キーワードは「アズーロ・エ・マローネ(青と茶)」
ビジネススーツの定番色と言えばネイビーとグレー。この2色があればビジネスの装いに事足りることは間違いない――。その定説にゆらぎはないけれど、最近ある色が浮上してきている。それがブラウン。精悍なネイビーより柔らかく、上品なグレーに比べて遊びが効いた、ビジネススーツの新たな候補色だ。
落ち着きやぬくもりを感じさせる色であるブラウンのスーツは、柔和さを出しつつ着こなしに新味を与えてくれる。明るいブラウンは避けて渋めのブラウンを選べばこれまでのスーツと同じ感覚で着られる。本連載の第1回でも紹介したような温かみのある起毛感のある生地も季節感を演出できていいが、よりフォーマル度を上げたいならやや光沢のあるなめらかな質感の生地を選ぶといいだろう。
今回合わせた麻布テーラーのブラウンカラーのスーツは、イタリアの高級服地メーカー「TALLIA DI DELFINO(タリア・ディ・デルフィノ)」のウール100%の生地を仕立てたもの。超細番手の糸を経糸のみ二重配列にすることで出るハリやコシ、細番手ならではのなめらかさを持つ生地は、カジュアルになりすぎることもなくビジネスシーンに取り入れやすい。
ブラウンスーツにはどんなVゾーンや靴を合わせればいいか、そのヒントの一つにイタリアの「アズーロ・エ・マローネ(azzurro e marrone)」がある。直訳すると「青(紺)と茶」で、この2色で全身をコーディネートするというもの。清潔感のあるブルーやネイビーと落ち着きのあるブラウンはとても相性がよく、かつ着る者を洒脱に見せてくれる。ビジネスシーンだと「ネイビーのスーツにブラウンの小物」の組み合わせが代表的だが、これを逆に考えればいい。
今回はブラウンのスーツにホワイトのシャツ、ブルー・ネイビー・ブラウンの幅広ストライプのネクタイを合わせた。幅広のストライプ柄は今シーズンのトレンドだ。アズーロ・エ・マローネの法則に沿ってシャツをサックスブルーにするとより遊びの効いた着こなしになる。一方、ネクタイをネイビーの無地や小紋柄など定番のデザインに変えるとネイビーの分量が増えて堅実さが増し、より引き締まった印象になる。
靴もアズーロ・エ・マローネに則り、スーツと同系色のダークブラウンのUチップをセレクト。黒の靴だとコントラストがきつすぎてせっかくの柔らかな雰囲気を損ねてしまうので避けたい。Uチップはビジネス用の靴としてはややカジュアルな部類に入るが、ブラウンスーツのコーディネートとは相性がよく合わせやすい。
最近ビジネスの装いがマンネリ化してきた、ちょっと変化がほしい。そんなふうに感じているならネイビー、グレーに続く次の候補としてぜひトライしてほしいブラウンのスーツ。仕事にも新鮮な気持ちで向き合えそうだ。
photograph:Masahiro Okamura
fashion direction:Hiroshi Morioka
hair & make:Ryohei Katsuma
edit & text:d・e・w