空港にいながらメンズ館さながらの買い物ができる

イセタン羽田ストアは羽田空港内に3店舗あり、主にJAL便が発着する第1ターミナルにメンズとレディスのストアが、主にANA便が発着する第2ターミナルにメンズのストアがある。今回は、そのうち第1ターミナルのメンズのストアに、出張アイテムの傾向や今年ヒットしたアイテムを聞きに訪れた。

「商品のラインアップは、主に伊勢丹新宿店 メンズ館のベストセラーアイテムと、イセタン羽田ストア専属のバイヤーのセレクトで構成されています。旅行に必要なものだけでなく、ドレス、カジュアル共に全身のワードローブがそろうほか、小物も豊富に用意しています」

佐野正史さん
佐野正史さん。三越伊勢丹の外商統括部個人外商グループ、スペシャリティストア営業部に所属。2000年入社。08年から伊勢丹新宿店 メンズ館催事担当マネージャー、10年からJR大阪三越伊勢丹開業準備室紳士担当マネージャー、カジュアル・スポーツ・紳士雑貨領域を担当。14年からJR京都伊勢丹ビジネスウエアセールスマネージャーを経て、18年より現職。イセタン羽田ストア3店舗の運営を取り仕切る

そう話すのは、イセタン羽田ストアの3店舗のマネージャーを務める佐野正史さん。その言葉通り、店内にはキャリーケースやインナーウエア、サングラスといった旅に関するアイテムの他、スーツやジャケット、革靴、筆記具など、日常的に使用するものまで幅広くそろう。この店舗だけでオン・オフのコーディネートが完成するほどのラインアップだ。空港の中とは思えないラウンジのような心地よい空間が広がるこの店舗、位置づけは“富裕層向けのサードプレイス”だという。

「オープン当初は旅行者が必要なものを提供する、“旅の駆け込み寺”のような店舗をイメージしていたのですが、いざ蓋を開けてみると、羽田空港を利用するたびに訪れてくださる全国の富裕層が多かったのです。仕事で東京に来ても、新宿のメンズ館まで行く時間がない、いくつものショップを見て回る時間がないという方に重宝いただいています。私どもからすれば、この店舗を通して東京在住のお客様以外にもメンズ館のラインアップをご提案できる。伊勢丹と日本各地をつなぐ重要な役割を担っています」

店内
イセタン羽田ストア(メンズ) ターミナル1は第1ターミナルに発着する人のみが利用可能。2023年10月にはポップアップイベントを行う「ザ・ステージ」が店舗内に完成した

日本各地から東京を訪れた旅行者は、羽田空港を一歩出れば行き先はまちまち、てんでばらばらに散らばってしまう。その彼らが必ずといっていいほど通過するほとんど唯一のスポットが羽田空港である。東京を訪れた際にワードローブを新調したい、時間がない中でも上質なものを選びたいという、全国の富裕層のニーズに見事に合致したのがイセタン羽田ストアというわけだ。ちなみに利用回数が増え店舗との信頼関係がある客は、一部の商品を除き、伊勢丹新宿店 メンズ館にあるアイテムをイセタン羽田ストアに取り寄せて購入することも可能だという。

イセタン羽田ストア(メンズ) ターミナル1
羽田空港 第1ターミナル2階 ゲートラウンジ(北) 搭乗ゲート15番付近
TEL:03‐5757‐8700(直通)


イセタン羽田ストア(メンズ) ターミナル2
羽田空港 第2ターミナル2階 国内線出発ゲートラウンジ(北) 搭乗ゲート58番付近
TEL:03‐6428‐8800(直通)


営業時間8:00~20:00(2023年12月現在は短縮営業のため~19:00)
*第1ターミナルの店舗は第1ターミナルに発着する便の搭乗券を持つ人だけが、第2ターミナルの店舗は第2ターミナルから出発する便の搭乗券を持つ人のみが利用可能

衣類はリラクシング重視、アイテムは高級志向

さて、そのイセタン羽田ストア(メンズ) ターミナル1で、2023年に人気が高かった出張関連のアイテムを厳選してもらった。まずセレクトしてくれたのは、オーカ・トランク(AUXCA. TRUNK)のセットアップ。オーカ・トランクは、東京・赤坂の老舗テーラーの3代目が2016年に立ち上げたブランドで、着心地の良いデイリーウエアで定評がある。

「クロージングにおいては、引き続き心地良さや快適さへのニーズが高く、“リラクシング”がキーワードになっています。このオーカ・トランクのセットアップはセルロースにカシミヤをブレンドした生地で、軽さ、柔らかさ、肌触りの良さ、そしてシワになりにくい点も好評です。裏地を省いていますが、生地独特のストレッチを生かした仕立てで、生地も裏起毛させているため、試着されると“ぬくい“と感じられる方も。仕事後の食事やオフタイム用に、ブルゾンを一緒に購入される方もいますね」

商品画像
セルロースカシミヤによる着心地の良さが特徴のセットアップ。カラーは写真のブラックの他にダークグレーがそろう。ジャケットはシングルブレストも展開。ジャケット13万2000円、パンツ7万1500円(共に税込)
商品画像
セットアップと一緒に購入する人もいるというジップアップブルゾン。さっと羽織れる軽やかさがありながら上質感も備えているのがうれしい。各10万7800円(税込)

続いてセレクトしてくれたのは、出張に欠かせないキャリーケース。高い機能性とモダンなエレガンスを両立したトゥミのアリーベ(Arrivé)がビジネスパーソンに好評だという。

「クロージングとは異なり、バッグやシューズなどのアイテムに関しては高級感、ラグジュアリー感を求める傾向が強まっています。トゥミの中でもこのアリーベ・コレクションは、つやのあるメタルパーツ、きめ細かいHTLSポリエステル素材など全体に高級感があって、なおかつ使いやすい点が好評です。このサイズは機内持ち込みが可能なので、当店で購入してそのまま持ち帰られる方もいます」

商品画像
トゥミのアリーベ・コレクションから、機内持ち込み可能な「インターナショナル・デュアル・アクセス・4ウィール・キャリーオン」。通常のファスナーでの開閉に加え、フロントからも内部にアクセスできるデュアルエントリーが使いやすい。29万7000円(税込)

やや変わったところで人気なのが、靴磨きサービスだ。この店舗の一角には、火・水曜以外は靴磨き職人が常駐。空港でのちょっとした空き時間に革靴のケアを受けられる。担当するのは、企業訪問の靴磨きなどで豊富なキャリアを持つ浅野卓さんだ。

「カーフやコードバンの革靴は主に3つのメニューがあり、スタンダードは10分、ハイシャインは30分、ウイスキーで磨き上げるモルトドレッシングは60分が目安です。磨いている間はレザーのスリッパをお貸ししますので、店内を見て回られる他に、ラウンジで過ごしていただくことも可能です。革靴好きの方が多いので、靴談義に花が咲いて、気がついたら磨き終わっていたということも多いですね」

浅野さん
浅野さんはこれまでにのべ10万足以上の革靴を磨いてきた熟練職人。火・水曜を除き、店内に常駐している。カーフ、コードバンの革靴の靴磨き料金は、スタンダード1100円、ハイシャイン3300円、モルトドレッシング5500円(全て税込)

そして最後に、店舗スタッフのお薦めアイテムとしてセレクトしてくれたのが、東京・池尻発のフレグランス&ケアブランド、リンク オリジナル メーカーズ(LINC ORIGINAL MAKERS)のアイテムだ。2023年に伊勢丹新宿店 メンズ館でポップアップを開催したところ反響が大きく、イセタン羽田ストア(メンズ) ターミナル1でも取り扱いを開始したそう。

「メンズのコスメ、ケア用品というと、男っぽさや武骨さ、強さを押し出したデザインが多いのですが、このブランドは男女問わずに持てるユニセックスなデザインが特徴です。香りごとにナンバリングがしてあり、特にNo.997の香りがヒットして有名になりました。ハンドクリームやボディクリームの他、ルームミストまでそろうので、出張の滞在先でも好きな香りに包まれて過ごすことができると思います」(佐野さん)

商品画像
人気のNo.997の香りからセレクト。写真左から、ヘアスタイリング剤「HAIR BALM 997」4290円、ルームミスト「ROOM MIST 997」(180mL)4070円、保湿クリーム「BODY CREAM 997」4950円、ハンドバーム「HAND BALM 997」3740円(全て税込)

今回は出張関連のアイテムでセレクトしてもらったが、他にも見どころは多く、ドレス系のウエアはクオリティーに定評のある一流ブランドを、カジュアルウエアはトレンドや目新しさを意識したアイテムがそろう。この10月にはポップアップイベントを行う“ザ・ステージ”も新設され、訪れるたびに新たな発見がありそうだ。イセタン羽田ストアには、空港の新しい楽しみ方がある。

イセタン羽田ストア(メンズ) ターミナル1

TEL:03‐5757‐8700(直通)


photograph:Hisai Kobayashi
edit & text:d・e・w