服装に気を使うことはすごく大事なことだと思っています。スーツは体形にフィットするようオーダーしています。今日はオーダースーツの店「リングヂャケット」で誂えた一着を着てきました。私にとってスーツとは、仕事で出会う人たちとの関係性を円滑にするもの。つまりビジネスにおける非言語のコミュニケーションを助けるツールなのです。社内外で信頼を得たいなら、服装に気を使うことから始めてみるのがいいでしょう。
とはいえ、私は最近スーツを着る機会が減ってきており、ノータイにジャケットとパンツなど、カジュアルな装いで仕事をすることが多くなりました。というのも、伝統的な企業群と新進気鋭の企業群との2つに大別されたIT業界も、今や壁が溶け始め、新たな価値創造への再編が進んでいます。元来PCメーカーだった我々も多岐にわたる事業を手がけています。だから私も昔ながらのお付き合いだけでなく、次代の起業家たちと新しい関係を広げていこうとしています。
その際、自分の経営者、そしてビジネスマンとしてのポリシーも大事にしつつ、TPOや相手の価値観に合わせた服装を心がけているからです。カジュアルな服装で開発に夢中になっているチームに、お堅いスーツで現れては先方も緊張してしまいますからね。自分を受容してもらうことがいい関係を築くのに不可欠なのです。ジーンズ姿で若い起業家たちと交わることもしばしばです。
また、服装にこだわることは自分の外見だけでなく、内面にも影響を及ぼします。かつてこんなことがありました。若い頃には大勢の前でプレゼンテーションをするのが苦手だったものです。しかし、30代そこそこの頃、ふと思い立ってスーツをオーダーで仕立て、いい靴を履いて臨んだことがありました。すると自分の心の落ち着きを感じ、プレゼンもうまくいったのです。服はパワーを与えてくれる。それを実感した体験でした。
自分が持つ力や、自分の意思を伝えることが経営者には必要です。そもそも経営者とは肩書に依らず、自然とそうあるべきものと考えています。確固たるビジョンを掲げ、周囲を巻き込むナチュラルなパワーが企業を率いる経営者には必須です。身に着けるその人の価値観を周囲に伝える服は、自分の内面のパワーを表現するために非常に重要な鍵を握っているのです。
愛用の逸品~イエローの革小物で験担ぎ
留目真伸/Masanobu Todome
1971年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。トーメン、モニターグループ、デル、ファーストリテイリングを経て、レノボ・ジャパンに入社。NECとのPC事業統合や米国本社の戦略部門にてM&Aに主要メンバーとして携わった後、現職。NECパーソナルコンピュータ社長も兼任。
text:Lefthands
photography:Isamu Itoh
hair & makeup:RINO
from:PRESIDENT 2018.4.16