クロノメーターの歴史はこの時計師から始まった

機械式時計の品質基準の一つにクロノメーターというものがある。これはCOSC(スイス公式クロノメーター検定協会)が行う精度検査をクリアした時計に付与される認証である。現在のCOSCが発足したのは20世紀後半のことだが、クロノメーター自体の概念・名称は18世紀末に、英国人時計師ジョン・アーノルドが製作した「クロノメーターNo.36」を起源とする。当時、圧倒的な精度を誇ったこの懐中時計をクロノメーターと命名したという記録がいまも残されているのである。

この懐中時計を現代的に再構築したのが、ここで紹介するアーノルド&サンの「トゥールビヨン・クロノメーターNo.36」である。むろんCOSC認定のクロノメーターであり、さらにトゥールビヨンを備え、2重香箱により90時間持続を誇る。トゥールビヨンのキャリッジとスモールセコンド、さらに二つの香箱をシンメトリーに配置したレイアウト、立体的なムーブメント、丁寧に面取りされた部品など、美観の面でも特筆すべき点は多い。

「トゥールビヨン・クロノメーターNo.36」レギュラーモデル。ケース径46mm、手巻き。18Kレッドゴールド。アリゲーター・ストラップ。590万円(税別)
COSCの検査は、時計を5つの姿勢差と3つの温度下に置いて精度計測を行う。すべての条件下において日差-4~+6秒以内であれば合格。上写真は認定の証である個体番号。ケース裏から目視できる。COSCは全品検査なので、時計ごとに異なる番号が刻まれる。

かつてジョンが生きた時代、時計に求められたのは精度だった。翻って現代のライフスタイルからすれば、精度に加え長時間駆動、そして美観も欠かせない要素だろう。時代とともに時計の役割も変わるが、その本質を追求する姿勢に変わりはない。

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edit & text:d・e・w
photograph:Shoichi Kondo