「山神シャツ」は、完全オリジナル技術の集大成

ファッションデザイナーに憧れて専門学校を卒業した山神正則さんは、様々なアパレルメーカーで服作りに携わりながら、独学でオリジナルのシャツ仕立てを確立。2011年に自身の技術をセレクトショップのストラスブルゴに持ち込むと、オーダーシャツ職人として採用される形で工房を与えられた。いまはストラスブルゴ南青山店に併設されている、オーダー専門「ハウス テイラーズ ラボ」で日々シャツを縫い続けている。「シャツを仕立てるには、人体を知らねばならない」と、人体工学の専門書を愛読するなど日夜研鑽を積んでいる。

細部まで驚異的なまでにこだわったドレスシャツ

シャツ各3万8000円(税別)/ともに山神シャツ(ストラスブルゴ)

山神さんのオーダーシャツは「スーツの下に着る」シャツであることが大前提。そのため主張せず、ジャケットの中に納まりの良い、一見シンプルなシャツとなる。しかし、そのフィッティングは着る人をもっとも美しく見せるフォルムであるとともに、着る人の体を理想的に覆うように精密に仕立てられている。「ジャストフィットとはこうあるべき」を貫くとともに、各部の型紙の取り方から縫製に至るまで、着心地を最優先するために編み出されたオリジナルの技法が採用されている。そのためひとたびジャケットを脱げば、シャツ一枚の「肉体美」が浮かび上がるのだ。

山神シャツが編み出した“こだわり”とは

山神シャツのこだわり その1【生地は必ず洗ってから仕立てる】

糊を落とすことで、シャツ生地が呼吸を始める

お客様がオーダー用に選んだシャツ生地は1着分を山神さんが自身で手洗いしてから裁断される。これは生地の仕上げ段階で使われる糊成分を洗い流し、生地を自然な状態に戻すためだ。既製品のシャツなど、自宅で一度洗うと風合いが変わったり、ときには縮んだりする事がある。山神シャツは、新品でもすでに水を通した状態なので、その後に生地の風合いや着心地が大きく変わることはない。

山神シャツのこだわり その2【貝ボタンもこだわりの特別別注品】

左がオリジナル、糸を通す穴が小さく少し中心をずらして開けられている

オリジナルのボタンを制作するブランドは少なくないが、山神シャツのオリジナルボタンは、なかでも珠玉だ。一般的な貝ボタンより小径で、四つ穴を小さく、さらに穴の位置を中心から等距離ではなく、少しずらした位置で開けるよう依頼している。こうすることで指掛かりがよく、掛け外しが楽になるのだという。しかしボタンメーカーとしては非常に手間がかかるため、嫌がられるのだそうだ。

山神シャツのこだわり その3【ボタン付けの一工夫で台襟を立体化】

ボタンを留める糸の通し方で台襟が自然に首に沿ってカーブする

機械で一気に縫い付けるボタン付けは効率的だが、山神さんはひとつずつ手作業で行っている。その理由のひとつのは、シャツの第一ボタンを取り付ける際に台襟の表生地と裏生地を、少しだけずらして縫い付けるから。こうすることで台襟の端がカーブして首筋に吸い付き、ボタンを留めたときに台襟の角が浮かないようになる。この作業を機械で行うことは無理だから、と山神さんは笑う。ここまで微妙なカーブを作り出す手仕事をしている仕立てシャツは見たことがない。

山神さんが型紙を監修したストラスブルゴのオリジナルシャツ

各1万5000円(税別)/ストラスブルゴ(ストラスブルゴ南青山店)

山神シャツはオーダーから仕上がりまでは約2カ月。もっと気軽に山神さんのシャツを体験するならストラスブルゴのオリジナルシャツを。型紙は山神さんが監修し、本人が納得の行く工場を厳選して量産したものだ。

山神シャツをオーダーするなら「ハウステーラーズラボ」へ

ストラスブルゴ南青山店3階は、スーツ、シャツが常設オーダーできる専用フロア

山神さんが常駐する「ハウステーラーズラボ」は、ストラスブルゴ南青山店の3階にある。ここはシャツ職人の山神正則さんの他、専属のスーツ職人・大島崇照さんらが常時オーダーを受け付けるアトリエだ。トランクショーなどで店に不在のこともあるため、予約して行くのがベター。

【トランクショー情報】

5月18日㈯・19日㈰ ストラスブルゴ 京都店
5月26日㈰・27日㈪ ストラスブルゴ 梅田阪急メンズ館店
6月1日㈯・2日㈰ ストラスブルゴ 大丸神戸店
6月8日㈯・9日㈰ ストラスブルゴ 銀座店

問い合わせ情報

問い合わせ情報

ストラスブルゴ
住所:東京都港区南青山3‐18‐1 3階
TEL:03‐3470‐6367
営業時間:11時~20時
定休日:不定休

text:Yasuyuki Ikeda(04)
photograph:Tatsuya Ozawa(Studio MUG)