求めたのは心の豊かさ、コンセプトはマインドフルネス
世界最大のホテルチェーンであるマリオット・インターナショナルが運営するホテル・ブランドは30を数え、世界の総ホテル数は実に8000を超える。その巨大なヒエラルキーの中でもラグジュアリーなブランドの一つとして位置づけられるのが「JWマリオット」である。ネーミングがジョン・ウィラード・マリオットという創業者のイニシャルに由来することが、上級ブランドであることの一つの証しである。
そのJWマリオットが2020年に日本初上陸を果たした。同年7月に奈良にオープンしたのが「JWマリオット・ホテル奈良」である。新型コロナ禍に見舞われながら同ホテルの開業を牽引し、それから現在まで経営の指揮を取るのが総支配人のクリストファー・クラーク氏。同じくマリオット・インターナショナルに属するザ・リッツ・カールトン・ホテル&リゾートで20年以上のキャリアを持つ、ラグジュアリーをよく知る人物である。
「ラグジュアリーというのは物質的な豊かさ、例えば高級車やジュエリーなど目に見えるものに関連しますが、それだけではありません。精神的な豊かさもラグジュアリーの一部の要素だと捉えています。そうした視点から、JWマリオット・ホテル奈良がコンセプトとしたのは“マインドフルネス”です。特に現代社会では、どこにいても、誰といても、テクノロジーに支配されているような部分があります。われわれのホテルに来ていただいたらそういうことは一旦忘れて、今この時を存分に楽しんでいただきたい。そんな思いから生まれたコンセプトです」
マインドフルネス――ただ目の前のことを大切にして集中する状態――というメンタル面の豊かさをコンセプトとする点が、従来のラグジュアリーホテルと一線を画す部分であり、JWマリオット・ホテル奈良の“らしさ”である。その一端は、香りへの気遣いに見て取れる。チェックインの際にはアロマオイルが手首などに供され、ジンジャーやラベンダーから成る香りに包まれる。あるいはゲストルームのベッドにはピローミストが用意され、一日の終わりに心地よい入眠へと誘う。嗅覚から心身がリラックスできるような香りの演出がなされているのである。
「アロマを感じながらチェックインしていただくマインドフル・チェックインはお客様から好評を頂き、JWマリオットの他のホテルにも広まりつつあります。また、JWマリオット・ブランドのホテルでは毎朝ヨガを開催していて、ブランドとしては最低15分をご提供することになっています。ただ、私どもはマインドフルネスにフォーカスしていることから15分では足りないと判断し、1時間に延長しています。ご宿泊者でしたらどなたでも、無料で1時間のヨガにご参加いただけます」
MICE利用や出張を伴うワーケーションにも
さて、このJWマリオット・ホテル奈良はビジネスユースの面でもユニークな特徴を持つ。まずは奈良県のコンベンションセンターに隣接していることだ。最大2000人収容の大会議室をはじめ、中小の会議室や多目的ホールを備えた、奈良県最大のコンベンションセンターである。
「私の知る限りでは、コンベンションセンターに隣接したラグジュアリーホテルというのは、日本では私ども以外にありません。これまでいろんなホテルで仕事をしてきた中で、大規模なミーティングスペースがないことが問題になることが多かったのですが、このホテルにはその問題はありません。コンベンションセンターとホテルは専用通路で繋がっているので、私どものサービスをコンベンションセンターにご提供することもできます。これまでに世界的な自動車メーカーの試乗会などでご利用いただいています」
また、数百室もの部屋を有する大規模なホテルではないことから、こんなニーズもあるという。
「私どもは全158室のブティックホテルです。それほど大きなホテルではないことが逆に利点で、よりパーソナライズされたサービスをご提供できるのが強みだと思っています。これまでのケースですと、国内外のエグゼクティブが集まるミーティングや企業のコーポレートリトリートといったご利用があります。近隣に依水園という日本庭園がありまして、そちらとの提携による特別な体験もご提供しています」
最後に、ホテル内のファシリティーの充実ぶりも特筆に値する。24時間営業、サウナルーム付きのフィットネスセンターをはじめ、ジェットバスが備わる室内温水プール(8:00~20:00)、男性向けメニューも用意されたスパ(10:00~20:00、要予約)などの施設が揃い、滞在先でも体のコンディションを管理したいという現代のビジネスパーソンのニーズに応える。
実際にJWマリオット・ホテル奈良に滞在してみると、ホテル内では香りの演出に心が安らぎ、またホテルを一歩出ると奈良のおおらかさを実感する。大阪や京都に比べると人も交通量も多くなく、時間の流れが穏やかだ。ホテルの近隣には東大寺や春日大社、唐招提寺などの見どころも多い。少し足を延ばせば、薬師寺での写経体験や日本最古の神社とされ近年はパワースポットとしても人気の大神(おおみわ)神社でのご祈祷(共に要予約)といった特別な体験もできる。
近年注目のMICEを奈良で開催するのもいい。日本に来慣れた海外の要人も、日本で最初に都が置かれた地と聞けば必ずや興味を持つだろう。あるいは関西への出張後に訪れて自身の教養を深めたり、心身を整えて次のビジネスの英気とするのも手だ。何より大阪や京都から1時間程度で訪れられるのだから。働き方が多様になった今、仕事一辺倒ではないこんなビジネストリップがあってもいい。
JWマリオット・ホテル奈良
奈良市街を東西に貫く大宮通り沿いに位置し、南には奈良県コンベンションセンター、北には奈良市役所があるビジネスに有用なロケーションに立つ。館内の日本料理「校倉」では、鉄板焼き、寿司、会席の3つの料理を提供し、会食や接待のニーズにも対応する。サービスのクオリティーも定評があり、フォーブス・トラベルガイド2023ではJWマリオット・ブランドとして世界で初めて4つ星を取得した。
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