スコットランド産のシングルモルト、グレンモーレンジィを知っているだろうか? 樽熟成のパイオニアとしても知られる蒸留所が生み出す香り豊かなスコッチは飲みやすく、ウイスキー初心者にもうってつけだ。そしてもちろんウイスキー党の舌もうならす複雑味もあわせ持つ。作家・吉村喜彦氏に、グレンモーレンジィでつくるオレンジピールを使った新しいスタイルのハイボールを試してもらった。
ウイスキーはじつに不思議な飲みものだ。
大麦という穀物から生まれる液体なのに、上質なウイスキーからは、フルーツの香りが漂ってくる。
グレンモーレンジィ オリジナルはその典型だ。柑橘系の爽やかな香りが立ってくる。
グレンモーレンジィの「グレン」とは、ウイスキー発祥地の言葉であるゲール語で「谷間」のことをさし、「モーレンジィ」とは「大いなる静けさ」を意味するそうだ。
ウイスキーは静謐(せいひつ)な酒だと思うが、ことにグレンモーレンジィは、慎ましやかな知性を備えている。
名は体をあらわしているのだ。
また、その艶のある女性的なボトルシェイプ、ラベルの色は、やわらかで上品な味わいをあますことなく伝えている。
そう。体は味をあらわしているのだ。
グレンモーレンジィの特徴は、華やかで、繊細な香り。
ハイランド生まれのシングルモルトなのに、口に含むと、南イタリアの海辺や、たわわに実るオレンジやレモンが目の前に浮かんでくる。これもまた不思議である。
本場スコットランドで最も飲まれているシングルモルトだそうだが、きっとスコットランド人も、本音では、陰鬱な天候より明るい陽光が好きなのだろう。
グレンモーレンジィは、シングルモルトにありがちな強烈な自己主張をしない。むしろ十数年熟成したブレンディッド・ウイスキーのようなエレガンスを控えめに伝えてくる。
この品の良さには理由がある。
白鳥の首の形をしたポットスチル(蒸留器)──そのネックの部分が長いのだ。
スコットランドで一番背の高い蒸留器を使うことで、軽やかで、きれいな原酒がしたたり落ちることになる。
雑味の少ない原酒が熟成され、品性と知性を獲得していく。
栴檀(せんだん)は双葉より芳し、なのである。
おいしいウイスキーであるためには、「生まれ」のみならず、「育ち」も大切だが、グレンモーレンジィは樽熟成に特別なこだわりをもっている。
アメリカ・ミズーリ州のホワイトオークで樽をつくり、2日間天日で乾燥させ、バーボンなどを熟成させた後に、ようやくグレンモーレンジィの樽として使うことができる。
しかも、樽は2回までしか使わない。
樽材の成分を最大限まで引き出し、まろやかな味わいを追求するのだ。
もうひとつ、おいしさの秘密は、水だ。
スコッチの多くは仕込み水が軟水だが、グレンモーレンジィは硬水。ミネラル分の多い水を使うことで、活発な発酵が行われ、独特の絹のような滑らかなボディーが生まれるのだ。
さて。グレンモーレンジィ オリジナルの柑橘系の香りをもっとも引き出す飲み方は、ハイボールだと思う。
しかも、ふつうのハイボールではない。
氷の入ったグラスにウイスキーを注いだ後、ソーダを加え、オレンジピールをグラスの内側と外側でキュッと絞る。
柑橘の霧を漂わせ、そのピールをグラスに浮かべて飲むのである。
ウイスキーとソーダの比率は1:3。
これは、圧倒的に美味い。ウイスキービギナーから通まで納得の味わいだ。
名づけて、グレンモーレンジィ オレンジハイボール。
このハイボールを飲むと、「ジョッキで飲むあのハイボールって、いったい何だったの?」と思うだろう。
上品で繊細、複雑でありながら滑らかな味わい、深みのある香り。
硬水から造られるシングルモルト=ホネのあるウイスキーでありながら、そのホネをまったく感じさせない懐の深さ。大人であるがゆえの軽み。
グレンモーレンジィを知ると、もう後には戻れない。
ほんとに困ったものだ。
グレンモーレンジィ オレンジハイボールを飲めるチャンス!
『Unnecessarily well made(完璧すぎる)』と評される至高のウイスキーを体験してみませんか? ビギナーからエキスパートまで多くのファンを魅了するシングルモルトウイスキー「グレンモーレンジィ」の人気銘柄6種を試飲できるイベント「GLENMORANGIE HOUSE(グレンモーレンジィ ハウス)」を六本木ヒルズで開催します。上質な空間でジャズを聴きながら、華麗なグレンモーレンジィの世界観を味わえます。
日時:2018年11月16日(金)~ 17日(土)
14時~22時 (LO 21時)
会場:六本木ヒルズアリーナ(東京都港区六本木6‐10‐1)
▼公式サイトはこちら→https://www.mhdkk.com/brands/glenmorangie/gmhouse
問い合わせ情報
MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社 モエ ヘネシー マーケティング部
TEL:03‐5217‐9731
グレンモーレンジィ社が展開するウイスキーブランド「アードベッグ」についてはこちら
text:Nobuhiko Yoshimura
photograph:Katsuyoshi Motono, MHD
location:TENZO