王道にして挑戦的。オールブラックが示すタフなエグゼクティブの証
ビジネスシーンで使われる小物において、黒が基本色となるのは周知の通りだ。その点で、このセラピアンのブリーフケースは王道を外さない。しかもボディはもちろん、留め具やファスナーなどもすべてブラックで統一。シンプルで潔いワントーンのカラーリングは、武骨でスタイリッシュな印象を与えるだけでなく、スーツスタイルに欠かせない清潔感の向上にも一役買ってくれそうだ。
イタリア・ミラノに本拠地を構えるセラピアンは、由緒正しいレザーブランドとして知られる。ただし、このバッグ「ステバン」ではメインマテリアルにレザーを用いず、あえてキャンバス地を使用。そのうえでビニールを表面に貼りつけるPVC加工を施した。結果としてレザーより軽く、耐久性に優れ、高い撥水性も手にした。ブランドの頭文字からとったアイコニックな「S」の型押しは、タフで傷や汚れに強い、時代観にあったバッグに生まれ変わった証なのだ。
とはいえ、ハンドルなど随所には高品質なイタリアンレザーを採用し、エレガントに仕立てている。裏地は滑らかなマイクロファイバースエード仕様で、肌触りと耐久性が向上した。大きく開くメインポケットは必要十分な数に仕切られ、ジップ付きのサブポケットも配置。バッグ背面には、トロリーケースに連結可能なバンドも備えている。実用性に裏打ちされた、確かな機能美。ファッションの都、ミラノのクラフツマンシップを守り続けるブランドの矜持は、確かに根付いている。
得意とするレザーのみでの勝負にこだわらず、新たな素材を取り入れるチャレンジングな姿勢。挑戦的でありながら、デザインと機能を美しく保つバランス感覚。それらを兼ね備えたこのバッグは、だからこそエグゼクテティブな大人の品格を体現するのだ。
text:Naoki Masuyama
photograph:Kentaro Makita
styling:Eri Koide