高級レストランから拒否されるスタイルとは?

例えば、グランメゾンとされる高級フレンチストランの公式サイトを見てみると、こう記してある。


「ドレスコード:スマートカジュアル」

スマートカジュアルとはよく聞くが、これは具体的に、どんなスタイルを指すのだろう?

【岡部】「スマートって言われても、実際なかなか、わかりませんよね? 僕自身、ドレスコードは、周囲から浮いてしまって、ご本人が恥ずかしい思いをされないためにある。そう思っています。今や、どんな高級レストランも異口同音でNGと謳っているアイテムはTシャツ、短パン、サンダルくらいです」

昨今の傾向として、ドレスダウンが進んでいるレストラン業界だが、その点はどうお考えなのか?

【岡部】「ビストロが増え、それに見合うスタイルということで、ドレスコードがよりカジュアルになってきています。それに連れて、グランメゾンも、お客様には来て欲しいと思っていますから、ノータイでも対応するようになってきていますね」

笑顔も素敵な岡部氏。長い接客経験があるからこそ、その言葉に重みを感じる

レストランは、ディズニーランド!

岡部氏によると、ドレスコードに日本人がなかなか馴染めないのは、和食とフレンチでマナーの原点が違うからだと説明する。

【岡部】「和食でフォーマルに会食するとなったら、料亭で個室というプライベートな時間が基本ですよね。一方のフレンチは、宮廷料理から発展した歴史があるため、晩餐会といったパーティの延長線上にレストランはあります。つまり、レストランはどこも、パブリックな場所なんですね。文化の違いもありますが、自分をレストランという空間でどう表現して、どう魅せるか。そこに重きが置かれていると思います」

確かに、マナーの発想の根本が日本とフランスでは異なるようだ。しかし、臆することは全くないと岡部氏は続ける。

【岡部】「言ってしまえばディズニーランドです(笑)。皆さんがディズニーランドに行くときの事を想像してみて下さい。キャラクターの耳が付いたカチューシャを頭に乗せ、あの世界観に浸ってしまった方がきっと楽しいですよね? 斜に構えていたり、場にそぐわない格好をしていると、何も楽しめない。それは、レストランも同じなんです」

高級フレンチに絶対のマストアイテム

レストランを心から楽しむため、岡部氏が持っているべきと指摘するアイテムは以下の通りだ。

【岡部】「ジャケットにパンツ、襟付きのシャツがまずは基本。ジャケットはグレー系がベターで、パンツはジーンズなどのワークパンツ以外のものを選びましょう。それから、靴はぜひレザーシューズを履いて下さい。サービスの人間って、結構、足元を見るんですよ(笑)。それでサービスの質を変えることは絶対にありませんが、ちゃんとしたキレイな靴を履かれていると、こちらも背筋が一段と伸びます」

革靴は新たに買うなら、汎用性の高いコインローファーがお薦め。さらに、ひと昔前と違って昨今は、ネクタイ不要=ノータイOKというレストランも増えているため、襟元がキレイに見えるボタンダウンのシャツもお薦めアイテムとのこと。どんなに格式の高いレストランであっても、常に意識すべきは“キレイめ”スタイルなのだ。

【岡部】「さらに申し上げると、ポケットチーフが何枚かあれば、理想的ですね。胸元にさりげなく刺すだけで、お洒落に見えます。ビジネススーツは本来、カジュアル寄りのスタイルで、決してフォーマルではないのですが、チーフを指すだけで劇的に印象が変わります。あとは、細かいところですが、腕時計も身に着けていた方がスマートでしょう。食事中に携帯電話で時間を確認するのは……そう思いませんか?」

ポケットチーフや時計は持っていると重宝する便利アイテム「とにかく、ほかのお客様と比べて浮かないようなお洒落が一番大切」と岡部氏
ゲストと会話を重ねることで、その人の好みなどを推し量るという岡部氏。「ワインのことなど、分からないことは恥ずかしがらずにどんどん聞いた方が楽しめますよ」

不明点は積極的に聞く姿勢も大切

そして、分からないことがあれば、積極的にレストランに聞くという姿勢も大切だと付け加える。

【岡部】「日本人のお客様って、そこが不得意というか、聞けない方が多い気がします。『今さら』とか『恥ずかしい』と思ってしまう。聞いてはいけないタブーのようなことが、日本人の中には、たくさんあるのではないでしょうか? 金額のこととか。ですから、ドレスコードに関しても、例えば、予約をされるときなどに、どんどん聞いて頂いた方がいいと思います。こちらは、『ほかのお客様は、ジャケットとネクタイを着用されています』という風にお応えする。周りの方はこんな感じです、こんな方が多いですということをお伝えできますから」

最後に、岡部氏は「楽しむことが何よりも大切なのだ」と強調した。

【岡部】「何より、食事を楽しむことが最も重要。そういう意味では夏のプールや海と同じだと考えても良いでしょう。水着には、その年の流行があって、それを踏まえて皆さんが水着を買って、プールや海に行かれるわけじゃないですか。レストランも一緒です。思いっきりお洒落をして、美味しいご飯を食べて、レストランで目立っちゃおう(笑)。それぐらいの気持ちでレストランに行かれるのが一番楽しいと僕は思いますよ」

問い合わせ情報

問い合わせ情報

レストラン アロム
住所:東京都新宿区袋町3 神楽坂センタービル1F
TEL:03‐6228‐1449
営業時間:11時30分~13時(LO)/18時~21時(LO)
※ワインバー18時~23時(フードLO22時、ドリンクLO22時30分)
定休日:無休
※現店舗での営業は2019年9月27日(金)まで。2019年10月5日(土)より、下記にて移転リニューアル
住所:東京都品川区北品川5‐6‐1 大崎ブライトタワー1F
TEL:03‐6277‐4108(2019年10月5日より)


text:Itaru Tashiro
photograh:Jiro Ohtani
location:Restaurant AROMES