欧米では貴族や有力者が集う場所としていつの時代にも存在した社交場。日本にも時代を超えて各界のトップに愛されてきた特別な場所がある。東京會舘だ。伝統はそのままに、さらなる顧客の満足を求めてリニューアルした新生東京會舘を紹介しよう。
向かいにある皇居と調和する格式ある建築様式。東京駅・日比谷駅・有楽町駅・二重橋前駅の地下コンコースへ直結し、利便性も抜群である
東京會舘 本舘(東京都千代田区)が約4年の歳月をかけての大規模な建て替えを行い、ワールドクラスの設備とホスピタリティを伴って、今年1月8日(火)にリニューアルオープンした。
初代本舘が誕生したのは1922年(大正11年)。西洋文化が広がりつつあった大正期に、「世界に誇れる社交場」を目指して丸の内に開場した。煌びやかで優雅な趣から「大正の鹿鳴館」と表現されることもあったが、限られた上流階級の社交場であった鹿鳴館とは違い、東京會舘は「誰もが利用できる、大勢の人々が集う社交の場」として人々に愛された。
初代本舘の大宴会場「ローズルーム」。東洋一と謳われた見事な大シャンデリアが3基設置されていた
東京會舘は、激動の時代を日本と共に歩むことになる。まず翌年の1923年(大正12年)、関東大震災により甚大な被害を受けた。太平洋戦争中は、大政翼賛会に接収され「大東亜会館」に改称。終戦後はGHQに接収され「アメリカン・クラブ・オブ・トーキョー」として営業した。
大震災で崩れた東京會舘正面玄関
アメリカン・クラブ・オブ・トーキョー時代の外観
東京會舘として本来の姿を取り戻したのは1946年(昭和21年)。それからは、国賓や著名人を始め、多くの人々の「社交の殿堂」として名を馳せてきた。1971年の改築を経て、近年では芥川賞・直木賞受賞式の場としてのイメージを持つ人も多いだろう。
今回のリニューアルのコンセプトである「NEWCLASSICS.」には、そうした歴史や伝統を重んじながら、これからも愛され続けるために変化していくという想いが込められているという。
伝統と変化をどのように共存させたのか、具体的に見ていこう。
レストラン プルニエ
東京會舘を代表するフレンチレストラン「レストラン プルニエ」は、昭和9年に日本初の鮮魚介専門店として誕生した
開場当時から受け継がれてきた「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」5700円(税別)
ローストビーフ&グリル ロッシニ
グリルレストラン「Roast Beef & Grill ROSSINI」。音楽家であり美食家のジョアキーノ・アントーニオ・ロッシーニが店名の由来。随所に、オペラ劇場や音楽的なモチーフが散りばめられている
東京會舘のスペシャリテの中でもファンが多い「ローストビーフ グレービーソース」3300円~(税別)
ロッシニテラス
ダイニング、ラウンジ、バーの3つの機能を持つ、オールデイダイニング「ROSSINI TERRACE」
ローストビーフをサンドウィッチやサラダなどでカジュアルに堪能できる。サンドウィッチ各種1600円~(税別)
TOKYO KAIKAN 會
和とフレンチを融合させた、鉄板焼き「TOKYO KAIKAN 會」
1から手作りする東京會舘ならではのソースと、素材の旨味を最大限に引き出した鉄板焼きを楽しめる。ランチ/5000円~(税別)ディナー/1万3000円~(税別)
日本料理 八千代
囲炉裏を中心に広がる和の空間、「日本料理 八千代」
江戸の粋が詰まった「二重橋膳」7600円(税別)
メインバー
旧本館の古き良き時代を感じさせる大人の隠れ家、オーセンティックバー「MAIN BAR」
歴史と共に受け継がれてきたミルク入りカクテル「會舘風 Gin Fizz」。マッカーサーも愛飲したそうだ
東京會舘ユニオンクラブ
メンバーシップクラブ「TOKYO KAIKAN UNION CLUB」。各界のトップクラスが集う会員制クラブとしての伝統を持つ
伝統を踏襲しつつも新しさを追求し、新たな姿に生まれ変わった東京會舘は、これからもまた、時代を紡ぎながら歴史を刻んでいくのだろう。
editor's comment
新生東京會舘が掲げる「NEWCLASSICS.」はまさに東京という街を表したかのようなコンセプトだ。古きと新しきが交わることで多面性を生み、人々を惹きつける。懐かしさを思わせることもあれば、移ろいの早さも感じさせる。「東京」という地名を冠する東京會舘はこの街の面白さや奥深さを象徴する場所となりそうだ。
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