経営に通じる服装へのこだわり
身だしなみへのこだわりは強いほうだと思います。20年間着てきたスーツを10年前に変えてからは同じブランドのスーツを着ています。小物も同じブランドの同じモデルを使っていて、レストランも一度気に入ったらそこに通い続けます。
スーツの好みはグレー系で、ネクタイはグレー系と紺系のどちらかを合わせます。季節ごとに着る服、生地を決めていて、冬物はフラノ系(毛織)のスーツで通します。
身だしなみの細かな部分にもこだわりがあります。ワイシャツの襟先は何センチ、カフス回りは何センチというように、好みのスタイルは全部決まっています。その通りでないと、どこかしっくりこない。
この性格は、今の仕事に向いているようです。多種多様な事業を営むミネベアミツミの経営トップは、日々、さまざまなことに目配り、気配りすることが求められます。先々を見据えて、スピーディに判断するには、細かいことまでこだわるかどうかが、成否を分けるのです。
日本で弁護士として社会人のスタートを切り、その後アメリカでも働いていたため、以前はアメリカントラディショナルのスーツを好んで着ていました。社長就任以降は、欧州スタイルのスーツで通しています。
弁護士時代から愛用していたサスペンダーも、上着を脱いだときの姿を相手がどう思うのかを考えて、やめました。会社を代表して人前に立つわけですから、それにふさわしいスタイルがあると考えたのです。
元気が出る服が私の勝負服
経営者は、社員に対しても、お会いする方々にも、いつも元気に若々しく見られないといけない。ですから、誠実、正直という印象を与えるよう服装に気を配っています。
海外では相手先やビジネスのことを考えてアグレッシブな服装もしますが、日本では、個性が強すぎる服装は好まれません。グレーや紺を着るのは、そういう視点からです。
決算発表や経営方針説明会などでは、経営責任者である私が元気に見られるようにと意識しています(笑)。気に入っているなかから、肉体的にも精神的にも元気が出る服を選びます。
2015年にミツミとの経営統合を発表した会見でもそうでした。そのとき選んだグレーのフラノのスーツと紺のネクタイ、このコーディネートが私の勝負服です。
愛用の逸品~長財布と名刺入れは同じモデル一筋
貝沼由久/Yoshihisa Kainuma
ミネベアミツミ代表取締役会長兼社長
1956年生まれ、慶應義塾大学法学部卒業。87年ハーバード大学ロースクール修了、日本とニューヨークで弁護士として活動した後、88年にミネベアに入社、取締役。2009年に代表取締役および社長執行役員に就任。17年より現職。
text:Top Communication
photograph:Sadato Ishiduka
hair & make:RINO