スーツは一週間分を準備

ビジネスパーソンの着こなしで大事なのは清潔感だと思います。この人、今までどこかで寝ていたのではないかと疑いたくなるようなクシャクシャのスーツは論外です。スーツは少なくとも5着用意し、毎日ローテーションさせるべき。その日に着たスーツは、1週間、ハンガーにかけておけばシワが伸びます。新人なら入社のときに2着購入し、ボーナスで2着買い足せば、ほぼ1週間分がそろいます。今は1着3万円を切るスーツもたくさんあります。

体にピッタリ合うスーツならなおサマになります。私が気になるのは襟の下に出るツキジワです。パターンオーダーする段階でシワが出ないデザインにしてもらい、仕上がってからもう一回シワを取ってもらいます。ただ、ブランドによってうまく取れないケースがあります。また、上着の内ポケットも重視します。携帯電話や名刺入れがすっきりと収まる形状のポケットが意外とありません。この二つの理由で、今までいろんなブランドを試してきました。

百貨店との付き合いから、さまざまなブランドのスーツを試すという山本社長。パターンオーダーにせよ、既製服にせよ、襟の下にツキジワが出ないようフィッティングし、時にはお直しもする

笑顔には実利がある

私たちは日々お客様に接する仕事をしているので、ファッションもさることながら、どう振る舞うかも重要です。私が2年前に社長に就任してから追求してきたのが「幸せの空間作り」です。その核となるのが笑顔。笑顔があふれる空間では、お客様も従業員も幸せを感じられます。

今、「笑顔日本一のホテル」をめざし、従業員同士の投票により「スマイルベスト10」を選んでアンバサダーに認定し、ホテルに笑顔を広げる活動も行っています。

ホテルのハードを充実させてもそれはすぐに真似されてしまいます。しかし笑顔のようなソフトで先行すればアドバンテージが生じ、5年後に他のホテルが追随しても負けません。それに笑顔で接すると、お客様から真に有益な生の声をいただけることがあります。笑顔には「感じがよい」以上の効果があり、そうした情報は営業的にもプラスなのです。

社内のコミュニケーションがよくなるのも笑顔の効用です。みんながしかめっ面では情報伝達が滞ります。何か失敗して上司に報告したくても躊躇してしまい、話せないまま時が過ぎ事態が悪化する。私にも経験があります。各部門長にはくだけすぎくらいでいいから、いつもニコニコしておけと言っています(笑)。

愛用の逸品~学生時代にヨーロッパで購入したグッチのセーター

大学の3年生から4年生に上がる1978年の春に、添乗員の真似事をしながらヨーロッパを旅行したことがあります。そのときお土産で、このジップアップのセーターとカシミアのセーターを買いました。胸のところにグッチのマークがさりげなくついていて、あまり目立たないところが気に入っています。購入したときからもう40年も経っているのに、不思議と傷んだところがありません。今でも冬になると着用しています。

山本 護/Mamoru Mamoru
京王プラザホテル代表取締役社長。1979年慶應義塾大学経済学部卒。京王帝都電鉄(現・京王電鉄)入社。系列の桜ヶ丘カントリークラブ支配人、京王百貨店顧客政策部長、京王電鉄常務取締役・総合企画本部長などを務め、2016年より現職。

text:Top Communication
photograph:Takao Ota
make & hair:RINO