よりスポーティさを強くした新型3シリーズ
BMW(ビー・エム・ダブリュー)3シリーズは、セダンとステーションワゴンともに、日本でも輸入車のベストセラーだ。メルセデス・ベンツCクラスと、アウディA4と市場での覇権を競ってきた。
そこにあって、「BMWブランド特有のキャラクターを極めて濃厚に体現」(BMWのリリースより)している新型3シリーズは、肝煎りのモデルチェンジとなった。
最大の特徴は、よりスポーティさを強くしたところ、とメーカーでは説明している。それによって、BMWでなければ実現できないキャラクターを作りだそうとしているのだ。
ボディ剛性を上げ、前後のトレッドを拡大し、サスペンションシステムを大きく見直し、さらに強力なエンジンラインナップを用意した。そこが2018年10月に発表され、つづく11月にポルトガルでの試乗会に供された新型における特筆点である。
私が乗ったのは、2リッターガソリンエンジンの「330i M Sport」と、2リッターディーゼルエンジンの「320d」である。M Sportはご存知のひとも多いだろうが、専用のサスペンションや専用の内外装を持つスポーツ仕様だ。後者も試乗にはスポーツラインというモデルが用意されていた。
実際に走りという点からいうと、現行モデルから大きなジャンプがある。330i M Sportは、現行のM Sportよりはるかにスポーティな仕上がりである。
330iの190kW(258ps)のエンジンは現行モデルに搭載されていないパワフルな2リッター4気筒だ。加えて、足回りは現行モデルよりぐっと固められ、かつ、ステアリングはよりダイレクトになった印象だ。
「サスペンションマウント部の剛性を高めたためMスポーツサスペンションやアダプティブMサスペンションの特徴がはっきり」したとBMWが述べている。ベースになった標準モデルでも硬めになったという足回りが、よりしっかりと締め上げられている。それが乗ってすぐ感じられる特徴だ。
エンジンじたいはトルクがたっぷりあって、気持ちいいフィールを持つ。BMWは直列6気筒、という印象がいまも強いけれど、この4気筒でも充分に満足いく性能ぶりである。どんな速度域でもすばらしい加速感を味わわせてくれるのだ。
330i M Sportはサーキットでも通用しそうなしっかりしたサスペンション設定で、たとえば山岳路を走りまわるのが好きなひとには、とりわけ喜ばれるかもしれない。
日本で人気の高いディーゼルの320dは、やはりエンジンの好印象が記憶に残る。2ステージといって、低回転用と高回転用に2基のターボチャージャーを備えている。発進時といい、中間加速時といい、太いトルクを感じさせてくれ気持ちがいい。
新型3シリーズは全長とともにホイールベースが伸ばされ、室内が広くなった。前席は、センタートンネルが低く広々感がある。同時に、今回はTFT液晶のタッチスクリーンによるインフォテイメントのコントロールが採用されたのが新しい。
指でさまざまな操作が出来ることに加え、BMWにあって、新型3シリーズで初めて「BMWインテリジェントパーソナルアシスト」という音声認識のアプリケーションが搭載された。これも大きなニュースだ。
英語なら「ヘイ、ビーエムダブリュー」と呼びかけると、車載のAIが反応する。アップル製品に慣れているひとならSiriを思い浮かべてもらえればよい。たとえば「(ファロから)リスボンに行きたいんだけど」と言うとルートを表示してくれ、さらに「所要時間は?」「現地の天気は?」という問いかけにも答えてくれる。
「ビー・エム・ダブリュー」の代わりに好きな名前をつけることも出来る。それでクルマがパーソナルアシスタントのように使えるというのが、BMWの開発担当者のねらいだそうだ。
新型3シリーズは、従来からセリングポイントにしてきたスポーティなキャラクターをさらに強化し、同時に、ライバルよりひと足先に新しいテクノロジーを搭載した。それによってマーケットでの存在感を強烈にアピールする。なにはともあれ、それに成功していると思う。
小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。