上質でフィットするスーツを着ている安心感が、内面にもいい影響を与えてくれる

年3~4着のペースでスーツをオーダーしています。今日着用しているスーツは「エルメネジルド ゼニア」のもの。38歳で社長に就任したタイミングで社内外の人々と渡り合うために何か自分の信頼につながるようなものを欲していました。オーセンティックなものが持つ本物感を求めていました。以来、先代に教えていただいた「エルメネジルド ゼニア」と「ロロ・ピアーナ」のスーツを愛用しています。生地の美しい艶と着心地、そして高品質による信頼感ゆえです。

ビジネスパーソンにとってスーツは、現代の鎧とよく表現されます。ビジネスの服装において最も大事なのは、自信と信頼感にあふれる雰囲気だと思います。例えば、印象に残るプレゼンテーションができる人の多くは、話す内容だけでなく、声や振る舞いから自信が伝わってくるように感じます。

だから、着ることで外見だけでなく内面をも装うことにつながり、自信が湧き出るような服装を心がけることが大切なのです。このように考えるようになったのは、先代や父からの教えの影響が大きいです。

繊維生地を扱う者として、スーツの生地はよいモノを選べと先代から教わりました。よく銀座の服飾・時計店に連れて行かれましたね。また、警察官僚だった実父は、先代とは違った意味で服装に特別な思いを持っていました。危険な役目柄、大きな事件に挑むときには下着を新調するなどしていました。2人とも装いについては口で多くを語るタイプではありませんでしたが、美的感覚や本物志向を言葉以外の形で示してくれたのだと感じています。

先人の教えを継承するには、革新を続けなければならないと私は考えています。スポーツ用品のように、機能部をビビッドなカラーで強調した「AiR」という製品は、西川家2代目のアイデアをヒントに実現しました。当時、麻生地の色そのままだった蚊帳を草原で眠る心地よさを思わせるべく緑に染め、紅色の縁取りを施したのです。生活機能用品にデザインを施すというのは当時では画期的でした。

「AiR」についても寝具の機能を、色によっても認識することで、より機能性をアピールすることがデザインの力で可能になりました。疲れた体を充電する寝具も服と同様に、見た目で満足感が得られ、体に合わせてオーダーするなど、使用することで安心感が得られるものを選ぶべきですね。

愛用の逸品~TPOに応じてベルトを替えられる腕時計

この時計は、カルティエのもの。先代に銀座のブティックに連れて行かれると、「ここのは、いいものだ」とつぶやいて、それとなく教えてくれたものです。もちろんラグジュアリーブランドであることは知っていましたが、ひかれたのはワンタッチでベルトを着脱できる機能性です。服装や着ていく場面に応じて、黒と茶の革ベルト、メタル製のベルトを使い分けるようにしています。

西川八一行/Yasuyuki Nishikawa
1967年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)に入行。赤坂支店、ニューヨーク支店などを経て、国際統括部での業務を担当。95年、西川産業に入社。2006年、38歳で社長に就任。

text:Lefthands
photography:Sadato Ishizuka
hair & makeup:RINO
from:PRESIDENT 2018.6.4