入浴とパフォーマンスの深い関係

今年1月、日用品メーカーのバスクリンと順天堂大学スポーツ健康科学部による共同研究の結果が発表された。タイトルは、『高強度運動の合間の「メントール配合炭酸ガス入浴剤」入浴がパフォーマンスを向上させる』。結論からいうと、高強度の運動により低下したパフォーマンスが、入浴剤入浴を行うことで、その後の運動のパフォーマンスを上げる可能性があるというものだ。

具体的な調査方法は次のとおり。20~50歳の男性7名が体重の7.5%の負荷で30秒間、ペダリングを全力で行った後、30分の休息をはさんで再度、同様のペダリングを実施する。30分の休息時に、1.入浴を行わない、2.さら湯(通常のお湯)での入浴、3.入浴剤入浴(メントール配合炭酸ガス入浴剤を用いた40℃10分間の入浴)という3つのパターンを設定し、それぞれ1回目と2回目のペダリング時の平均パワーと最大パワーを測定するというものだ。

1回目の数値を100%として2回目を計測した結果、上記1~3の順で、平均パワーは98.6%、102.3%、103.8%となり、最大パワーは92.9%、98.3%、99.8%という結果に。平均パワー、最大パワーともに、3.入浴剤入浴が最も優れた数値になったという。「入浴や入浴剤は疲れにいいのだろう」というぼんやりとしたイメージが、一種の数値として実証されたというわけだ。

大事なのは食事から睡眠までのルーティン

そもそも、入浴が疲労回復につながるというのはどういう仕組みだろうか。バスクリンで20年以上にわたり入浴効果の研究を行うフェローで、前述の共同研究にも携わった石澤太市さんはこのように説明する。

石澤太市さん
バスクリンのつくば研究所で、フェローとして入浴効果の研究にあたる石澤太市さん

「一番大きいのは体温が上がることです。シャワーではそれほど体温が上がらないのですが、入浴すると程よく体温が上がって血流が良くなり、それが疲労回復につながります。そのほか、入浴によってリラックスできることや、睡眠の質が良くなるという研究結果もあります。また、現在は在宅勤務の人も多いと思います。オンとオフの切り替えや、生活のリズムを整えるという点でも入浴が効果的だと考えています」

さらに、日々の入浴の基本を聞くと、大切なのは「ルーティン」だと話す。

「夜に行う行為を一連の流れで考えるといいと思います。まず夕食を取り、次に入浴、最後に就寝という流れです。夕食後すぐに入浴すると消化に影響するので、30分ほどおいてください。入浴前はお酒を控えて、飲むなら入浴後に。入浴のポイントとしては、リラックスしたい場合は『ぬるめに長く』が基本です。夏場なら39~40℃、冬場なら40~41℃に10~15分がいいと思いますが、年齢や体質などの個人差があるので調整してみてください。入浴で体温をしっかり上げたあと、1~1.5時間をかけて体温を下げていき、寝床につくのが理想です。人間は体温が下がると眠くなるので、そのメカニズムにのっとるとスムーズに入眠できると思います」

石澤太市さん
全国の温泉にも足を運ぶ石澤さん。「印象的だった」のは秋田の玉川温泉だという

風呂から上がったあと、今の季節であればベランダで夜風に当たる人もいるだろうが、急激に体を冷やすのは避けたほうがいいという。水分補給を行い、細胞の修復のために15分ほどは保温しながら安静にするのがおすすめだ。

また、ランニングやトレーニング後に入浴する場合も、直後ではなく多少時間をおいたほうがいいという。アスリートの中には「熱い風呂と水風呂を交互に入る」という人もいるが、一般人には体への負荷が大きすぎるためおすすめできない。水のシャワーを足にかけ、表面を冷やす程度にとどめたほうがいいそうだ。

リカバリーのカギは炭酸ガスとメントール

そして現時点で石澤さんが考える、最も疲労回復が見込める「リカバリー入浴」が、冒頭の共同研究で成果を得た入浴法だという。

「さら湯の入浴でももちろん違いが出ますが、これまでの研究で、炭酸ガスが血行促進に優れるものであることがわかっています。温泉の泉質の一つに炭酸泉がありますが、炭酸ガス系の入浴剤も同じことです。そして、炭酸ガスの濃度が高ければ高いほど血行が促進されることもわかっています。また、メントールは気分を爽快にさせ、血行促進とリフレッシュ感により疲労回復が期待できると思います」

日々遅くまで仕事に励み、時間に追われるビジネスパーソンであれば、入浴を「こなすもの」と考え「タスク」ととらえてきた人も多いのではないだろうか。体の汚れを落とす行為から、今日の疲れを取り除く行為へとマインドをチェンジすれば、価値観がまるで変わってくる。仕事の成否のほとんどが準備段階で決まるのであれば、明日のパフォーマンスのほぼすべては前夜に決まる。より充実した入浴習慣がいい仕事へとつながることだろう。

プロがすすめる炭酸ガス入浴剤

商品画像
高濃度の炭酸ガスを発生する「きき湯ファインヒート」。活動前におすすめの「アクティブスイッチ」(左)と就寝前向けの「リセットナイト」
商品画像
タブレット状なので湯量に合わせて調整できる
問い合わせ情報

問い合わせ情報

バスクリン お客様相談室 
TEL:0120‐39‐8496


text:d・e・w
photograph:Yuki Kurihara