“7つの色”の海に囲まれた宮古島に初上陸
ローズウッドという名は日本ではまだなじみが浅いかもしれないが、米国の富裕層やエグゼクティブの間ではつとに知られたホテルブランドである。その起源は1979年、米国・テキサス州のダラスに古くから残る邸宅を改修し、レストラン併設のホテルをオープンしたことに端を発する。
創業後は、地中海のリゾート地や北米の主要都市を中心にホテル事業を展開するが、2011年に香港に本拠地を移すとアジア地域にも目を向け、タイのプーケットやバンコク、カンボジアのプノンペン、ラオスのルアンパバーンといった名だたる観光都市に進出してきた。そして2025年3月、日本初上陸となったのがローズウッド宮古島である。これらの都市に共通するのは、その地ならではの素晴らしい景観や体験が提供できること。宮古島の海には、“7つの色がある”と言われるほど無類の美しさを誇る。日本初進出の地に選んだのもうなずける。
このローズウッド宮古島には海外からのゲスト、とりわけ欧米からのゲストが多い。沖縄には欧米からの直行便が就航していないため、東京をはじめ名古屋や大阪、あるいは香港やソウルの空港で乗り継ぎ、わざわざこのホテルを目がけてやって来るのだという。彼らの過ごし方を眺めていて感じるのは、旅の目的がホテルで過ごす時間であること、そしてそんな彼らにとってローズウッド宮古島が最適な選択のひとつであるということだ。
ローズウッド宮古島
沖縄県宮古島市平良荷川取1068‐1
TEL:0980‐79‐8998
料金:1室1泊21万2500円~(2名1室利用、税金および手数料を除く)※2025年7月現在
https://www.rosewoodhotels.com/jp/miyakojima/
喧騒とは無縁の“こもれる”ロケーション
その理由を挙げるとすれば、まずは外界から遮断されたような“こもれる”ロケーションである。
宮古島は主に島の南部と西部にリゾート施設が多く集まるが、ローズウッド宮古島があるのはそれらから遠く離れた島の北部。加えて、大浦湾に突き出た岬に位置するため、目に入るのはほぼ大自然のみ。都市の喧騒はもちろん、リゾート地のにぎわいや混雑とも無縁の、悠然とした時間を過ごすことができる。ビジネスから離れて心身を休める環境として、これほど適した場所もない。

三方を海に囲まれた岬に立ち並ぶのは、ヴィラとハウスの計55棟、全棟プライベートプール付きの客室である。最もベーシックなヴィラは60平米、デラックスタイプは90平米という十分な広さを確保し、オープンテラスにバーベキューグリルを完備したハウスは全3棟。最もハイクラスな「KAMII(カミイ)ハウス」は200平米の広さに2ベッドルーム、2バスルームを備える。テラスからは眼下に広がる美しい海の向こうに、遠く伊良部島を眺めることもできる。




エグゼクティブこそ“何もしない時間”が必要
では、欧米から訪れたゲストは、このホテルで何をして過ごしているのか。ざっくり言えば、彼らはほとんど何もしていない。インフィニティプールでサンベッドに横たわってくつろぐ、本を読む、家族や友人と会話を楽しむ、スタッフがサーブするフードやドリンクを味わう、疲れたら部屋に戻る、といった具合だ。何もすることが無いのではなく、何もしない時間を意識的につくっているようにさえ見える。心身、そして頭までオフにして、大自然のエネルギーを充填するかのように。


その一方で、仮に体を動かしたくなったら、眼前の海でマリンアクティビティー(前日までに要予約)を楽しむこともできる。取材時には、シュノーケリング、ペダルボート、シーカヤック、サップが用意されており、水着さえ持参すればマリンシューズはレンタルも可能だ。遠浅の海で眺められるのは、サンゴ礁やそこで群れるクマノミなどの熱帯魚、そして沖に出るに連れて色が移ろう海の美しさ。運が良ければウミガメやエイに出会えることもあるという。
ウェルネス体験で体のメンテナンスを
“何もしない時間”で心を休めたら、次は体のメンテナンスを。ローズウッド宮古島の大きな特徴のひとつが、ウェルネス関連のメニューが充実していることだ。長寿で知られる沖縄のライフスタイルや文化から着想を得た「Asaya Spa(アサヤ スパ)」では、ヨガやエクササイズなどのメニュー(要予約)を日替わりで提供している。もう少し体を動かしたい人には、空手発祥の地とされる沖縄に由来した武道体験もお勧めだ。その他、主に女性向けのトリートメントメニューやオイルマッサージも多彩にそろい、敷地内に託児施設があることも子連れにはうれしいポイントである。
体を動かした後は、もちろん入浴が欠かせない。アサヤ スパにはジャグジー付きの広々としたバスとスパ専用の屋外プールを完備するほか、サウナ好きに堪らないのが、室温が約90℃のドライサウナと約50℃のスチームサウナの両方が用意されていることだ。このスパだけで1日過ごせそうなほど充実した設備が整っている。
沖縄由来のオリジナルカクテルに酔う
最後に、気になる食事面はというと、ホテルから出ることなく、タイプが異なる4つのレストラン、バーを楽しむことができる。イタリアンと和の技法を融合したオールデイダイニングの「NAGI(ナギ)」、魚介の鮮度を生かした料理と沖縄から着想を得たアルコールがそろう「MAAS(マース)」、プールサイドで軽食やドリンクが楽しめる「YUKUU(ユクウ)」と、その時々でチョイスが可能だ。さらに、寿司、天ぷら、鉄板焼き、焼き鳥を専門シェフが供する「苧麻(ちょま)」が今後オープン予定という。
アルコールを嗜むならば、MAASのバーマネージャー、井崎宇太郎氏が考案したオリジナルカクテルを味わってほしい。宮古島にさつまいもを伝えたとされる人物を祭る御嶽(うたき)にちなんだ「芋ヌ主(んーぬしゅー)ハイボール」や、泡盛をベースに沖縄のフルーツと塩、そして黒糖を使った「MAASサワー」、沖縄のラムと芋酒のイムゲーを用いてピニャ・コラーダ風に仕上げた「ベニ イモ コラーダ」など、井崎氏の創作ストーリーに耳を傾けながら味わうと、うまさもひとしおだ。また、客室備え付けのルームバーにも沖縄産のビールやラムが用意されているので、余力がある人はこちらもぜひご賞味を。

ホテルでパーティーを開くわけでもなければ、写真撮影に興じるわけでもない。欧米の富裕層たちが求めるのは、何にも縛られずに気の向くままに過ごす時間である。日々、全力疾走するエグゼクティブだからこそ、自らをリトリートする時間を意識的に設けることの大切さ、そしてその時間が次への英気を養うことを知っているのだろう。大自然に包まれたローズウッド宮古島は、そんな滞在に最適な環境であることは間違いない。日本のエグゼクティブたちにも推奨する理由である。

photograph:Courtesy of ROSEWOOD MIYAKOJIMA
edit & text:d・e・w