茶聖と称される千利休が16世紀後半に生み出した茶室の傑作「妙喜庵(待庵)」。日本のミニマリズムの神髄ともいわれる二畳の空間に強くインスパイアされたデザインの空間は、躙り口などの伝統的な茶室のディテールはそのままに、21世紀の機能をプラスして居心地の良さと快適性を兼ね備えている。
客室タイプは全部で5種類。部屋の種類によってベッドサイズ(シングルまたはセミダブル)、面積、デザインが異なる。客室5種類のうち3種類は茶室カプセル、残りの2種類はより広々とした、コンクリートと木の素材をフル活用したデザイン性の高いコーナールームとなっている。室内には金庫キャビネット、電源、フリーWi-Fiなどが準備され、しっかりと厚みを持ったベッドが深い休息を約束してくれる。また天井の高さを通常より高い2.2mまで上げているので、より居心地の良い空間に仕上げられている。
「hotel zen tokyo」は人形町駅から徒歩30秒、水天宮前駅から徒歩5分、羽田空港も成田空港にもアクセスしやすいロケーションで、旅の起点にするホテルとしては絶好の場所にある。5フロアある客室のうち1、2フロアは女性専用フロア。館内には広々とした共用スペースがあり、ワークラウンジやコインランドリー、飲食可能なバーラウンジなど、目的に応じて施設を利用できる。バーラウンジは、朝はゲスト用の朝食スペース、昼は和カフェ、夜は和のエンターテインメントが楽しめる音楽バーと、時間帯によって異なる雰囲気を楽しむことができる。
かつて茶人たちが理想の茶室空間とした「市中の山居」を目指したミニマルな禅空間で、出張や旅の疲れを癒してみてはいかがだろうか。
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ハーバード大学出身の建築家が、日本の極小空間にインスパイアされ、その中でも最も先駆的と感じた500年前の「茶室」をアレンジしてつくった「泊まれる茶室」。宿泊を通じた「禅」の文化の体験は、海外からの観光客だけでなく、現代の私たちにとっても貴重な体験になりそうだ。
text:Rina Araki