「グランドヒルズ」と「シティ」の違いはここ

住友不動産の分譲マンションには、大きく「グランドヒルズ」と「シティ」という2つのブランドがあり、シティは建物や敷地の特徴によって「シティハウス」「シティテラス」「シティタワー」に分かれる。それぞれどんな特徴があり、何が強みなのか。主に東日本エリアで営業に関する業務に就く中村貴彦さんに聞く。

――「グランドヒルズ」と「シティ」というブランドはどのようにしてできたのですか。

中村貴彦さん(以下略) 弊社では1960年代からマンションの分譲を行っていまして、当時は「ハウス」という名称でした。その後80年代に事業が拡大していき、それに伴ってシティやグランドヒルズというブランドが立ち上がりました。現在は、シティハウスをメインに、高層のものをシティタワー、大規模のものをシティテラス、そして最上級のものをグランドヒルズとしています。

――シティとグランドヒルズの違いはどんな部分ですか。

一番は土地です。一等地と呼ばれるような、唯一無二の土地にはグランドヒルズという名を付けています。数年に一度、素晴らしい立地でのみ供給するため、これまでに供給した物件はごくわずかです。他に、内部の設備仕様や内装材に上質なものを使用したり、コンシェルジュサービスが付くなどの違いがあります。ただ、基本となるコンセプトはシティもグランドヒルズも同じです。

――共通するコンセプトとは?

弊社が掲げているのが、「光景(シーン)となる象徴(シンボル)」というコンセプトです。マンションは一生に何度も出合わない大事なものですよね。それを提供する側としては、住む方の人生が素晴らしいものになるようなシーンをつくりたいという思いが、まずあります。例えば、結婚したときや子どもが生まれたとき、何らかのお祝いのときは、外で乾杯をされる方も多いと思いますが、そういうときも家で過ごしたいと思えるマンションを造ろうと。人生のシーンをつくりたいという考えです。

――シンボルとはどういうことでしょう?

街のシンボルとなる建物になってほしいということです。ただ単に目立つ、際立つということではなくて、品よく際立つ建物を目指そうと。というと、高層や大規模なものをイメージされるかもしれませんが、低層や小規模のものでも同じ考えです。小規模であっても共用部の中庭を充実させるなど、やり方はいろいろありますので。

住友不動産の販売実績と販売予定(直近3年/今後3年程度、一部抜粋)
住友不動産の販売実績と販売予定(直近3年/今後3年程度、一部抜粋)

土地は命。それでもエントランスを吹き抜けにする理由

――では、住友不動産のマンションの特徴はどんな部分ですか。

まず分かりやすいところでは、エントランスです。シティもグランドヒルズも、この10年ほどで竣工したマンションはほぼ全て、エントランスが2層吹き抜けになっています。エントランスはマンションの顔、エントランスが全てと言ってもいいくらいなので、広がりがあって、豪華であって、ホテルライクなものにしよう、「行ってきます」と「ただいま」のときに誇れる場所にしようという思いです。

――確かに、先ほどミュージアム(※後述)で拝見したムービーでもエントランスが印象的でした。

本来、デベロッパーにとって土地は何よりも大事なもので、全て有効活用したいという思いがあるので、吹き抜けは非合理的なんです。吹き抜けにしなければ1層分、住戸が造れますから。ただ、吹き抜けのエントランスを造ってみて、結果的には住民の方の満足度が上がり、マンションの価値が全体的に上がっている傾向にあります。

CH王子ENTホール
CTe善福寺公園ENTホール
吹き抜けのエントランスホールの例。オフィスビルやホテルを訪れたかのような開放感にあふれる(上:シティハウス王子、下:シティテラス善福寺公園)

――興味深いですね。採算だけではなく、豊かさや満足感を付加価値と考える方向へ変わった。何かきっかけがあったのですか。

あるとき、自社で造った複合ビルの吹き抜けが気持ちいいという話になって、それをマンションに入れられないか、と考えたのがきっかけの1つだったと思います。弊社はビルが主体の会社です。オフィスビルは2層3層の吹き抜けのエントランスが多いですよね。それが良い評価を頂いているならマンションにも取り入れよう、という考え方です。同じようにビルから取り入れたのが全面ガラス張りのマンション。今では一般的になってきましたけれど、最初は珍しがられましたね。

役員以下30人もの大人が集まって間取りをにらむ

―他に、特徴や強みはどんな部分でしょう?

弊社が一番自信を持っているのが、間取りです。弊社のマンションの場合、住戸の広さに応じてベースとなる間取りが決まっています。70平米だったらこの間取り、80平米だったらこの間取りというように。

――え? なぜですか。

戸建ての場合は間取りに応じてある程度スペースを広げられるのですが、マンションはそれができません。この広さと決まったらその中で造るしかないんですね。とすれば、極論としてはデッドスペースをゼロにして、その広さを最大限に有効活用したい。少しでも広い空間で暮らしていただくために長年培ってきて、現時点で最良と考えているのが今の間取りです。

――間取りを決める基準は広さだけですか。敷地の形状や家族構成などは考慮されます?

基本的には広さのみです。マンションの建て方にはいろいろな考えがあると思います。例えば、少しいびつな土地や変形の土地の場合、その土地に合わせてマンションを建てるか、もしくは建てやすい土地になるように広げるか。前者の場合は、間取りもいびつになることが多く、その分価格が安くなるというメリットがあることも。ただ、弊社の場合は間取りが決まっているので完全に後者です。「この間取りに当てはめるのなら土地を広げるなり、高さを出すなり考える」というスタンスですね。

中村貴彦
中村貴彦(なかむら・たかひこ)。住友不動産住宅分譲事業本部営業部所属。主に名古屋から北海道までの新規分譲マンションにおける第1期までの営業を担当する。並行して営業企画に関する業務も担い、オンライン営業やYouTube配信などを主導。後述する「総合マンションミュージアム」の立ち上げでも中心メンバーとなった

――間取りは今も改良され続けている?

続いています。毎週会議があるのですが、役員から新入社員まで大の大人が30人以上集まって、「ここの間口を2cm狭めてこっちを2cm広げれば、有効率が0.0何%上がります」とかやっているんですよ。自社のことながら、ちょっと異様な光景ですよね……(笑)。でもそうやって考え抜いた間取りだから、同じ面積でも一番広く使っていただけるという自信があります。

――広さというのはとても分かりやすい魅力です。

実際に広く使えることに加えて、広く感じる工夫もあります。代表的なものが、バルコニーのガラス手すりです。いくら眺望が良いマンションでも、室内でくつろいでいると手すりが視界を遮ってしまうことがあります。そこで手すりの壁に当たる部分をガラス製にして、眺望と開放感を味わってもらえるように。建物を外から見た際、ガラス手すりに光が反射して美しく見えるという副次的作用もありました。

バルコニー
ガラス手すりの一例。通常は遮られてしまう手すりの壁部分も視線が抜け、室内からも眼下の眺望が楽しめる

廊下がすっきり美しい。理由は特許工法にあり

――住戸では間取りとガラス手すりが大きな特徴ですね。共用部で特徴的なものはありますか。

1つ挙げるなら、すっきりとした廊下です。通常、マンションの廊下はエアコンの室外機やメーター機器が置かれ、ごちゃっとした印象になりがちですが、廊下だってやっぱり美しいほうがいいですよね。そこでどうしたかといいますと、廊下の外側に縦長のスペースを造り、そこに機器類を全て収めるようにしたのです。ここにもビルや商業施設のノウハウが生きていますね。弊社ではS‐マルチコアと呼んでいて、この工法で特許を取得しています。

――だからすっきりして見えるんですね。

そうですね。そのS‐マルチコア自体もマンションの外観に調和するようにデザインして、さらに外からの目隠しとしても機能するように各住戸の玄関ドアの前に置いたマンションもあります。外観になじみながら、廊下を美しく、そしてプライバシーの面でも役立っているんですよ。

2020年GD_セントラルレジデンス笹塚_Sマルチコア
写真右側、横格子状のボックスがS‐マルチコア。この中にエアコンの室外機やメーター類を収めている

――実用と美しさが両立していますね。では、実際に入居された方からはどんな声が届いていますか。

特に多く頂くのは、購入後のアフターケアに対するお言葉です。弊社は造って売るだけではなく、その後の管理まで行う総合不動産なので、入居後のほうがお付き合いが長いんですね。アフターケアはとても繊細に対応させてもらっていまして、本当に手前味噌なんですが、「素晴らしい」「住んで良かった」というお声をよく頂きます。

――それでは最後に、今後注力していくことや新しい取り組みなどはありますか。

サステナビリティーの面では、ゼッチ・マンション・オリエンテッド(※1)ですね。弊社では、今後供給する全ての新築分譲マンション(※2)で、ゼッチ・マンション・オリエンテッドを標準仕様化します。それと、これから注力したいのは、私たちの会社がどんな歴史があって、どんな考えでマンションを造っているか、要するに今日お話したようなことをきちんと伝えるということです。先ほど見ていただいた総合マンションミュージアムもその一環ですね。

※1 ZEH‐M Oriented。住棟全体の年間エネルギー消費量を、現行の省エネ基準値から20%以上削減する省エネ性能
※2 2021年10月以降に設計・開発する物件。JVなど一部物件を除く

――ミュージアムはとても分かりやすく、楽しい構成でした。なぜ情報発信に力を?

20年ほど前は、業界全体で8万戸、9万戸の分譲マンションを供給していましたが、今ではその3分の1程度。マンションがより嗜好品に近いものに、より高級な買い物になっていますので、建物に対するこだわりやアフターケアはしっかり続けながら、それらを知ってもらうことも大切です。今はまだ立地でマンションを選ばれる方が多いのですが、私どもの物件を買いたいと、会社を選んでいただけるようになれたらと、そう思っています。

総合マンションミュージアム
住所:東京都港区東新橋1‐9‐1 東京汐留ビルディングB2階
開館時間:11:00~19:00 土・日曜、祝日10:00~18:00
休館日:水曜、年末年始
料金:無料
下記ウェブサイトから要事前予約
https://www.sumitomo-rd-mansion.jp/shuto/museum/

photograph:Hirotaka Yabushita(portrait)、Sumitomo Realty & Development(apartment)
edit & text:d・e・w