名門「ライオンズマンション」をリファイン

日本の分譲マンションの歴史は1950年代に始まる。それから現在までの70年ほどの間で、最も多くの戸数を供給してきたのが大京である。1968年に「ライオンズマンション」の第1号となる「ライオンズマンション赤坂」を発売すると、10年後の78年には、事業主別のマンション年間販売戸数で業界第1位へと躍進。以来、20年以上にわたり業界トップの座を維持し続けた。

そして今世紀に入ると、マンション市況やターゲット層の変化に対応するべく、また社内体制の強化を目的として、ブランドのリニューアルやリブランディングを実施。それぞれの物件に冠する名称を、2005年のリニューアルではライオンズマンションから「ライオンズ」へ、さらに23年のリブランディングではライオンズから「ザ・ライオンズ」へと改めた。

TL大濠公園
リブランディングの翌年、2024年に福岡市中央区に竣工した「ザ・ライオンズ大濠公園」。軽やかでモダンな外観が目を引く
TL大岡山
2025年12月に東京都大田区に竣工予定の「ザ・ライオンズ大岡山」(イメージ)

「この20年ほどで、分譲マンションの市況やターゲット層が大きく変わってきています。以前は首都圏だけで年間約9万戸も供給されていたのが、現在では3万戸を切るほどにまで減少し、競争も激化しています。また、メインの購入者層もファミリー層からいわゆる“パワーカップル”と呼ばれる層が中心になっています。こうした変化に対応するために、ブランドコンセプトや商品を今一度、見直したのです」

そう話すのは、大京の開発事業本部長として、主に分譲部門を取り仕切る蔭平良昭さんである。2005年のリニューアルに関わり、さらに直近の23年のリブランディングも取りまとめた。

蔭平良昭(かげひら・よしあき)さん
蔭平良昭(かげひら・よしあき)さん。常務執行役員開発事業本部長。1991年入社。長年営業を務めた後、2005年に「ライオンズマンション」ブランドのリニューアルを担当。その後、要職を経て25年1月から現職。分譲マンションの仕入れからプランニング、販売、アフターサービスまで全般を取り仕切る

「マンション事業において安心や安全は欠かせないもの。これらは当然引き継いでいくものですが、そこに新しく洗練や上質を加えていくというのが大きな方向性です。タグラインを“Family First.”から“人生には価値がある”とし、ものの豊かさだけではなく、そこに住まう人に良い暮らしを提供することで、お客さまの人生に新しい価値を創造していきたいと考えています。価値観は人それぞれなので、どんな価値を具現できるかを議論して、今後の商品やサービスに結び付けていくつもりです。方向性の一つとして、香りや音といった五感に響くような価値を提供できないか、ということを検討しています」

進取の気性でZEH-Mの最高水準へ

リブランディングを行なって再スタートを切ったザ・ライオンズ。その強みを挙げると、まずはこれまでの供給実績である。1960年代から今日までで、大京およびその関連会社による累計の供給戸数は約38万戸を数え、業界トップの実績を誇る。一概に量だけで測れるものではないものの、膨大な実績は信頼感を裏付ける一つの材料になるだろう。

そしてもう一つが、リーディングカンパニーという自負だ。

「業界の一歩先をゆく商品やサービスを提供していく、というのが私たちの強みです。今では当然の設備ですが、オートロックや床暖房、宅配ロッカーも割と早い段階で標準化してきました。今でいうとその代表が環境配慮型住宅、いわゆるZEH-Mですね」(蔭平さん)

改めて述べると、ZEH(ゼッチ)とはNet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、住宅の断熱・省エネ性を高め、太陽光発電などによってエネルギーを創ることで、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅のこと。集合住宅でその基準に適合したものはZEH-M(ゼッチ・マンション)と呼ばれ、一次エネルギー消費量の削減率によって、『ZEH-M』(ゼッチ・マンション)、Nearly ZEH-M(ニアリー・ゼッチ・マンション)、ZEH-M Ready(ゼッチ・マンション・レディ)、ZEH-M Oriented(ゼッチ・マンション・オリエンテッド)の4つに分かれている(下図参照)。

ZEH-M区分

大京は、こうした環境配慮型住宅に早くから取り組んできた歴史がある。2002年に「フォレストレイクひばりが丘」で日本の民間集合住宅で初めて「環境共生住宅(団地供給型)」の認定を取得し、10年の「ライオンズたまプラーザ美しが丘テラス」では、各住戸への電力供給が可能な太陽光発電システムを搭載。さらに、17年から18年頃に政府方針によってZEH-Mが注目されると、19年竣工の「ライオンズ芦屋グランフォート」でNearly ZEH-MのBELS評価書(*1)を、そして23年には「ザ・ライオンズ 世田谷八幡山」で最高ランクである『ZEH-M』のBELS評価書(*1)を取得した。いずれも日本初のもので、環境面における大京の先進性が見て取れる。

*1 建築物の省エネルギー性能を評価した結果が記載された書類。(一社)住宅性能評価・表示協会の登録機関が交付する。

ザ・ライオンズの販売予定物件
大京、ザ・ライオンズの販売予定物件(2025年1月時点、今後3年程度、一部抜粋)

光熱費削減だけじゃないメリットとは

2025年2月時点で、『ZEH-M』のBELS評価書は国内で2棟しか取得していない。それほど取得の条件やハードルが高いということだが、では具体的にどんな特徴があるのか。住棟で『ZEH-M』を、そして各住戸で『ZEH』を満たした前述のザ・ライオンズ 世田谷八幡山を例に見てみる。

まずは、一次エネルギー消費量を100%以上削減できることだ。100%以上削減というのは、一次エネルギーの消費量を減らす(省エネ)と同時に、その消費量を上回る量のエネルギーをつくる(創エネ)ということ。高い断熱性能や省エネ性能を備えた設備に加え、太陽光発電の設備を備えていることが主な特徴である。ザ・ライオンズ 世田谷八幡山では、省エネと創エネによって基準一次エネルギーの消費量から平均124%も削減できる試算だという。

八幡山外観
ザ・ライオンズ 世田谷八幡山の竣工イメージ。この土地は第一種低層住居専用地域のため、建設できる建物の高さが10m以内と定められていた。その条件を生かして『ZEH-M』の基準を満たすマンションを建設した

その結果として光熱費が大幅に削減できることが、入居者にとって最大のメリットだろう。ザ・ライオンズ 世田谷八幡山の一つの住戸で試算すると、同条件の一般的な住戸と比較した場合、年間の光熱費が16万7000円ほど削減できるという(*2)。もちろん同じマンションでも住戸の位置や暮らしぶりによって変動は生じるが、いずれにしても数十年のスパンで考えれば初期投資も惜しくなく感じられる。

*2 ザ・ライオンズ 世田谷八幡山のIタイプ(2階、約70平方メートル)における光熱費試算値と一般的な同条件の住宅との比較から大京が算出。削減額は住戸ごとに異なる。

最後に、ザ・ライオンズ 世田谷八幡山の利点として付け加えたいのが、前述の発電・蓄電の設備が緊急時のライフラインになることだ。災害発生時などに仮に電力の供給が止まったとしても、敷地内の発電・蓄電設備から供給が受けられる。さらに敷地内に防災井戸を設けるなどして生活用水も確保。1週間程度なら全住戸に電力と水を供給できる見込みだという。

「ザ・ライオンズ 世田谷八幡山」の1/40スケールの模型
「ザ・ライオンズ 世田谷八幡山」の1/40スケールの模型
「ザ・ライオンズ 世田谷八幡山」の1/40スケールの模型から。建物の屋上には各住戸専用の太陽光パネルがずらり(上写真)。その総数は479枚に上る。敷地の一角には防災井戸が設置されている(下写真)

「今後も『ZEH-M』には積極的に取り組むつもりですが、土地や階層、そしてコストなど、クリアしなければならない条件が多くあります。むやみに『ZEH-M』にこだわるのではなく、そのマンションの入居者の方々にとって快適なものは何かということを最優先して、どのランクのZEH-Mにするかを決めていく予定です」(蔭平さん)

現在、大手のデベロッパーでZEH-Mに取り組まない企業はない。各社、意欲的な姿勢を見せているが、その多くは取得のハードルが最も低いZEH-M Orientedである。

そんな中で、最高ランクの『ZEH-M』まで実現できる大京の存在感は大きい。何よりも、4つのランクの全てに対応できるというのが他社と一線を画する強みである。その時点、その土地の条件で、考えられる最高水準の環境配慮型住宅が建てられるということだからだ。衣食住全てにおいて、でき得ることなら環境への負荷が少ないものを選びたいと考える人は少なくないだろう。そんな価値観を持つ者であれば、ザ・ライオンズは分譲マンション選びの筆頭の選択肢になる。

photograph:Hisai Kobayashi(portrait、architectural model)
edit & text:d・e・w