圧倒的に“赤い”時計

2018年バーゼルワールド、ウブロブースで気になったのが、真紅の外装で見る者を圧倒する「ビッグ・バン ウニコ レッドマジック」である。武将好きなら、真田の“赤備え”を、アニメ好きなら“赤い彗星”を思い出すかもしれない。それくらい、赤い。

高級時計のケースカラーといえば、長らくゴールド系やシルバー系が主流だった。しかし21世紀に入ってセラミックやカーボンなどの新素材が登場したことにより、ブラック、ホワイト、ブルーなどのケースが製造可能になってきた。そして2018年、この色の世界をさらに広げたのが冒頭のウブロの時計である。もちろんこれまでにも“赤い時計”は存在したが、それらはシリコンやラバーといった高級時計には似つかわしくない素材を用いたもの。高級時計の世界に新風を吹き込むウブロだからこそ、それら既存の素材に甘んじることはできなかったのだろう。今回新たに開発したのが、鮮やかなレッドカラーのセラミックをケースに用いた時計である。

セラミックとは無機物を焼き固めた素材のことで、端的に言えば陶磁器である。陶磁器の花瓶や食器などを想像していただくと分かりやすいだろう。青磁などがあるようにセラミックで青は表現しやすい色だが、赤というのは難度が高い色の一つとされている。そのハードルに挑んだウブロは、じつに4年の歳月をかけてレッドカラーのセラミックケースを完成させた。

陶磁器と聞くと硬度が気になるかもしれないが、一般的に腕時計で使われるセラミックはステンレススティールの5倍程度の硬度(ビッカース硬度1000~1200HV、数字が大きいほど硬い)を有し、さらにこのウブロのレッドセラミックはビッカース硬度1500HVにまで高められているという。

戦国時代、赤備えは目立つゆえに敵から狙われることも多かったが、それでも真田幸村らの軍兵が着装したのは隊の士気を高め自らを鼓舞するためだったという。現代においては政治家がスピーチ時などに着用する赤無地のパワー・タイといったところか。モチベーションを高めたい時、あるいは“ここぞ”の勝負のシーンに、目にするだけでもパワーがもらえそうな時計である。

このモデルにも注目!

「ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ 3Dカーボン」。●カーボンケース。ケース径45mm。手巻き。ラバー・ストラップ。858万円(税別・予価)。世界限定200本。2018年11月発売予定

ウブロの素材開発でもう一つ注目したい新作が「ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ 3Dカーボン」。加工が難しいカーボンの一部を膨らませるように成形し、サファイアクリスタルも同様のフォルムに。筒状のスペースに7つの香箱を配置して、約14日間のパワーリザーブを確保している。

text:Hiroaki Mizuya(d・e・w)