10月5日、ツインバード工業は「全自動コーヒーメーカー CM-D457B」を発売した(以下、コーヒーメーカー)。東京・南千住にある「カフェ・バッハ」の店主であり、コーヒー界のレジェンドとして知られる田口護氏が監修したコーヒーメーカーだ。
コーヒーメーカー上部にコーヒー豆を入れると、あとはボタンを一つ押すだけで、豆を挽き、コーヒーをドリップしてくれる。これで、プロがハンドドリップしたような最高の一杯を楽しめるのだ。
このコーヒーメーカーを開発するにあたり、田口氏は開発陣に「コーヒーを正しく淹れる」ための3つのポイントを教えたという。それは、
・湯温は83度
・コーヒー豆を均一にひく(粒度を揃える)
・湯の注ぎ方
だった。田口氏が指南したこのポイントを、このコーヒーメーカーでは以下のような方法で再現している。
●湯温は83度と90度の2つ
「コーヒーの味を決めるのに一番大切なのは抽出温度。抽出温度は命」という田口氏の教えに沿って、湯温を83度と90度の2つから選べるようになっている。一般的に抽出温度が高いとコーヒーの苦みが強くなり、低いと酸味が強くなる傾向があるが、田口氏のお薦めは83度。83度の湯温は、深煎りから浅煎りまで幅広い焙煎具合の豆に合う適温だという。
ツインバード工業が主催したイベント「全自動コーヒーメーカー ワークショップ」にお邪魔して、実際に同じ豆(バッハブレンド)を83度と90度で抽出して飲み比べてみたところ、確かに83度で抽出したものはバランスが良く、90度だと苦みが目立った。また、エチオピアやケニアなど浅煎りで酸味が特徴的なコーヒーは90度のほうが味わいが華やかでおいしく感じた。このように、豆の種類や自分の味の好みに合わせて湯温を変えてコーヒーを抽出できる。
●粒度を揃える
挽いた豆の粒度は、コーヒーの成分の出方や濾過のスピードを変え、コーヒーの味に大きな影響を与える。
一般的なコーヒーミルは回転刃で豆を砕くプロペラ式が多いが、このコーヒーメーカーでは、低速臼式フラットミルを採用。ゆっくりと、臼ですりつぶすように挽くことにより、コーヒーの香りを飛ばす摩擦熱が発生しにくく、雑味の原因となる細かい粉をできるだけ出さずに均一な粒度でコーヒー豆を挽くことができる。ミルは取り外して付属のブラシで簡単にお手入れができるのもうれしい。
●湯の注ぎ方
ドリッパーの上には約2cmの隙間があり、挽かれたコーヒー豆がドリッパーに落ちてくるのが外から見えるようになっている。この段階でコーヒーのいい香りが漂ってくるのが楽しい。
ドリッパーに入ったコーヒー豆を均一にドリップするため、このコーヒーメーカーでは六方向からドリッパー中央に向かって湯が注がれるようになっている。このとき、杯数に応じた適切な蒸らし時間がプログラミングされており、プロがハンドドリップのような、理想的なドリップが可能になっている。ハンドドリップでは渦を描くように湯を注ぐことが多いが、これを適切な蒸らしと六方向からの注湯で再現しているのだ。
編集部でもコーヒーメーカーを借りて試用してみたが、一番多かった感想は「喫茶店で飲むのと同じ味がする!」というもの。豆の味を素直に出した、スッキリした味のコーヒーに仕上がる。自宅にいながらボタン一つで喫茶店の味を楽しめるのは簡単でいい。水の量を減らして抽出し、氷を入れたグラスに入れればアイスコーヒーを作るのも簡単だ。
粉に挽いたコーヒー豆からコーヒーを淹れたり、ミルとして豆を挽くところだけ使い、ハンドドリップでコーヒーを淹れたりすることもできる。コーヒー好き、特に、複数のコーヒー豆を飲み比べることが多い人には非常にうれしいコーヒーメーカーと言えそうである。
editor's comment
ツインバード工業は、約30年コーヒーメーカーを作ってきた実績のあるメーカー。2017年に大ヒットした無印良品の「豆から挽けるコーヒーメーカー」も、実はツインバード工業のOEM製品である。ハンドドリップが苦にならないコーヒー好きでも、おいしくコーヒーを入れるには時間がかかり、それなりに面倒なもの。それがボタン一つでできるのだから、コーヒー好きこそ手に入れたいコーヒーメーカーだといえそうだ。
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