安心して内見してもらうための工夫とは

「リビオはどんなブランドか、何を大事にしてきたのか、という議論を重ねた末にたどり着いたのが、顧客目線です」。そう話すのは、現在、日鉄興和不動産で「リビオ(LIVIO)」のブランディングを取り仕切る冨田雄也さんだ。

日鉄興和不動産は興和不動産と新日鉄都市開発の経営統合により、2012年に誕生した総合不動産企業である。この統合を機に、それぞれで展開していたマンションブランドをリビオに一本化し、新しいスタートを切った。2020年頃には市況の変化に対応するためにリブランディングに着手。ブランドロゴやタグラインを刷新し、2021年に新生リビオを打ち出した。

「用地の取得から商品企画、開発、製造、販売、アフターサービス、そして管理まで、一貫して顧客目線を大事にしてきたのがリビオの特徴です。それを踏まえて新しく掲げたのが、『Life Design! with LIVIO』というタグライン。“人生を豊かにデザインするマンション”を提供しよう、という思いを表現したものです」

冨田雄也さん
冨田雄也(とみた・ゆうや)さん。リビオカスタマーサービスグループのグループリーダーとして、リビオのブランディング全般を担う。2011年に新日鉄都市開発に入社。販売や開発に従事した後、23年にリビオライフデザイン総研(現フューチャースタイル総研室)でブランディングを担当。24年から現職

顧客目線とは聞き慣れたワードであるが、リビオのそれは他社が掲げるものとは一線を画すと言っていい。幅の広さ、内容の充実ぶり、そして仕組みづくりにおいて、一歩も二歩も進んでいる感があるからだ。代表的なものをピックアップしてお届けしよう。

まずは、購入前、マンション探しの段階から。通常、モデルルームで客対応を行うのは販売員だが、リビオのモデルルーム機能を備えた「LIVIO Life Design! SALON」には、販売員とは別にライフデザイナー(コンシェルジュ)が常駐し、来場者に物件の紹介や探し方のアドバイスを行う。販売員との大きな違いは、彼らには販売ノルマが課せられていないこと。役割は「お客さまの満足度を高める」ことだという。物件の条件が合わない場合や一度帰宅して検討したい場合など、面と向かって言いにくいケースもある。完全にニュートラルな立場とは言えないものの、第三者的な相談相手がいる安心感は大きい。

リビオタワー品川
リビオの分譲マンションは、メインとなるリビオの他に、ハイグレードのグランリビオ、高層タイプのリビオタワー、コンパクトなリビオレゾンなどのシリーズから成る。上の画像はリビオタワー品川

ファミリーデーには300人以上が参加

リビオが大切にする“顧客目線”の本領といえるのが、入居後のサービスの充実ぶりである。住居の設備購入や相談が行えるウエブサービス「myLIVIO」(※)や、入居後の生活の手助けをしてくれる「リビオ新生活コンシェルジュ」など、入居者が快適に暮らせるようサービスが多彩にそろう。中でも特徴的なのが、入居者向けのイベントである。

※ 2020年2月以降に竣工し、日鉄コミュニティが管理するマンションが対象

リビオでは、マンションの入居者・契約者やクラブリビオ会員などを対象としたイベントを積極的に開催している。デベロッパーがイベントを実施すること自体はそれほど珍しいものではないが、驚かされるのはその回数の多さと内容の多彩さである。

会場となるのは主にLIVIO Life Design! SALON。東京・品川のサロンでは毎月2回程度実施し、昨年末からは大阪のサロンでもスタートした。内容は、暮らしに役立つものから趣味のもの、子ども向けのものまで多岐にわたる。その一部を挙げると、掃除講座、片付け講座、インテリア相談会、睡眠改善セミナー、ワインの楽しみ方セミナー、間伐材を使ったバッジ作り、絵の具アートといった具合だ。

LIVIO Life Design! SALON OSAKA
2024年末からイベントを開催する「LIVIO Life Design! SALON OSAKA」。LIVIO Life Design! SALONはモデルルーム機能以外に、イベントスペース、カフェ、マンションに関する展示スペースなどを備える。内装に木を多用し、所々にグリーンを配したインテリアは親しみが湧き訪れやすい
アロマ香るアクリル絵の具アートイベント
品川のサロンで入居者を対象に開催された「アロマ香るアクリル絵の具アートイベント」から。親子一緒に参加できるイベントも多く開催されている

現在、大半のイベントは有料となっているが、それでも応募多数になるほど好評を得ているという。年に数回のファミリーデーは300人以上が参加するほどの盛況ぶりだ。

その理由を挙げるとすれば、リビオが実施しているという信頼感だろう。会場となるサロン、参加者とのやり取り、内容の企画、講師のセレクト、道具などの準備……など、イベントに関わる全てを外部の業者に委ねることなく、リビオの企画・運営のもとで実施しているという。入居者にとってこれほどの安心感はないだろう。

デベロッパーの社員が訪問調査を行うわけ

入居後のサービスで気になることといえば、やはり管理面である。この点でもリビオの顧客視点が際立っている。

まずは、管理員の質の高さだ。リビオ・ブランドのマンションの管理は、主にグループ会社の日鉄コミュニティが行う。同社では全ての管理員を正社員として雇用し、定期的に研修や抜き打ちチェックを実施。マンションのセカンドオピニオンサイト「住まいサーフィン」にて「マンション管理員大賞2024年度」に選出されるなど、高い評価を得ている。

もう一つ、管理面で特徴的なのが、デベロッパーの社員が入居後の訪問調査を行っていることだ。引き渡しから一定の年数を経たマンションの入居者を対象にアンケートを実施し、そのうちの一部の住戸に対して、日鉄興和不動産の社員が調査に出向く。冨田さんも実際に訪れたことがあるという。そして、そこで得た入居者の声を次の開発に生かす。

「訪問調査は外部業者に委託することがほとんどですが、当社は全て社員が行っています。というのも、タグラインに“with LIVIO”とあるので、私たちも一緒に伴走するような形で管理に関わっていくことが大事だと。そういう思いで始めた取り組みです」

リビオの販売予定物件
日鉄興和不動産、リビオの販売予定物件(2025年3月時点、今後3年程度、一部抜粋)

“もはやツアー会社?”の田舎暮らし体験

ここまで見ただけでも、リビオの顧客視点が先進的であることがお分かりいただけただろう。だが、冨田さんは「まだまだ途中。もっとできることがある」と話す。今後もこの顧客視点を推し進めて、より充実させていくという。

「その一つが田舎暮らし体験です。現在、SAGOJOという企業のTENJIKUサービスを活用して、田舎暮らし体験をご提供しています。古民家に宿泊し、田植えや稲刈りを体験してもらうものです。“子どもが自然に触れられる機会がなくて……”とお悩みの方から好評を頂いています。今後、都心の物件が増えていくことが予想されるので、だからこそ自然体験ができるサービスを広げていこうと考えています」

田舎暮らし体験
埼玉・秩父で行われた田舎暮らし体験から。そば打ちや焚き火の火起こしなど、都心ではなかなかできないことが体験できる

このTENJIKUとは、地域の手伝いに参加する代わりに古民家に無料で宿泊できるサービスで、リビオではその一部をマンションの購入者に提供している。現在の拠点は千葉・香取と埼玉・秩父だが、今後はその拠点を増やす予定だという。

さて、イベントやワークショップの企画から、管理業務への参加、そして自然体験の提供まで、リビオの取り組みはもはや従来のデベロッパーの枠に収まらない。“販売後は購入者との接点をなるべく持ちたくない”というのがこれまでのデベロッパーの本音だったはずだ。その古い慣習を見直して、販売後も購入者とつながりを持ち、顧客満足度を追求し続けるのがリビオらしさである。“売ったら終わり”から“売ってからが本当のお付き合い”へ、デベロッパーの本来あるべき姿を見た思いだ。

photograph:Hirotaka Yabushita(portrait)
edit & text:d・e・w