運転席に腰を沈めると、センター・コンソール・パネルとインテリア・トリムに、得も言われぬ深い陰影が浮かぶ。その表面には、きらりと光る星々がちりばめられている。ふと、大切な人と語らいながら夜道をドライブしたくなる誘惑にかられる……。
「テーマは“星がきらめく、美に満たされたやすらぎの空間”。夜の深い色合いを楽芸工房の村田紘平さんによる五色銀重(ごしきぎんがさね)の技法で表現し、星は真珠の粉を用いて描いています」と話すのは、本コンセプトモデル「NISHIKI LOUNGE」を企画したプロダクトマネージャーの御舘康成さんだ。五色銀重とは、漆と銀の「焼き箔」を重ねては漆で消し込み、また重ねていくという伝統技法で、顔料ではなく熱によって発色させた銀箔の重なりが、厚く、深く、極めて幽玄な趣を感じさせる。そこに光の加減によって表情を変える真珠粉の星が瞬く。まさに車内空間に天の川が現れたようにも感じられた。
御舘さんがこのプロジェクトに情熱を傾けるのには、ある思いがあった。「私はBMWを車づくりへの拘りやクラフトマンシップが凝縮した最高の車だと思っています」という通り、BMWのハンドルを握ったことがある人ならば、ドライバーの感覚に直結して車が応えてくれる唯一無二の「駆けぬける歓び」を感じずにはいられないだろう。一方で、それを表面に出さないドイツらしい質実剛健さも感じさせる。そこに「日本人の繊細な美意識に呼応するものが加われば、本当のリュクスを表現できるのでは」と御舘さんは考えた。




京都の職人が守り続けてきた伝統技法を惜しむことなく表現
そしてせっかくBMWジャパン発のプロジェクトであるならば、日本の匠が生み出す「雅」な世界観と組み合わせることを思いつく。そこで日本を代表する伝統工芸の職人たちとともに、「BMWと日本の名匠プロジェクト」として唯一無二の特別仕様車を生み出していくことになる。8シリーズに漆工を施した「KYOTO EDITION」、7シリーズを金工で加飾した「PURE METAL EDITION」、そして西陣織の「NISHIJIN EDITION」だ。
「西陣織は極めて精巧な織物です。和紙に漆で多彩な色調に整えた箔を重ねて極細に裁断します。それを絹糸と織っていくのです。NISHIJIN EDITIONでは、広いとはいっても限られている車内空間を明るく、日中の光の“うつろい”を感じられるように彩るため西陣織を用いました」と振り返る。その後継ともいえるのが今回のNISHIKI LOUNGEだ。「前回が、金色の箔による絢爛な昼のイメージならば、今回のNISHIKI LOUNGEは夜です。銀箔を使う五色銀重を採用し、静けさとやすらぎを表現したのです」と狙いを語る。

他にも、コンソール・ボックスの蓋には「kuska fabric」による手織りの牛革をあしらい、フロアマットには「川島織物セルコン」の職人がハンドタフトという手で打ち込んで編み上げていく絨毯の技法を用いるなど、いずれも職人のハンドクラフトによる一点モノを採用している。どちらのパーツにも夜空を感じさせる青の彩色と星があしらわれ、西陣織の技法と合わせ一連の美観をたたえている。「京都の職人さんのもとに何度も足を運ぶうちに、さまざまな知遇を得て、イメージがどんどん魅力的に深まりました。そうした絶え間ないコミュニケーションが今回のコンセプトモデルに結実しています」と御舘さん。





贅沢なコンセプトモデルのエッセンスを自分だけの一台に
驚くべきことに、これらコンセプトモデルの仕様の一部(2トーン ボディ・カラー/箔装飾インテリア・トリム/専用フロアマット)を、カスタムオーダー・サービスとして5台限定で購入できるプランがある。「これまでのEDITIONの究極形として、お客様の感性を実現する特別な購入体験を実現すべく、今回は世界に類を見ない日本人の技と芸術性を無限の広がりをもってお届けします」。御舘さんは、日本の伝統工芸に強いリスペクトを感じている。例えば箔は漆と重ねるうちに、箔の輝きは漆の艶に消し込まれ、一見、気づかないほど控えめな深みとなる。こうした手間暇をかけて磨き上げる日本の工芸の精髄を御舘さんは「錦心」と表現した。日本の手仕事の繊細さに、気高い心意気を感じている。そしてまた「これらの模様はまさに「一期一会」の偶然の美。正真正銘の一点ものなのです」とも語る。まさに“究極の購入体験”にふさわしい、自分だけの一台を手にすることができるのだ。


さて、内装のことばかり触れてしまったが、エクステリアにも触れておきたい。カスタムオーダー・サービスでは、BMWの工場生産車には設定がない、日本仕様だけのツートーンカラーを選ぶことができる。通常、工場から出荷された車両を塗りなおすと新古車の扱いになってしまうのだが、BMWジャパンの技術部門だからこその精巧な塗装技術で、新車として出荷できるのである。本当の意味で、日本でしか実現できないカスタムオーダー・サービスとなっている。ドイツ車のクラフトマンシップが生むドライブフィールによる魂の高揚と京都の伝統工芸の繊細なインテリアが生む深い充足感。一見、相反するような2つの魅力をBMWジャパンの技術力で結集させた唯一無二の一台を手に入れてみてはいかがだろうか。

