第一回「クールビズのポロシャツ問題」

「ポロシャツを素敵に着こなす大人があまりいない」

【A】ねぇ、あそこのテーブルで打合せしているあの人、素敵だと思わない?

【K】本当。ポロシャツ着ている人よね? 若くは見えるけど、きっと40代よね。エグゼクティブな匂いがプンプンする。ITかなんかの経営者っぽい。

【A】あの余裕のある雰囲気、タダモノじゃないわね。NYに住んでいた頃、ホテルでランチをするとああいうタイプがよくいたのよ。

【K】いかにも「モテます」「仕事できます」みたいな?

【A】そうそう、いつもここで高いランチを普通に食べています、みたいな(笑)。

【M】それにしても目が離せないわね(笑)。ポロシャツって、大人には難しいアイテムなはずなのに、ズルいくらい上手く着こなしているわ。

【K】大人はポロシャツ選びを失敗するとダサくなるものね。若い子なら、例え洗い過ぎて襟がくたっとなったポロシャツでも、肌が素材に負けないから爽やかに着こなせたりできるけど。

【M】大人はそういうワケにはいかないのよね。肌も違うし体型も違うもの。女性だってそうでしょう? 私たちが襟のくたびれたポロシャツを着てお腹をチラつかせても、誰も「爽やかだ」とか「可愛い」だなんて思ってくれないし。

【K】想像したら怖いね。ポロシャツって学生が着ているイメージが強いのは、あんな風にポロシャツを素敵に着こなせている大人が少ないからかも。

【A】体型を気にして大き目サイズを選んでいたり、マナーを気にしてタックインしているビジネスマンとかね。ゴルフ用のように裾が長いものでない限り、ポロシャツは裾を出した方がカッコいいじゃない? お腹周りが気になるなら尚更。

【K】そろそろクールビズが始まるから、ポロシャツで出勤する人も増えてくるよね。そのなかでもタックイン派とタックアウト派に分かれるみたい。職場の雰囲気にもよるんじゃない? 上司がいて「裾を入れろ」と言われたら入れなきゃ仕方ないし。でも、経営者やエグゼクティブなら上質素材のポロシャツをタックアウトして着てほしいよね。あの人みたいに……。

【A】クールビズでのビジネススタイルって「自分らしさ」や「似合っているかどうか」よりも、まだまだ必要以上に「ビジネスマナー的に大丈夫かどうか」を優先している気がする。とりあえず地味目にまとめているコーディネートをよく見かけるわ。

【K】必要以上に……、半袖ワイシャツにネクタイをしたり?

【A】そうそう! 素敵さを感じない……(笑)。

【M】地味が行き過ぎて、存在感まで失ってはもったいないわね。マナーも大事だけど、クールビズなら相手に清潔感や清涼感を感じさせるスタイルの方が素敵なのに。例えば、この季節ならではのカラーを選ぶのもありだと思うの。

【K】確かに、白や水色ならビジネスシーンでも悪目立ちしないし涼しげ。薄いラベンダーも素敵だな。あの人のポロシャツはダークブラウンだけど……品がよくてセクシーだね。セクシーなんだけど、横にいるTHE ビジネスマンスタイル人との違和感がない。むしろラスボス感を漂わせてない?(笑)

【A】カッコいい大人って、若い男の子とはまた違う渋さがあるわよね。思わず見とれてしまった。

【M】そうね、シンプルで控えめでもインパクトに残るスタイルができる大人はパーフェクト。そんなポロシャツスタイルができる人を増やしたいわね。

「大人が素敵に見えるポロシャツとは」

FEDELI/ショートスリーブ カノコポロシャツ 2万9000円(税別)colour: WHITE、BLACK、PINK、SAX、NAVY、LAVENDER 「シルクのような上品な光沢となめらかな肌触りが特徴です。タックインをしなくても良いように作られたデザインですので、裾を出して着用してもだらしなく見えません。パンツと合わせた時の着丈感が絶妙で、シルエットが本当に格好良いです」(ビームス 安武さん)
「襟と身頃の間に台襟とよばれるパーツが付いており、首周りを立体的に見せてくれますので、ワイシャツのようなドレス感があります。ピンと張りのある襟が清潔感やきちんとした印象を相手に与えながら、クールな雰囲気も演出できます。ジャケットとの相性も抜群です」(ビームス 安武さん)

【M】クールビズで大人がポロシャツを着るなら、素材はもちろん、シルエットを真剣に選ばないといけないのよね。体型を隠すために大きめサイズを着ている人がいるけど、やっぱりシルエットがだらしなくて不自然。お腹が気になるなら、お腹を基準に考えて少しだけ余裕があるものを選ぶのが正解ね。

【K】40代を過ぎると、好きなブランドに拘るより、まず自分の体型に合ったシルエットかどうかを考えて選ぶことがとても重要よね。セレクトショップに行けば、色んなブランドのポロシャツがあるから、自分に合ったシルエットのものを見つけ易いんじゃないかな。

【M】フィッティングは面倒だけど、イメージしていた感じと着姿がかけ離れている場合もあるから、なおざりにできないのよ。

【A】それを聞いて思い出したけど、お洒落にうるさい広告マンの友人がいてね、うるさいだけあって本当にいつ会っても隙がないの。洋服選びのコツを訊いたことがあるんだけど、Tシャツでさえ購入する前には必ずフィッティングをするんだって。フィッティングルームの鏡の前で、前後左右のシルエットをチェックするのはもちろん、腕を上げたりひと通り体操みたいな動きをして、その時のシルエットと着用感を確かめるそうよ。

【K】フィッティングルームで体操しちゃうの?(笑)お洒落な人の舞台裏って感じね。お洒落賢者って、無駄な買い物をしないよね。「それ適当に選んだ?」っていうものがない。その代わり、投資するところには思い切って投資する。だから時間を掛けて吟味するのも当然なのかもね。どんなにカッコいいデザインでも、本人に似合わなきゃ意味がないし。

【M】そう、例えばポロシャツの襟。細い人ならスタイリッシュな小さい襟でも似合うけど、体格の良い人はバランスが悪くなる。逆に襟が大き過ぎると、ボタンを開けた時のバランスがビジネスシーンだと難しそう。

【A】そうそう、お顔を小さく見せたいなら、小さい襟は避けた方がいいわね。

【K】台襟があってピンとした襟のものなら、クールビズに取り入れやすそう。ジャケットを着てもサマになるしね。

「たかがポロシャツ、されどポロシャツ」

Cruciani/ニットポロシャツ 4万1000円(税別)colour:BLACK、D.BROWN、WINE、NAVY 「体のラインにフィットするサイズバランスにより、美しいシルエットと着心地を実現しています。ふんわりリラックス感を漂わせながら着用すれば、簡単に『大人の余裕』を表現できるでしょう」(ビームス 安武さん)
「クルチアーニのコットンニットは、言わずもがな最高級のコットンを使用しています。糸がとにかく細い。とろけるように体に馴染みつつ、美しいシルエットを描きます。この質感、高そうにしか見えないでしょう?(笑)」(ビームス 安武さん)
「この細いリブの袖や裾が、シンプルで洗練された雰囲気を醸し出しています。太めより細めの方が、より大人らしいシルエットになりますよ」(ビームス 安武さん)

【A】ねぇ、あの人のポロシャツって、見るからに上質そうじゃない?

【M】あれは素材が良いから「品格」や「余裕」があるように見えるのよ。リブのデザインから見ると……クルチアーニっぽいわね。きっと今の時期だからコットンだろうけど、やはり品格は隠せないな。

【A】マリさん、さすが(笑)肌触りが良さそうで、触ってみたくなっちゃうわ……。

【K】やめなさい、アキ(笑)確かにクルチアーニならカジュアル過ぎず、ちょっと上品な場所でも浮かないし。あんな風にリラックスムードを漂わせられたら、ビジネスシーンでも「全部任せても大丈夫」って思えるかもね。

【A】実際話すとどんな人なんだろう? その人に興味が湧くって時点で、あのポロシャツは成功ね。

【M】ただの普段着になりがちなポロシャツでも、拘って選べばきちんとしたクールビズでも使えるお洒落アイテムに成り得るってことね。

【K】身に付ける服は口ほどにものを言うっていうもの。たかがポロシャツ、されどポロシャツでこの夏は乗り切って欲しいものです。

【今回ご協力いただいた方】

ビームス プレス 安武俊宏氏
豊富な知識と抜群のセンスに、撮影スタッフ一同魅了されました。

【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】

<委員会設立の趣旨>
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。

re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。

マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。

クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。

アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。

photo:Ayako Nakamura
text:re*colabo