服装は、相手への配慮である

事業を引き継ぐ際、先代からは「私心で決断するな。世の為、人の為を思へ」と諭されました。その教えを経営判断の標としています。そのためには、わが身を振り返り、心身を律する必要があるでしょう。

私は、常にスーツで仕事をしています。コンサルティング会社に勤務していた時代に、服装に関しては上司から厳しく指導されました。「ビジネススーツは、着るのが当たり前」という感覚です。また、私にとってスーツはマナー面だけではなく、自己のマインドを仕事モードに切り替えるスイッチとしても有効なのです。

その経験もあり、社長に就任した当時、通勤時、勤務時の服装に関する社内規定を設けました。また、環境美化にも積極的に取り組みました。服装や掃除といった身の回りのことをきちんとすることで、実際に社員の働きぶりが変わったと実感しています。

スーツ選びはネイビーが基本

スーツはドイツのメジャーブランド「ヒューゴボス」。靴は「フェラガモ」

服装に関しては妻の眼力のほうが確かなので、スーツ選びは妻に任せています。仕事に必要な服は伝えてありますから。ただ色には多少のこだわりがあります。アメリカ勤務時代の上司から力強い印象を与えるならスーツはネイビーだと教わりました。いまでも基本はネイビーです。ワイシャツは白。ネクタイはコーポレートカラーのブルーを主体に少し差し色を入れたものを好んでいます。過剰なおしゃれをしているように見えないよう、やや控えめを心がけています。社長に就任してからは、毎朝、髪と眉毛は自分で整えるようにしています。「会社の顔」なので、それくらいはしないといけません。

服装で相手への敬意が示せると思います。私はクールビズのシーズンでも当然ネクタイを締めて打ち合わせに臨みます。特に経営者の先輩格の方々にお会いするときは、絶対にスーツにネクタイ。たとえ汗をかいていったとしても、半袖のシャツよりスーツのほうがいい。実際、きちんと話を聞いていただけることが多いです。服装は清潔感やマナーだけではなく、相手に対する心の持ちようを表すのではないでしょうか。

弊社は「はかる」ことが本業です。これからは心の状態も数値化できるような計測機器を開発したい。からだのコンディションだけでなく、心を整えることで仕事のパフォーマンスも上がると思っています。

愛用の逸品~営業のお供はキャリーバック

学生の頃に腰を痛めたこともあり、仕事中はキャリーバッグを愛用し、社用車は使わず公共交通機関で移動することにしている。モノに頓着するタイプではないが、ボールペンにはこだわりがあり、特にモンブランがお気に入り。

谷田千里/Senri Tanida
1972年、大阪府生まれ。佐賀大学理工学部卒業。コンサルタント会社などを経て2001年タニタに入社。タニタアメリカINC取締役を経て08年から現職。

text:Lefthands
photography:Sadato Ishizuka
hair & makeup:RINO
from:PRESIDENT 2018.7.16