全ての時間は世界チャンピオンになるために

「私の全ての時間は、一つの目標に向かって使っています。その目標とはF1レースで世界一、チャンピオンになること。朝起きてから寝るまで、いや寝ている時間も含めて、いかにして最終的なゴールに到達するかということを考えて人生をデザインしながら時間を使っています」

そう語るのは、アルピーヌF1チーム所属のカーレーサー、エステバン・オコン選手である。幼少期からカートに親しんだオコン選手は2016年にF1にデビューを果たし、2020年には自身の出生地と同じフランスを拠点とするルノーF1チームに転籍して出走。翌2021年からは、そのルノーF1チームがリニューアルして改称したアルピーヌF1チームのドライバーとして世界中を転戦している。今年は序盤戦こそ苦しんだものの、第6戦のモナコGPで3位になり表彰台に立つと徐々に復調。10月18日現在、年間ドライバーズポイントで12位につけている。

エステバン・オコン
エステバン・オコン。1996年、フランス生まれ。幼少期にカートに親しみ2004年からレーサーとしてのキャリアをスタート。着実に実績を重ね2016年にマノー・レーシングのドライバーとしてF1デビュー。2020年にルノーF1チーム(現アルピーヌF1チーム)所属。ドライバーとしては珍しい186cmの高身長で、立ち姿はまるでモデルのよう。趣味はゲーム。鉄拳をよくプレーするそう

そのオコン選手にとって、最も意識が高まるのはやはりレースの出走時だ。

「最も緊張が張り詰めるのは土曜日、予選の出走時です。決勝で良い結果を出すためには予選がとても重要。ここから本当の戦いが始まります。予選のレースでタイムの計測が始まった瞬間から、ミスをすることなく、なおかつ最も速いラップを目指さなければならない。今このタイムの時にどこのポジションに位置しているか、10分の1秒がとても重要になってきます」

鈴鹿GP
去る9月下旬に行われた鈴鹿GPにも出走。「鈴鹿は良いイメージのサーキット」という感触のとおり健闘し、9位入賞を果たした

レース中の時間の感じ方も一定ではない。2021年、自身がF1初優勝を飾ったハンガリーGPでは、「(チームメイトの)ベッテルが後ろにいてくれたからとても速く感じた」と話す。また、自分がやるべきことに集中して走れているレースでは、時間の流れそのものを感じないことがあるそうだ。俗に言う“ゾーンに入った”状態に近いという。

「レースカーに乗った時点でゾーンに入っていなければ、それはプロとして準備不足だと思う。自分では毎回ゾーンに入れるように心がけています。それにはトレーニングや体調管理などの準備が大切ですし、あとは当日もルーティンがあって。まずウォーミングアップをして、出走の15分前になったら車の近くに行ってエンジニアやスタッフとレースの打ち合わせ。そして10分前になったら体重を測って車に乗り込む。この一連のプロセスを時間通り、間違いなくこなすのが私のルーティンです」

この時計を見るたびに時間の大切さを感じる

レースでは10分の1秒をかけて疾走し、出走前も分単位のルーティンを設けるオコン選手。そもそも時間にコンシャスなタイプのようだが、そんな彼が「1分の大切さ」を実感した時計がある。それがベル&ロスの腕時計だ。

「ベル&ロスは自分がデビューした2016年からサポートしてくれていて、私にとっては単なる腕時計ブランドではなく、もはやファミリーのような存在です。同じフランス生まれということもあり、ベル&ロスの時計を装着して世界中を転戦できることを誇りに思う。時計に目をやって秒針の動きを見ると、1分の正確性を感じると同時に、1分も無駄にしてはならないなと感じます。時間を装着しているような気分になりますね」

アルピーヌF1チーム
アルピーヌF1チームとベル&ロスは2016年にパートナーシップを締結。以来、同チームのエンジニアやスタッフはベル&ロスが製作する特別モデルを着用してレースに臨む

ベル&ロスは、航空世界のプロたちのニーズに応えるツールウォッチを掲げて1994年にパリで創業したウォッチメゾン。軽快かつあか抜けたデザインをDNAにその世界を海や陸へも広げて、2016年にはF1に参戦するルノー(現在はアルピーヌに改称)とパートナーシップを結び、特別モデルの製作を行っている。これまでは力強い印象の「BR 03」コレクションから登場することが多かったが、今年初めて、都会的に洗練された「BR 05」コレクションからその特別モデルが登場した。この新しいモデルはオコン選手のセンスとも合致したようで、普段から着用しているという。

「私が腕時計に求めるのは、精度、信頼性、スタイル、そして複雑さです。私の父はカーメカニックで、小さい頃から機械と親しむ環境で育ったので、そのプロダクトがどのように構成されているのかということに興味があります。その点、このモデルは時計の裏面から機械が眺められるのがうれしいですね」

さらに、自身のライフスタイルにぴったり合うことが気に入りの理由だ。

「スポーティーでありながらクラシックさも持ち合わせているのがいいと思いました。普段、私はスポーティーな服装が多いけれど、レーシングスーツではない一般的なスーツを着ることもあります。そういう服装でもこの時計なら合わせられる。2つのシーンに対応できるのがいいですね」

クルマの世界から着想を得た時計や、カーブランドとコラボして作られた時計は少なくないが、それらはパワフルなデザインやビビッドなカラーをまとったものが多く、オンタイムに着けるにはやや戸惑ってしまうような個性がある。その点、この「BR 05 クロノ アルピーヌ A523」は、アクティブなダイヤルデザインを柔和で洗練されたケースが包み込み、全体にスタイリッシュで軽妙な印象が漂う。オンタイムでもF1やカーレースのスピリットを感じたいなら、その選択肢の一つとして推奨するモデルである。

ベル&ロス 銀座ブティック

TEL:03‐6264‐3989

photograph:Alpine、Bell & Ross
edit & text:d・e・w