不変にして普遍。トレンチコートの永久欠番
衣服におけるスタンダードと言えば何だろうか。かの名デザイナー、イヴ・サン=ローランが「私がブルージーンズを発明したかった」と言葉を残したほど世界中で愛されているリーバイスのジーンズか、はたまたアイビーファッションの系譜を正統に継ぐブルックス ブラザーズのブレザーか。思い当たるものはいくつかあるが、冬の定番アイテムであるトレンチコートで挙げるとなると、バーバリーをおいて他にない。
ミリタリーに出自をもつトレンチコートは、戦時下での使い勝手を考えられたディテールをもつが、バーバリーが抜きんでて支持されているのは、機能的で耐久性のある生地と徹底した作り込みにある。コットンであるにも関わらず、高い撥水性をもったギャバジン生地は、ブランド創始者のトーマス・バーバリーが1879年に開発したものが今でも使われている。そして、英国北部のキャッスルフォードの工場で熟練の職人による100以上の工程を経て作り出される一品は、縫製の美しさに見惚れてしまうほど。
バーバリーのトレンチコートを纏えば、100年以上という歴史の重みを感じることになる。しかし、それは萎縮するようなプレッシャーといった類のものではなく、自信がみなぎる高揚感をもたらしてくれることだろう。ベルトを締め、襟を凛と立てて冬の街へ出れば、自然と足取りが軽くなるはずだ。
text:Masato Nachi
photograph:Kazuya Aoki
styling:Yoshiki Araki