人に教えたくない店～高岡本州さん

お店はよく知っているところに行きますね。そのほうが落ち着けるし、気心も知れています。だからレパートリーはそんなに広くないんです。

「柿安」は、父が肉好きでしたから、子供の頃から三重県桑名市にある本店や名古屋の店に伺っていました。ここに来るときは、比較的年齢が高い方と一緒なので、しゃぶしゃぶを頼むことが多いですね。この店の松阪牛は脂がしつこくなくて、本当に素晴らしいんです。ただ、ずっとしゃぶしゃぶを食べていると、たまにはすき焼が食べたくなる（笑）。1枚目の肉は卵で、2枚目は大根おろしで食べるのが気に入っています。

銀座の真ん中で個室があって、落ち着いた雰囲気で肉料理を食べさせてくれるところはなかなかありません。近くにある柿安の「銀座別邸」も立派な造りです。業態は違いますが、柿安の赤塚保正社長の伝統の中に常に新しい風を吹き込む姿勢に刺激を受けています。

私が、最高の睡眠の品質を求めて「エアウィーヴ」という寝具の会社を設立、販売を開始したのは2007年のこと。おかげさまで浅田真央さんなど著名なアスリートをはじめ、国内外の一流ホテルや旅館、学校などでも導入していただいています。

会社が成長していく過程では、各分野のいろいろな方と食事をしながらお話を伺う機会があります。その際に、いきなり仕事の話から入るよりも、食事を楽しみながら話を始めたほうがうまくいく。松阪牛は誰にとっても最高のブランドですから、皆さんに喜んでいただけるんです。

よく「一杯飲みながら話をしましょう」と言いますが、私は食事をしながら話をするほうを選びます。父がよく言っていたんですが、食という字を分解すると「人」と「良」になる。食は人を良くすることだから、いろんな人と飯を食えと。一方、飲むのは人を良くすることを「欠」くんだと。だから飲むばっかりの関係は良くないとも言っていました。確かに食事を共にすると、人となりがよくわかる気がします。

「赤坂しょう山」は、以前は六本木にあった「和山」という店が開いた料亭で、女将は京都の方です。木造3階建ての古い一軒家を改装して、各部屋すべて設えが違います。料理にもひと工夫あって、旬の食材を好みの調理法で頼むといった楽しみ方もできるし、個室もとても使い勝手がいいんです。

人間にとって大事な食事と睡眠を、これからもずっと大切にしていきたいですね。