オンライン会議で「ヤバい…」と感じる男性が増加
2020年度の国内化粧品市場規模は、前年度比およそ15%減と大きく落ち込んだ。コロナ禍による外出機会の減少、インバウンド需要の消失が主な理由だ。そのような苦境の中で前年度から伸長したのが男性用化粧品である。
「男性用化粧品全体は104%の伸びで、肌感覚としてはそのうち90%が基礎化粧品、残り10%がメイク用品という印象です。以前は、管理職や要職に就かれる方、人前に出られる方などがメインでしたが、コロナ禍になってからは、一般の方でも特にスキンケアに興味を持たれる方が増えています。話を伺ってみると、きっかけの多くはオンライン会議。モニターで自分の顔と向き合ってスキンケアの必要性を感じた方が多いようです」
そう分析するのは、男性用コスメをトータルに提案するブランド「FIVEISM × THREE」(ファイブイズム バイ スリー)のオフィシャルメイクアップアーティストを務めるHIROKIさん。スキンケアやメイクは女性のものと思われがちだが、じつは男性でも親しみやすいものだと説く。イメージは「靴磨き」だ。
「革靴を履いたら手入れをしますよね。靴をクリーニングして、クリームを塗って、最後に防水スプレーというように。肌を体のパーツと捉えれば、これと同じことなんです。スキンケアの基本は、まずは汚れを落とす洗顔、次に肌の水分を補う化粧水、最後に水分蒸発を防ぐ乳液、この三つです。肌の性質は個人差があるので自分の肌に何が合うかを知ることが大切ですが、この三つが基本になります」
化粧水や乳液を塗る際、力を入れてこすったり肌を叩くように塗る人がいるが、それらは間違い。やさしく肌に乗せるように塗るのが基本だ。また、男性の中には肌がベタつくのを嫌って乳液を塗らない人も多いというが、それでは化粧水の水分が長持ちしない。乳液でしっかり油分もプラスすることが保湿のカギになる。
乾燥する季節やシェービング後にはここに注意
スキンケアを行うタイミングとしては、毎朝夜の2度が基本という。だが、特に秋から冬にかけての乾燥する季節は注意が必要になる。
「男性は皮脂が多めなので、肌の表面は乾燥していないように見えることもあります。ですが、インナードライといって、肌の内部は確実に乾燥しています。乾燥する季節に特に大切なのが三つ目の乳液。普段より量を増やしたり、塗る頻度を増やすのもいいですね。それでも肌の調子が良くない場合は、美容液やクリームを使うといいでしょう」
また、日々のシェービングの後もスキンケアが欠かせないタイミングだという。
「シェービング後は肌が敏感になり、傷つきやすくなっている状態です。電動タイプもT字のひげそりも性能が良くなって肌にやさしい製品が増えましたが、それでもケアは欠かせません。一番良くないのはそったままにしておくこと。ひげそりの前にはシェービング用のクリームやローションを使って、終わったら必ずスキンケアを。シェービングとスキンケアが同時にできる製品もあるので、旅行や出張の際はそういった製品を活用するのも手です」
スキンケアの要諦は、肌の表面だけではなく肌の内部の水分をどれだけ維持できるかということになる。そしてその成果は短時日のうちに出るものではない。HIROKIさんも次のように話す。「スキンケアを行っているかどうかで、5年先、10年先に違いが出ます。先ほど靴磨きをたとえに出しましたが、肌が靴と違うのは買い換えられないということです」。
かつて「ファッションにかまけている男に仕事ができるか」と言われた時代があったが、いまやTPOに応じた装いはビジネスパーソンのマスト。同じように男のスキンケアに対する意識も変わりつつあり、若い世代ほど関心が高いという。管理職や上司として部下から信頼を得るためのマスト、とは今はまだ言いすぎかもしれないが、来たるべきそんな時代に向けて、今から始めても早すぎることは決してない。
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photograph:Yuki Kurihara