Editor's Note
時計ブランドの立ち上げは2001年と最近のことだが、そのルーツである時計宝飾店は約130年の歴史を持つ老舗。創業家によるファミリービジネスを貫き通してきた経営体制が、ウォッチブランドとしても長期的なビジネスへと向かわせたのだろう。時代に流されることのない普遍的なデザインを基調とし、太めの時分針とインデックスによる視認性の高さを特長とする。さらにムーブメントの内製化も長期目線のビジネスプランがあってこそ。ペリフェラル(外周)ローターという独自のローターシステムを備えた自社製ムーブメントからは、マニュファクチュール(自社一貫生産)としても独自の道を歩もうとする意気が感じられる。
Brand History
1888年、カール・フリードリッヒ・ブヘラがスイスのルツェルンに高級時計宝飾店「ブヘラ」を開く。ルツェルンとはスイスの中心部に位置する風光明媚な地で、ヨーロッパの上流階級や芸術家たちが避暑に訪れた国際的なリゾート地だった。品質を見極める確かな選択眼と高水準のアフターサービスで彼らの信頼を得たブヘラの名声は瞬く間に広まり、ヨーロッパ各地に進出。1919年からは時計修理で培った技術やノウハウをベースに、文字盤にブヘラの名を入れた自社時計の製造を開始。1960年代後半からはクロノメーター製造でも名を馳せた。こうした歴史を受けて、2001年にブヘラ家3代目のヨルグ・G・ブヘラが本格的にウォッチブランドを立ち上げる。本拠はルツェルン、ブランド名は創業者へのオマージュを込めてカール F. ブヘラとした。
初期からムーブメントの内製化を目指し、2007年に長年のパートナーであったTHA(現カール F. ブヘラテクノロジー)を傘下に入れると、翌08年のバーゼルワールドで初の自社製ムーブメントCFB A1000を発表。自動巻きでありながら通常の回転錘が見えず、代わりにムーブメントの外周に弧状のローターを配したペリフェラルローター式で、そのローターへの衝撃を吸収するダイナミック ショック アブソーバー システムも備えた新機軸だった。さらなる改良とシンプル化を追求して2016年に完成した第2号機CFB A2000の派生系A2050では、COSC(スイス・クロノメーター検定協会)認定のクロノメーターという高品質を達成。マニュファクチュール(自社一貫生産)としての水準を高めると同時に、2016年にはブランドのリニューアルを行い、創業の地ルツェルンに根付いたブランディングを進めている。