結婚指輪さえせず、控えめで上品なスタイルを貫く英国紳士が唯一身につけるアクセサリーとして選ぶのが、袖口を彩るカフスと小指にはめるシグネットリングである。元々シグネットリングは、ヨーロッパの貴族が印章や紋章を彫刻し、署名に使用していたリングで、貴族のみが所有できる“身分証明”の代わりとなるものであった。そのためファッションというより、身につける者の富や権力の象徴、誇りとしての側面が主であったようである。しかし近年は紳士の中でお洒落なファッションアイテムとして取り入れられはじめ、デザインも男女を問わない洗練されたものが販売されるようになっている。その決定版といえるのが英国のラグジュアリーブランド「Asprey(アスプレイ)」が125年以上昔のデザインアーカイブから復活させたシグネットリングだ。
アスプレイのシグネットリングはどれもニューボンドストリートにあるアスプレイ本店のワークショップで職人が丹精込めて制作している。18金のイエローゴールドを使い、刻印が入る部分はシンプルなクッション(四角)とオーバル(楕円)形を用意。フラットな鏡面に家紋やイニシャルなどを自由にデザインできるほか、ストーンをマウントすることも可能だ。エンブレムのような複雑な刻印の場合は別途費用と納期がかかるが、他にはないオリジナルのシグネットリングをオーダーメイドできる。
1862年にヴィクトリア女王によって英国王室御用達となったアスプレイのジュエリー。ファッションアイコンとして注目されるキャサリン妃が身につけていることで再注目されている。シグネットリングは身につける人をお洒落上級者に格上げしてくれるはずだ。
時代を超えて愛される普遍的な魅力を持つシグネットリングのようなアクセサリーはそう多くない。大切な方へのギフトとして、またご自身のコレクションの一つとしてその真価を発揮しそうだ。
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今は亡き恩師がシグネットリングをしていたことをふと思い出した。何が刻印されていたのか、どんなストーリーがあって身につけていたのか今となってはわからないが、きっと今もご家族が大切にされているだろう。身につける人の人となりを語ることのできるシグネットリングは、次世代に受け継がれていく逸品になるに違いない。
text:Seiko.E