ザ・シチズンが示唆する「愛用時計」の理想形
腕時計を何本か経験してくると、時計選びの基準が少しずつ変わってくる。若い頃なら、ブランドの知名度や分かりやすいスペックに引かれることもある。だが40代、50代となり、仕事でも装いでも自分なりの型ができてくると、時計にも「自分との相性」を求めたくなる。人からどう見えるか以上に、毎日使いたいと思えるかどうかが重要になってくる。
出番の多い時計には、いくつかの共通点がある。時刻を任せられる確かさがある、着けていることが苦にならない、そして実用品に徹しながらも目にするたびに小さな満足をもたらしてくれる、といったところだろうか。精度や性能の面でストレスを感じないことはマストとして、さらに心地よさや程よい洒脱感が高いレベルで重なると、時計は「所有するもの」から「愛用するもの」へと変わっていく。
なぜ冒頭からこんな話を述べたかというと、今秋登場したザ・シチズンの2モデルがまさにその好例に思えるからだ。一方は、土佐の「典具帖紙」を生かした深紅の文字板を、スーパーチタニウム™のケースに収めたモデル(AQ4100-65X)。もう一方は、金色の繊維を漉き込んだ「雲龍紙」の文字板に、桜の花弁を連想させるデュラテクトサクラピンクを施したスーパーチタニウム™ケースを合わせたモデル(AQ4106-00B)。装いはだいぶ異なるが、どちらにも「日々使う高級時計」としての明快な意志がある。

ザ・シチズンの真骨頂はやはり「正確さ」にある
高級時計というと、複雑機構や希少素材、華やかな仕上げに目が向きがちだが、時計は本来、時刻を知るための道具である。その原点に立ち返れば、正確さを徹底的に磨き上げることは、高級時計の王道の一つであっていい。
今回の2モデルに搭載されるCal.A060は、月差ではなく「年差±5秒」という高精度を実現したエコ・ドライブで、さらに2100年まで修正不要の日付表示(パーペチュアルカレンダー)も備える。光を動力源とするため定期的な電池交換を必要とせず、時刻や日付を頻繁に修正する手間も少ない。
年差±5秒というスペックはもちろん大きな魅力だが、ザ・シチズンが誇る高精度の価値はそれだけにとどまらない。着用した瞬間から時刻のことを時計に任せてしまえる、その「気にしなくていい」という感覚が、日々の道具としては何とも贅沢だ。スマートフォンを見れば正確な時刻はいくらでも分かる時代に、それでも腕時計で年差±5秒を追求するという行為には、必要性を超えて技術を磨き続ける時計メーカーの矜持がにじむ。
ザ・シチズンはこれまでも、そしてこれからも精度の追求に余念がない。毎日頼れるという信頼が積み重なってこそ、時計はやがて「いつもこれを着けたい」と思わせる一本になっていくのである。
38.3mm、そして軽さ。毎日着けるための上質
気に入って買ったはずなのに、いつの間にか出番が減る時計がある。その理由は案外単純で、大きすぎる、重すぎる、袖口に収まりにくいといった小さなストレスが積み重なり、無意識のうちに手が伸びなくなるからだ。
その点、今回の2モデルはケース径38.3mm。今の感覚では小ぶりといえるが、腕に載せると、その控えめさがちょうどいい。ことさらに存在を主張せず、シャツやジャケットの袖にも収まりやすいという点で、これ見よがしな主張から距離を置いたサイズ感が、むしろ大人の腕元には似合っている。

ケースはいずれもスーパーチタニウム™で、AQ4100-65Xはバンドまで同素材のため、軽さの恩恵がより分かりやすい。チタニウムの軽さやさびにくさに加え、シチズン独自の表面硬化技術デュラテクトによって耐傷性も高められており、日常で気兼ねなく使うという点でも理にかなっている。高級時計では、手に取ったときの重量感が上質さとして語られることもあるが、朝から夜まで腕にある時計なら事情は別だろう。軽さとは立派な性能であり、心地よさとは紛れもない贅沢なのである。
しかも、軽いからといって見た目まで軽くはならない。ケースには熟練の職人によるザラツ研磨が施され、面のゆがみを抑えながら、光の反射まで丁寧に整えられている。軽快さと高級時計らしい緊張感を同時に成立させる、そのさじ加減には、国産高級時計としての成熟がにじむ。
控えめな華――深紅の洒脱か、金色の情趣か
今回の2モデルで、とりわけ印象に残るのが文字板である。ザ・シチズンはこれまで、高精度や端正な仕上げ、普遍性の高いデザインを磨き続けてきた。その実直な時計づくりに、近年新たな表情を与えているのが和紙文字板である。
均質で精密な工業製品の中に、繊維の揺らぎや光の移ろいという、人の手と自然を感じさせる表情が加わった。丹念につくり込まれた時計の中にわずかな「ゆらぎ」が生まれたのである。この緊張と緩和のバランスが、近年のザ・シチズンをぐっと面白くしている。
AQ4100-65Xは、土佐の典具帖紙を生かしながら深紅の色彩を表現したモデルである。赤い時計と聞けば派手さを想像するかもしれないが、この文字板の赤はもっと奥行きがあり、典具帖紙の繊細な風合いに旭光の陰影が重なることで、光の角度によって赤の濃淡が静かに移ろう。そこに加わるのがゴールドカラーの秒針とイーグルマーク。袖口からのぞく程度なら華やかさより先に品のよさが立ち、スーツスタイルにも難なくなじんでくれる。

一方のAQ4106-00Bは、白い雲龍紙に金色の長い繊維を漉き込み、その繊維の流れが1枚ずつ異なるため、同じ表情は二つとない。外装にはデュラテクトサクラピンクを施したケースとダークブラウンのワニ革ベルトを合わせ、静かなたたずまいの中に華やかさを宿した。限定モデルであること以上に、「自分だけの表情がある」と感じられることが、所有する喜びを深めてくれるだろう。

所有欲を満たす美しさとは、装飾の量ではない。和紙の繊維、鋭く整えられた針やインデックス、ゆがみのないケースの面など、近づいて見るほどつくり込みが見えてくる時計には、使い始めてからも新しい発見がある。卓越した職人の仕上げと、二つとして同じ表情のない和紙。その両方があるからこそ、眺めるほどに味わいが増し、使うほどに愛着が深まっていくのだろう。
時を重ねるほど、愛着を深める一本へ
性能や心地よさ、程よい洒脱感とともに、愛用時計に欠かせないのが、長く使い続けられる安心感である。購入後も安心して使い続けられるサポート体制は、時計との長い付き合いを支える大切な要素になる。
ザ・シチズンは「精度」「品質」「デザイン」と並び、「ホスピタリティ」をブランドが追求する理想の一つに掲げており、シチズン オーナーズクラブへの登録により、最長10年間の無償保証と無償点検でオーナーをサポートしている。時計を届けた後も長く寄り添おうとする真摯な姿勢がうかがえる。
正確で、軽やかで、眺めるほどに味わいがあり、長く付き合える安心感もある。今回の2モデルは、毎日使いたくなる時計とは何かを、改めて考えさせてくれるタイムピースだ。日常になじみながら、ふと腕元に目を落とすたびに小さな満足をもたらしてくれる。毎日着けたくなるというごく自然な選択の積み重ねが、やがてその一本を愛用時計へと育てていくのだろう。

photograph:Masahiro Okamura(CROSSOVER)
edit & text:d・e・w
