JR京都駅から鉄道で、わずか2駅9分。滋賀県の大津に、商店街で空き家となった町家を利用したメディア型ホテルが誕生した。「商店街HOTEL 講 大津百町」は、町家という空間を生かしながらホテル同等のサービスを提供する、新しいコンセプトのホテルだ。

例えばコンシェルジュがモーニングのある喫茶店や夕食を楽しめる地元の隠れた名店などを教えたり、食材やお土産などを買える商店街の店舗を巡るツアーを開催したり、昔ながらの提灯屋や簾屋といった街の見どころを案内するなど、ホテルにやってきた人たちが街を楽しみ、消費をすることをホテルが手伝う。こうして街を蘇らせることを目的にしている点が、従来のホテルとは大きく異なる。

また各地の宿泊税や入湯税と同じように、宿泊料金の中から1人1泊150円を集めて商店街に寄付し活性化に役立てる「ステイ・ファウンディング」を初の試みとして導入している。ボランティアではない形の地域活性化、訪れた人が楽しんで旅をすることで地域が元気になる仕組みにこだわった。

客室タイプを集めた「近江屋」の201号室のベッドルーム
アーケード商店街に建つ1棟貸切タイプ「丸屋」の外観

リノベーションといっても、一般的な貸し町家や民泊とはクオリティーがまったく異なる。大津百町商店街町家ホテルプロジェクトを起し、ホテルオーナーとして「講」を生み出したのは、滋賀県竜王町で高品質な木造注文住宅をつくり続ける谷口工務店。7軒全ての町家の設計を建築家・竹原 義二が、庭は荻野寿也景観設計が手がけている。7軒のうち5軒は家族や友人との旅に適した一棟貸切りタイプ、2軒はひとり旅やビジネスにも最適な部屋割りタイプだ。全室にバス・トイレを完備し、室内には一脚100万円以上するデンマーク家具等を配置。町家というと冬は寒く、夏は暑いイメージがあるが、一般のホテルと同じように快適さを重視している。

客室タイプを集めた「茶屋」101号室のバスルーム・洗面
客室タイプを集めた「茶屋」101号室の内庭

朝食には、タニムメ水産で特別に仕込んでもらったうなぎ茶漬けのほか、滋賀の食材がふんだんに使われている。琵琶湖で採れたアユやスジエビなどの湖魚、滋賀の郷土食材であるえび豆や湯葉、赤こんにゃくなどのおいしさを朝から堪能できるのがうれしい。京都観光や関西出張の拠点に、町家を体験しながら、まだまだ知られていない隠れた大津の楽しみを見つけてみてはいかがだろうか。

朝食は滋賀の食材に舌鼓を打つ
近江屋にあるレストランカウンター席

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同グループでは新潟県南魚沼市の大沢山温泉にある「里山十帖」、長野県松本市の浅間温泉にある「浅間温泉 小柳」も運営している。本記事でご紹介した大津のほか、さらにこの夏には箱根強羅地区に「箱根本箱」も開業予定。お客が商店街でお金をつかい、住民と交流することが地域貢献活動になる、こんな宿に泊まれば、古き良き日本を知る旅ができそうだ。

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商店街HOTEL 講 大津百町(しょうてんがいほてる こう おおつひゃくちょう)

text:Rina Araki