服装はアピールのツールである
大学卒業以来、外資系企業に勤めています。グローバル企業の一員として、ローカルとグローバルな視点のバランスを常に考えてきました。外資系企業に勤めている人間は、世界の潮流を理解したうえで、それがローカルにどう当てはまるのかを考えなければなりません。
私も主軸は日本に置いて、グローバルの動向を理解し、日本のお客様に提案し、世界のスタンダードに通用するものを採用していただく努力をしてきました。
装いは、そういったアピールの場での大きな助けとなると考えています。ビジネスにおけるグローバルスタンダードはスーツです。であるならば、相手へのリスペクトをこめながらも、個性を表現するようなアレンジを利かせてさりげなく自己主張することが、スーツを着るうえで重要になるのではないでしょうか。
前職でフランスへよく出張していた頃、現地の同僚たちは、ルールは守りながらもそれぞれの遊び心を加えた粋な装いをしていると感心していました。ビジネスシーンのみならず、ファッションを楽しむことが、実はビジネスに大切な要素なのだと、そのとき学びました。それ以来私は、例えばシーンや会う相手に合わせて色柄を考慮したカフスやチーフで伝えたい“自分”を演出しています。
外見と内面の双方で自己表現を
外見に気を使うことに加えて、内面を意識することも心がけています。ことあるごとに私自身がどういう人間なのかを自問しています。部下に対して話していても、その発言が自分自身の行いや内面と一致しているのかを問う。すると自分のできることや大切にすべき価値が自ずと見えてくるのです。
ビジネスパーソンは、知性で戦うアスリートだと思います。一流のスポーツ選手はパフォーマンスを上げるため、自らコンディションを整えています。成功をつかむために、ビジネスパーソンもコンディション調整をすることが肝要でしょう。私の場合は夜の接待は週2回まで、二次会は行かないなど、お酒との付き合い方にも気をつけています。また、坐禅を組むことで自分を客観視することも習慣にしています。
自己を知り、ぶれない価値観を築くことは、デジタル化が進みAIの創成期である現代において、重要なことだと思います。
愛用の逸品~万年筆と公私で使い分ける手帳
プライベート用には感銘を受けたフレーズなどを書籍から抜粋して書き留めています。言葉がアップダウンの激しい日々の栄養剤になります。
仕事用にはその日の朝に感じたこと、自身で心がけていること、アイデアやスケジュールを毎日記録しています。ペーパーレス化が進む昨今ですが、だからこそ書くことの重要性を感じます。書かないと思考が止まってしまうように思うのです。
大崎真孝/Masataka Osaki
エヌビディア 日本代表 兼 米国本社副社長
1968年、兵庫県生まれ。大学卒業後、日本テキサス・インスツルメンツに入社。米国本社勤務を含め、マネジメント職に従事した。2014年にエヌビディアに入社し、日本法人の代表に就任。経営学修士号(MBA)取得。
text:Lefthands
photography:Takao Ohta
hair & makeup:RINO
from:PRESIDENT 2018.8.13