京都の景勝地として人々を惹きつけてやまない嵐山。名所を象徴する渡月橋のすぐそばに建つ「MUNI KYOTO by 温故知新」は、2020年にオープンしたスモールラグジュアリーホテルだ。

客室は全21室。1階の客室からは渡月橋の下を流れる桂川を模した水景が、2階の部屋からは嵐山全景が望め、洗練された空間は快適そのもの。ここでは上質な部屋に泊まるだけでなく、併設のレストランで素晴らしい食体験もが叶う。世界9カ国に30店舗以上のレストランを展開するフランス料理界の巨匠、アラン・デュカス氏が監修する2つのフレンチレストランを有し、美食家たちを惹きつけているのだ。ひとつは、桂川を目前に朝食、ランチ、アフタヌーンティーを味わえるカジュアルラインの「MUNI LA TERRASSE」。もうひとつは、ガストロミックなコース料理をディナーに堪能できるコンテンポラリーレストラン「MUNI ALAIN DUCASSE」。過日、メインダイニングである後者のレストランで、デュカス氏の哲学を受け継ぐ2人のシェフによる特別イベントが開催された。

ホテル「MUNI KYOTO by 温故知新」
嵐山に建つホテル「MUNI KYOTO by 温故知新」。夜になると静寂に包まれ、より自然の息吹を感じられる
メインダイニングMUNI ALAIN DUCASSE
シックな空間のメインダイニングMUNI ALAIN DUCASSE。壁面にはマルク・シャガールの絵画が飾られている

レジェンドのDNAを継ぐ2人のシェフが共演

現在、MUNI KYOTOのエグゼクティブシェフとして腕をふるうのは、イタリア生まれのアレッサンドロ・ガルディアーニ氏。モナコやロンドンにあるデュカス氏のレストランで腕を磨いたのち、2022年から京の地で腕をふるっている。今回、ガルディアーニ氏とコラボするためにパリから飛んできたのは、パリの最高級ホテル、ル・ムーリス、ドーチェスター・コレクション内にある「Le Meurice Alain Ducasse(ル・ムーリス・アラン・デュカス)」のエグゼクティブシェフを務めるアモリー・ブウール氏。かつて、Le Meurice Alain Ducasse(ル・ムーリス・アラン・デュカス)の厨房でともに料理に打ち込んだこの2人が、京都嵐山で共演した特別ディナー。それは、お互いを慕いつつ高め合ってきた者同士だからこそ実現した、素晴らしい料理の連続だった。

シェフ
MUNI KYOTOのエグゼクティブシェフ、アレッサンドロ・ガルディアーニ氏(左)と、パリ「Le Meurice Alain Ducasse(ル・ムーリス・アラン・デュカス)」のエグゼクティブシェフ、アモリー・ブウール氏(右)

アミューズのあとに登場したコース一皿目は、ブウール氏の手がけた色彩豊かな一皿だ。柚子胡椒とジャスミンでマリネした帆立の上に、色とりどりのラディッシュを並べた料理は目にも美しい。ソースに使われたのは、葛。日本料理にも通じる柔らかなとろみが素材すべてを融合し、味わいも美しい一皿に仕上がっていた。

次に提供されたガルディアーニ氏の魚料理は、長崎産のクエ。「日本では刺身のように生で食べる食材も多い。火を入れすぎない技法、その緻密なおいしさに開眼しました」。そう話すガルディアーニ氏が絶妙に火入れしたクエは限りなく“生”を活かした火入れで、至極繊細。シャンパーニュとビーツの鮮やかでエアリーなソースとの組み合わせも斬新で香りの余韻も長い。

コース前半戦にして、「日本の食材を理解し適応してフランス料理に落とし込みました」と異口同音に語る2人のクリエイティビティは全開。

料理
柚子胡椒に葛、和の食材を忍ばせた帆立の一皿
料理
乳化させたシャンパーニュのソースで味わうクエ。キャビアの塩味がアクセントに

ブウール氏が「天ぷらをイメージした」というのはオマール海老。クリスピーな衣をまとったオマール海老の驚きの食感もさることながら、オマールソースの芳醇な味わいたるや。続くガルディアーニ氏の鮑料理もソースが印象的な一皿である。クレソンのピューレを加えた爽快なサバイヨンソースに、海鮮のブイヨンに鮑の肝を加えた濃厚なソース。2種のソースで味わう鮑のコンフィは、野の味海の味が折り重なる美味に唸らずにはいられなかった。「常に新しいものを追い求める」というデュカス氏の哲学を引き継いだ2人の料理。そのような唯一無二の味を京都嵐山で堪能できたことは至福以外の何ものでもない。

料理
サクサクと小気味よい衣にむっちりとした肉感。食感豊かなオマール海老は、オマールのソースで味わう
料理
コンフィしたのちに松で燻した鮑。ふんわりエアリーなサバイヨンソースと、鮑の肝を加えたソースで堪能する。複雑な旨味で満たされる

苺のピュレで味わうデザートで締めくくられたコラボレーションディナー。MUNI KYOTOでは、今後もこのような特別なレストランイベントを開催するというから楽しみだ。もちろん普段の日でも、素晴らしいガストロノミックな料理を堪能できることは言うまでもない。

料理
ワサビ風味のアイスにヴァン・ジョーヌの カスタード、苺のピュレを合わせた独創的なデザート

「MUNI KYOTO by 温故知新」

京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3番
TEL:075‐863‐1110


5月30日には、「Chef’s Table by Katsuhito Inoue(ザ・リッツ・カールトン京都)」のヘッドシェフ・井上勝人氏とアレッサンドロ・ガルディアーニ氏によるコラボレーションイベント “FOUR HANDS DINNER” を開催。京都を舞台に活躍する2人が織りなす、一夜限りのスペシャルディナーを堪能できる。


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