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ティファニーに限らず、製造や流通の過程で自社商品のトレーサビリティーやサスティナビリティを公表する企業が増えている。企業活動が透明性を保ち、社会の持続可能性に貢献しているという消費者の共感を得ることは、継続的な経営にとっても重要になってきている。消費者としてもビジネスパーソンとしても、こうした変化を無視することはできない。
(STYLE編集部)
2006年、レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ブラッド・ダイヤモンド』はダイヤモンドの取引における「紛争ダイヤモンド」の実態をセンセーショナルに描き出した。アフリカ・シエラレオネの内戦(1991年‐2002年)における資金調達のため、ダイヤモンドが不正に取引された。
ダイヤモンドはその出自も曇りのないものにしなければならないと、ジュエリーブランド「ティファニー」が業界初の試みをスタートさせた。調達した個別登録済みダイヤモンドの原産地(原産地域または原産国)情報を公表することで、商品流通の透明性を確保するという。2020年までには個々の製造工程情報の公開も予定している。
原産地を公表するという取り組みは、「紛争と無関係なダイヤモンド」の調達に関する一般的な保証の枠を超え、非常に厳格で責任ある資源調達が行われていることを確約することだ。
「自然の奇跡によって、30億年も昔に結晶化し、地表付近まで運ばれてきたダイヤモンドは、人生の大切な瞬間を共に刻む象徴的な存在。ティファニーダイヤモンドには何ひとつ不透明なことがあってはなりません」とティファニー最高経営責任者のアレッサンドロ・ボリオーロ氏は語る。
「現在のダイヤモンド業界の慣行では、世界のダイヤモンド原産地を余すことなく明確に特定することは困難だが、自社のダイヤモンドサプライチェーンに新たな透明性の水準を適用していくことで、業界を変えていきたい」と続けた。
すでに世界各地のティファニーブティックでは、Love&Engagementのケースラインに陳列するダイヤモンドリングに、個々の原産地情報を分かりやすく表示している。さらに、ティファニーのセールスプロフェッショナルやカスタマーサービスに尋ねれば、すべての個別登録済みダイヤモンドの原産地情報を聞くことができるという。
ティファニーは、自社のカット・研磨工場の運営を行っている。ここでは1500人以上の職人が最高のダイヤモンドクオリティと卓越したクラフトマンシップの維持に情熱を注いでいる。現在、ティファニーの扱う個別登録済みダイヤモンド全体のおよそ80~90%が、ベルギー、ボツワナ、モーリシャス、ベトナム、カンボジアの自社運営工房の職人の手を介している。
職人たちはここで、責任を持った管理・運営が行われている信頼できる採掘業者(主にボツワナ、カナダ、ナミビア、ロシア、南アフリカ)から調達したダイヤモンドの原石のデザインを考え、確認し、カットや研磨を行う。
残りの10~20%のダイヤモンドは、ティファニーのダイヤモンド調達保証プロトコルを遵守する信頼できるサプライヤーから入手した研磨済みダイヤモンドが占めている。同社のプロトコルでは、ジンバブエやアンゴラなど、ダイヤモンドに関連する人権問題が懸念されている国からの調達を行わないよう保証しているという。
サスティナビリティを重視する気運は、ジュエリーを購入する人にまで浸透してきており、年々高まっている。大切なダイヤモンドがどこで産出されたのか、どのような流通を経て手元に届いたのかを知る権利に応えるティファニーの試みは、ブランド価値をさらに高めることにつながりそうだ。
【ティファニーの取り組みについて】
サステナビリティに関するレポートを通し、環境と社会に対する責任ある取り組みの詳細を公開中
(http://www.tiffany.com/sustainability)
ダイヤモンド原産地の透明性を高める新たな段階に進み、お客様に向けて原産地を公開
(http://www.tiffany.com/engagement/diamond-provenance)
text:Moca Kurio