至るまで80年以上もの間、基本的なデザインが変わることがない。いわば不変デザインの代表格です。
スーツなどビジネスの装いにはもちろん、オフタイムのカジュアルダウンした服装に合わせてもさまになります。「1本だけ」と言われたら、シーンを問わずに着用できる使い勝手の良いデザインをお薦めします。
Q. 「最初の1本」を購入する際のポイントを教えてください。
「そろそろ良い時計が欲しい」「高級時計に興味があるけど何を買ったらいいかわからない」という人には、最初からトップブランドの時計をお薦めします。最初だからといって手ごろな時計や中級クラスのものを選ぶ方もいらっしゃいます。それはそれでいいのですが、その後時計の世界にどっぷりとのめり込み、さらに上のブランドが欲しくなる、というケースがよくあります。そうなる可能性があるのでしたら、最初から思い切ってトップブランドの逸品を選びましょうというご提案です。
トップブランドの時計を所有する利点はいくつかあります。まず、高級品というものは、車にしても靴にしてもそうですが、自分を満足させるプレステージ性があるものです。その点ではトップブランドのほうが満足度が高いのは間違いありません。
次の理由は、“高級品が人を育てる”ということ。「いきなりトップブランドは身の丈に合っていないかな？」と迷っているようでしたら、自己投資だと思って背伸びしてでも買ったほうがいい。最高級の時計を着けているという自覚があると、激しい動きや荒っぽい仕草は取らなくなり、身のこなしや立ち居振る舞いが自然と紳士的になってきます。また、時計を大事にするため、きれいな状態で長く使用されている方も多く見られます。
そして最後の理由が資産的な価値です。高級ブランドとはいえ、たいていの製品は購入した時点から価値が目減りしていくもの。もちろん高級時計もその例に漏れませんが、トップブランドのほうが価値が落ちにくい傾向があります。車で言えば、フェラーリが二次市場でも高値で取引されています。同じように、時計もトップブランドのものは価値が下がりにくく、オークションでは時に販売額よりも高値で取引されるものもあります。
Q. アワーグラス銀座店で購入するメリットはどんな点でしょうか？
当店で取り扱うブランドは、長年にわたり高級ブランドの地位を維持してきた老舗や、それぞれの分野で本物と認められた一流ブランドばかりです。一時的に流行っているブランドや、一過性のデザインは取り扱いません。そのため「長年使用できる本当にいい時計が欲しい」という方には、どれを選んでいただいても間違いがないと思います。
もう一つが、ユーザーさん同士のコミュニティーがあることです。当店に来られる方は、本当に時計に詳しい方が多い。店内にバーを併設しているため、ユーザーさん同士がお酒を飲みながら時計談義に花を咲かせたり、また店外でも食事をともにしたりして情報交換をしているようです。専門知識が豊富な店舗スタッフの説明はもちろん、そうしたユーザーさんから生の声が聞けるのも当店ならではのメリットだと思います。
text：Hiroaki Mizuya（d・e・w）
