国産ブランドとして48年の歴史を持つダーバン。百貨店で取り扱うメンズスーツブランドとして、これまで日本のビジネスマンを支えてきたが、今回の初直営店の出店には、今後のファッション界を生き抜く並々ならぬ決意がうかがえた。

直営店出店コンセプトは、顧客接点の拡大。これまでの百貨店の顧客を大切にしつつ、新たなるブランド認知を狙う。丸の内では、どの商業施設でも女性の比率が高いという。だが、今回出店したKITTE(キッテ)は、男性比率が高く、丸の内界隈のビジネスマンが訪れるというデータに注目した。さらに、東京駅の利用客が1日に約100万人ともいわれ、その中の約10%、10万人近くがKITTE内を通行するというだけでもダーバンとしてブランド認知効果があると見込んでいる。また、丸の内側には、使いやすい百貨店がないため、ビジネスマンの多くはセレクトショップでスーツを購入している。昨年、丸ビルでイベントを実施したところ大変評判がよかったことも決め手のひとつになった。

店作りは、顧客の洋服の購買から、廃棄に至るまでのサイクルをショップで完結できるように考慮されている。単なるリサイクルではない、今、ダーバンの役割として何ができるか、ブランドとして環境といかに共存していくかを真摯に考えることで、ハイクラスのビジネスマンの共感を取り込む構想だ。例えば購買動機の提案から始まり、購入後も、自社工場で行うスーツの立体プレスサービスの対応や、洋服を新品に近い状態まで復元する特殊なケアメンテ®を行う企業と協業していく。

さらに環境に配慮した計画は続く。ダーバンでは着古したものを廃棄するときに、日本環境設計と取り組んで行っている「BRING」、いわゆるバイオエタノロジーで素材を蘇らせる方法や、「プラプラプロジェクト」というプラスチック、もしくはポリエステルの繊維に蘇らせ、またその素材を使用した商品を制作していくというプロジェクトを考案中。顧客からリサイクルで受け取ったものを、顧客に還元するシステムである。すぐにリサイクル原料を海外へ流通させるのではなく、いかに国内循環するシステムを作り、経済を活性化させるかということも重要なポイントと捉えているのだ。

2018年秋冬からダーバンのスーツスタイルの特徴として打ち出すのが、「ビジネス正統派スタイル」という、いわゆる王道のスタイルだ。ダーバンの顧客にもすでに共感を得ているこのスタイルはトレンドに流されず、着る人の、その人らしさをより良く見せることに注力をおいている。これを着ていれば安心、失敗しないという確実性がある。「幼稚園や小学校のお受験のとき、また正式な場所での着用に一番に選ばれるブランドでありたい」と語る。

その正統派スタイルで注目すべきは、やはりパーソナルオーダーである。ダーバンは通常のパターンオーダーよりも補正箇所が広く種類も豊富とあって、より顧客の体にフィットしたスーツに仕上げることができるのだ。もちろん、フルオーダーやロイヤルオーダーといわれるものとは異なるが、それでも顧客の体型により近づけられるのは、日本人の体型を40年作り続けてきたダーバンの国内工場における技術があるからなのである。

ファッションでも外注工場を使うと、OEM生産になる。工場を変えれば、極端にいえば、去年購入してよかったブランドのものが今年の着心地は違うということが考えられる。だが、ダーバンは、芯地、表地、裏地、縫製などすべてを一貫して自社の宮崎工場で製作しているからこそ着心地を変えることなく生産することができるのだ。毎シーズン継続している同じデザインでも素材によって微妙に型紙を変えているほど。表素材の生地試験も自社で行い、多湿な日本の環境での縮み具合などを考慮してパターンをつくるという。そこまでするからこそ本当に合うものができるのだ。

また、意外と知られていないのが、縫製の中でも工程数が多ければ多いほど手が掛かり高級だということ。生地が高級であれば、それだけでラグジュアリースーツというわけではないのだ。こだわりぬいた素材、そして熟練した職人たちによる継承された技術により常に安心感のある失敗しないスーツは完成するのである。今回の直営店オープンに合わせ、実験的に従来のブラック、ゴールドラベルより、さらにラグジュアリーなプラチナラインも開始している。日本人体型の微差を捉える国産ブランドで、仕事帰りに初オーダーをしてみてはいかがだろうか。きっとお気に入りの一着になるはずだ。

ダーバン直営店

問い合わせ情報

ダーバン直営店
千代田区丸の内2-7-2 KITTE 2F
営業時間: 平日 11:00~21:00 日曜・祝日 11:00~20:00

text:Mariko Ikeda