――6月から「品質保証新宣言」を掲げ、さらなる高付加価値を提供しようとしています。元々、白洋舍は品質の高さが売りと聞いています。

元々、富裕層の個人のお客様のクリーニングから始まった会社ですから、その伝統を引き継いでいます。現在も高級なお召し物を出す方が多いので、取り扱いにはとても注意しています。たとえばボタンも貝ボタンなど取り扱いを注意しなくてはいけないものはいったん外して、クリーニングして、また取り付けるとか、チェックの段階でボタンが破損しているのが分かったときは、代替品を付けて差し上げるとか。

洗いと仕上げとしみ抜き部門には、それぞれ技術者資格試験があって、スキルと経験で5段階の資格者等級を設け、さらにその上にマイスターが存在します。個人名で勝負できる人たちです。

――クリーニングの会社らしく、ご自身も社員も清潔第一を重視していますね。今年の夏はとくに暑く、清潔感を維持することに気を遣ったのではないですか。

汗と臭いは気を付けなくてはいけません。当社にはそれらに対応するクリーニングサービスがありますので、私自身も利用していますが、もちろん、お客様にもそれらのメニューをご提案しています。たとえば「汗すっきり加工」を施すとジャケットなどから汗のゴワゴワ感がなくなります。臭い対策には「ポリジン・ウォッシュイン加工(抗菌防臭加工 )」があります。銀イオンが細菌の増殖を抑えることで、汗の臭いの発生を防ぎます。出張の多い方にご好評なのが「折目加工」です。夏場、汗で消えやすいズボンの折り目を維持します。ジャケットを脱ぐ機会が増える夏場には、思いのほかパンツの印象が残るものです。折り目には特に気を遣いたい季節だと思いますね。

――付加価値の高いサービスですね。ところで2012年からメーカーズシャツ鎌倉と業務提携し、シャツを買うと白洋舍のクリーニングのサービス券が1枚付いてきます。これは松本社長が愛用しているから実現したのですか。

確かに私は長年、鎌倉シャツの愛用者でしたし、鎌倉にずっと住んでいましたから、業務提携できればいいと思っていました。鎌倉シャツの貞末(良雄)会長も、どんなにシャツの品質が高くても適切なクリーニングで常によい状態で着てもらわないと意味がないと考え、以前から提携できるクリーニング業者を探されていたそうです。当社としてもお客様との接点が広がるので、うれしい提携です。

――ご自身は、生命保険会社に勤めていたときと今では服装は変わりましたか。

清潔に対する意識は強くなりました。ただ、着ているものはそう変わりません。ワイシャツは白、ネクタイはブルー系のレジメンタルが基本です。スーツは「ブルックス・ブラザーズ」や「J.プレス」です。ある年齢以上の方には私と同じで、アメリカントラッドへの憧れがあるのではないでしょうか。アメリカントラッドはシンプルで機能性があるので、とても気に入っています。スーツに合わせる靴もアメリカブランドの「コールハーン」です。ウイングチップやストレートチップがカッコいいなと思います。

――現在、スーツはオーダーとか。

役職が上がってきたからオーダーというのもありますが、体型が変わってしまったという事情もありますね。昔はA4やA5といった既成サイズにおさまったのですが(笑)。今はお店から良い生地が入ったときなどに案内があり、シーズンごとにあつらえています。

――プライベートの服装のこだわりはありますか。

暇があればサーフィンをしていますから、裸みたいなものです(笑)。自宅から自転車で5分ほど走ればもう海です。自転車にサーフボードを括り付け、短パンにベスト姿で走っています。以前は元旦から海に入り、年中サーフィンをしていましたが、今は12~3月はオフシーズンと決めています。当社は3月下旬に株主総会を開きます。それまでは何かあってはいけませんからね。

松本 彰/Akira Matsumoto
1958年生まれ、神奈川県立湘南高校、慶應義塾大学商学部卒。1981年、第一生命保険(現第一生命ホールディングス)入社。2009年白洋舍人事部長。17年3月から代表取締役常務執行役員。18年3月から現職。

text:Top Communication
photograph:Hiroshi Noguchi
make & hair styling:Tetsuya Sawada