睡眠に悩む人が体感で2~3倍に
仕事で思い通りにいかないとすぐにイライラしてしまう、部下や家族に強く当たることが増えた、集中力が続かない、注意力が散漫でミスが増えた……。これらに思い当たる節がある人は睡眠を見直してみるといいかもしれない。良いビジネスは良い健康管理から、そしてその健康管理を大きく左右するのが睡眠である。
昨年来、その睡眠に悩む人が増えているという。きっかけはもちろん新型コロナウイルスの感染拡大だ。寝具販売の大手、西川の主要店舗には、「ねむりの相談所」というコーナーが設置されており、眠りや寝具に関する知識を持つスリープマスターが、睡眠に関する相談に乗っている。日本橋 西川に勤務するスリープマスター、大塚新さんはその変化をこう話す。
「コロナ禍になる前と比べると、相談に訪れる人が2~3倍に増えたような印象です。話を伺うと、ビジネスパーソンですと在宅勤務で通勤しなくなった、主婦の方でも買い物に出なくなったというように、生活リズムの変化が原因になっていることが多いようです。巣ごもり需要といいますか、これを機に寝具を見直す人も多く見られました」
このねむりの相談所では、コンサルティングシートを始め、日中の活動量や睡眠状況などを記録する活動量計や、寝室環境をチェックするシステムなどを導入して、その人の睡眠を可視化し、改善に向けたアドバイスを行っている。コロナ禍になってからは、通勤しなくていいため起床時間が遅くなった、活動量が減って寝付きが悪くなったというように、働き方の変化によって睡眠に悩み始めた人が多いという。
仕事は就寝1時間前までに終える
では、この新しい日常の中でぐっすりと快眠を得るにはどうすればよいのか。西川で広報を務めるスリープマスター、森優奈さんにポイントを聞いた。
「まず、仕事は眠る1時間前までに終えることです。在宅勤務ですと夜遅くまで仕事を続けてしまう人がいますが、脳が休まらないのでお薦めできません。PCはもちろん、スマホ、テレビなどの明るい光を見ると交感神経が昂ぶり、眠りの質の低下を招くため避けたほうがいいでしょう」
会社で仕事をする場合は、仕事を終えてから帰宅するまでの時間でオンからオフへと切り替えることができるが、在宅勤務の場合はそれがない。そのため、切り替える時間を意識的につくったほうがいいそうだ。
寝るための手順=ルーティンをつくる
続いては、就寝前の過ごし方。「夕食や飲酒は、寝る前までに胃腸の活動が終わるように、就寝の2~3時間前までに済ませてください。それよりも遅くなってしまう場合は、消化の良いものを少量に留めて。また、入浴は就寝1時間前までに、シャワーではなく湯船に浸かるのがベスト。季節によりますが湯の温度は38~40℃、時間は15~20分が良いでしょう。湯船で温まった体が1時間後くらいに冷めてきて、スムーズな入眠へとつながります」。
入浴を済ませたら、アロマやハーブティーでリラックスすることや、ストレッチで体を落ち着かせることも効果的だそうだ。食事から入浴、そして心身のクールダウンというように、睡眠へのルーティンをつくれると、脳と体が順応してスムーズな入眠につながることが多いという。
また、布団に入ったもののなかなか寝付けないという場合は、一度布団から出てハーブティーやストレッチでリラックスするのがお薦め。布団はあくまでも寝る場所と意識付けることが大切だそうだ。
夜の快眠は朝の準備から始まる
夜だけでなく、朝の過ごし方も快眠のポイントになるという。
「まず、朝は起床したらすぐに光を浴びてください。日光が望ましいですが、夜勤の方など時間帯によって難しい場合は電気の光でも大丈夫です。光を浴びた約15時間後に、メラトニンという睡眠ホルモンが分泌され、眠りへと導きます。それから、起床時間を一定に保つことも重要です。在宅勤務ですと起きる時間が遅くなったり、休みの日にはゆっくり寝ていたくなったりしますが、起床時間のズレは最大で2時間に収めたほうがいいでしょう」。
夜の睡眠と直接は関係ないが、午後の仕事の効率アップには昼寝も効果的だという。昼寝をするタイミングは12~15時の間、時間は15~20分が推奨。深い睡眠にならないよう、椅子に座ったまま机に突っ伏す、ソファに寄りかかるなど、完全に横たわらない姿勢で行う。昼寝の後はストレッチなどで軽く体を動かすといい。
新しい日常における快眠のポイント、それはいかに時間を管理して、いい準備をするかが要点になりそうだ。そうとらえれば日々の仕事とやることはそう変わらない。睡眠に悩んでいる人は、仕事のタスクを一つひとつこなすように、快眠という目標達成に向けて実践してみてほしい。
西川
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text:d・e・w
photograph:Hisai Kobayashi