ビジネスシーンで使えるコートの定番といえばステンカラーコートだ。小振りな衿と前ボタンを伏せた比翼式フロントを持つ一着は、プレーンな生地と相まってトラディショナルかつ控えめな印象といえる。どんなスーツにもマッチし、加えてトレンドにも左右されにくいことから、ビジネスコートに選んで間違いないデザインだろう。ただし、突出した個性を持たずスタンダードに徹したアイテムゆえに、ともすると一体どのモデルを選ぶべきか? という迷いが生じるのもステンカラーコートならでは悩みどころだ。そこで現代のビジネスパーソンが選ぶべきステンカラーコートの4要素をわかりやすく解説する。

Q 大人っぽい雰囲気を醸すには?

A 「膝上丈」を選ぶのが正解

ファッションシーンだけのトレンドでいえば、昨今は膝丈もしくは膝下丈くらいのいわゆるクラシカルなロング丈に話題が集中している。男性美が引き立つロング丈だが、使い勝手を考慮すると、やや扱いにくいのも正直なところだ。丈が長くなることは、そのまま重量増を意味し、厚手素材の一着ともなれば着疲れすることだってある。ならば短丈がよいかというとさにあらず、というのがビジネスユースの難しいところ。短丈は軽快に見えるが、裏を返せば“学生っぽい”という印象につながるからだ。ゆえに、ビジネススタイルとしての品位をキープしつつ、毎日着用しても煩わしくない丈という意味で、一番合理的なのが“膝上丈”がもっともふさわしいのだ。

TRADITIONAL WEATHERWEAR(トラディショナル ウェザーウエア)

4万9000円(税別)/トラディショナル ウェザーウェア(トラディショナル ウェザーウェア青山店)

英国コートの老舗であるマッキントッシュ。その名門が手掛けるデイリーウェアブランドが、トラディショナル ウェザーウェアだ。英国のスタイルを堅持しつつモダンな感覚を取り入れたアイテム作りで、昨今人気を博している。新作のコートは、3層構造のナイロンを用いた実用的な一着。防風・防水・撥水機能を持つのがポイント。キルティングライナー付きで保温性も抜群だ。

中綿式のキルティングライナーは温かく軽量。ボタンで脱着でき非常に便利。取り外すことで春先まで着用することができる。

Q 秋冬のスーツスタイルをまとめるには?

A ダークカラーを選ぶのが正解

コートは、ライトベージュなど軽い色味のモデルも多い。軽快さや洒落感をアピールする場合には有効なカラーだが、その反面、合わせるスーツやアイテムを選ぶことにもなる。というのも明るいカラーのコートには、同じように明るい色味のスーツがマッチするからだ。その意味で、とりわけ秋冬期においてはダークスーツが主流となる日本のビジネスシーンでは、ライトカラーのコートは所有していても使う機会が限られてしまうもの。加えて明るいカラーのコートは、独特の清潔感を感じさせるが、反面、汚れが目立ちやすいのも悩ましい。デイリーに使うのであれば、ダークカラーをチョイスしておくのがベストだろう。

MACKINTOSH LONDON(マッキントッシュ ロンドン)

13万6000円(税別)/マッキントッシュ ロンドン(SANYO SHOKAI)

英国コートの象徴的なブランドといえるマッキントッシュ ロンドン。素材選びから縫製・仕立てまでクラシックを貫いたハイエンドなコート作りには定評がある。シックを極めたブラック無地の一着は、しっとりとした光沢を放つウールシルク製。イタリアの高級生地ブランドであるロロ・ピアーナのストームシステムを採用しており、防風性に加え透湿機能も併せ持つ。ビジネスはもちろん、ドレッシーな装いにも対応する万能コートといえるだろう。

これまでも防風・透湿性能を持つ素材は多かった。しかしロロ・ピアーナのストームシステムは、ウールシルクなどエレガントな素材感はそのままに、現代的な機能を持つところがポイント。

Q コートスタイルを差別化するには?

A 上質素材を選ぶのが正解

スーツに比べてコートの使用頻度は少ない。厚手のものともなれば、かなり冷え込む時期になってから使用するという人も少なくない。加えてコートは室内に入れば脱ぐものであり、そのため消耗も比較的少ないアイテムといえる。であるのなら、思いきって一生使える贅沢素材から選び抜き、末長く愛用するのも賢い選び方のひとつ。たとえばカシミアコートならば見るからにリッチな雰囲気が味わえる。もちろん大切に扱えば10年持たせることも難しくない。コットンギャバジンやポリエステルなど化繊素材のデイリーコートが主流の秋冬ビジネススタイルにおいて、上質な素材を選ぶことで簡単に差別化を図ることができるのだ。

HICKEY FREEMAN(ヒッキー・フリーマン)

28万円(税別)/ヒッキー・フリーマン(トレンザ)

アメリカ大統領も愛用する米国ドレスブランドの第一人者ヒッキー・フリーマン。なかでもコートはビジネスの国らしい合理性と伝統あるブランドとしての格式の高さを込めた、まさに“一張羅”。今季の新作として贅を尽くしたフルカシミアコートをリリースし、注目を集めている。スーツに合わせられる余裕あるフィットでありながら、衿周りからポケット、そして裾周りに掛けてシャープさを演出する仕立ては見事の一語に尽きる。

黒無地でありながら、クオリティの高さがひと目でわかる100%カシミアの生地。植物のアザミを用いて起毛させた最上級のカシミアは、艶感あふれる豊かな毛並みが見どころ。優れた保温性を備えつつ非常に軽いところも見逃せない。

Q 春先まで軽快に羽織れるコートは?

A ベージュのラグランスリーブを選ぶのが正解

袖筒を腕の付け根部分から縫い付けるセットインスリーブとは異なり、衿ぐりから腋下の斜め方向に切り替えを設けた袖型をラグランスリーブと呼ぶ。戦時に生まれたラグランスリーブは、素材の薄手・厚手に関わらず、腕の運動量を確保しやすいところからオーバーコートやスポーツアウターに用いられることが多い。また、ショルダー位置が比較的任意に取れるラグランショルダーのコートは、腕回りも太くガッチリ体型の人に向く一着。セットインショルダーのコートで着心地やルックスに窮屈感が出てしまうという人は、ぜひ一度ラグランスリーブのコートにトライしてみてほしい。ベージュの色身とあいまって、軽やかにスリーシーズン活躍できる一着となるはずだ。

Aquascutum(アクアスキュータム)

11万円(税別)/アクアスキュータム(レナウン プレスポート)

メンズスタイルの本場であるロンドンで、約160年以上の歴史を誇るアクアスキュータム。写真のモデルである「シアウォーター」は、英国的なジェントルマンスタイルを体現する伝統的なステンカラー型。ラグランスリーブも老舗ならではの“三枚袖(三枚の生地パーツから形を作った袖筒)”により、非常にコンフォタブルに腕を動かせるフィットを実現させている。クラシカルな風合いのギャバジン素材を使用しており、適度な光沢と撥水性を備えているのも魅力。

内側にはアクアスキュータムのアイコンである、クラブチェック柄のウールカシミヤ製ライナーを搭載。ライナーはボタンで簡単に着脱できるため、3シーズン快適に着こなすことが可能。

問い合わせ情報

問い合わせ情報

トラディショナル ウェザーウェア 青山メンズ店 TEL:03‐6418‐5712
SANYO SHOKAI TEL:0120‐340‐460
トレンザ TEL:072‐856‐9871
レナウン プレスポート TEL:03‐4521‐8190

styling:Mariko Kawada
edit & text:Zeroyon Lab.
photograph:Tatsuya Ozawa(Studio Mug)