横山大観(1868-1958)は、東京美術学校(現・東京芸術大学)に学んだのち、師の岡倉天心とともに同校を去り美術学院を設立。新時代における新たな日本画の創出を目指した。西洋から様々な情報が打ち寄せる時代のなかで、日本古来の技法を継承しつつ、新たな独自の技法を開発し数々の大作を生み出すことになる。

近代日本画壇の巨匠としての評価を耳にしたことがある人は多いだろう。しかし、その絵の特徴となると、答えるのは難しい。ここは一歩踏み込んで、絵画をじっくり眺めてみよう。大観の特徴的な技法のひとつに「朦朧体(もうろうたい)」がある。線による描画を抑えた独特の没線画法を指すものだ。

重要文化財《生々流転》(部分) 1923年 横山大観 東京国立近代美術館 巻子 絹本墨画55.3×4070.0cm 日本一長い画巻に水の一生の物語を描いたもの。山間に湧く雲が一定の雫になって流れは始め、周囲の山々や動物、人々の生活を潤しながら、川が流れていくさまを描いている。重要文化財にも指定される長さ40mの画巻が一挙公開されるので必見。 [京都展では、巻き替えあり]

今回の展覧会では、代表作とされる日本一長い画巻であり重要文化財の《生々流転》が公開される。また絢爛豪華な《夜桜》、《紅葉》が同時に展示されるのも珍しく、こちらも注目だ。さらに100年ぶりに発見されたという《白衣観音》や《彗星》など、新出作品や習作などの資料も豊富に展示される予定だ。製作の過程から大観の芸術の本質を探る構成だ。巨匠のスケールの大きさに、圧倒されることだろう。

《紅葉》(左隻) 1931年 横山大観 足立美術館蔵 六曲一双 紙本彩色各163.3×361.0cm 鮮明な色合いにプラチナが輝く絢爛豪華な作品。その力強い美しさが大波のように押し寄せてくる感覚を覚える。日本画材の美しさを最大限に引き出している。 [展示期間 東京展:5月8日~5月27日、京都展:6月8日~7月1日]
《白衣観音》1908年 横山大観 個人蔵 軸、絹本彩色140.3×113.4cm 女性のような観音さまを描いた大作。105年前に刊行された「大観画集」にモノクロで掲載されて以降、行方が分からなかった作品。

今回の展覧会のもう1つの魅力は、音声ガイドの声に歌舞伎役者、俳優として活躍する中村獅童氏を起用していること。2013年に公開された映画「天心」で横山大観役を演じた獅童氏の思い入れが、まるで大観の意志を語るかのようだ。

春の陽気に誘われながら、ぶらりと芸術の世界に足を踏み入れてはいかがだろう。きっと日頃、使わない脳が動き出し、大いに刺激を受けるはずだ。

「生誕150年 横山大観展」

問い合わせ情報

「生誕150年 横山大観展」
2018年4月13日(金)~5月27日(日)
東京国立近代美術館(東京・北の丸公園)
10:00~17:00(金、土曜日は20:00まで)入館は閉館の30分前まで
月曜休館(ただし4月30日(月・休)は開館

text:Sayuri Yukinaga