歴史が時計の「格」をつくる。しかし、歴史が時間の経過と集積であるなら、作り手の熱量の大きさがそれに取って代わることがある。ショパールの「L.U.Cコレクション」はその好例といえる腕時計だ。誕生してわずか二十数年、100年200年の歴史を誇る時計メゾンが少なくない中にあってはこれは新参者に等しい。その熱量の持ち主が、現ショパール共同社長のカール・フリードリッヒ・ショイフレである。

L.U.C LUNAR ONE(L.U.C ルナ ワン)ショパール

クラシックカーのコレクターであり、メカ好きとして知られたショイフレは、自社製のムーブメントを搭載したクラシックテイストの高級時計をつくる夢を持っていた。そのために垂直統合型の本格的なマニュファクチュールを立ち上げ、オートオルロジュリー(高級時計製造)の世界に打って出る。

第1号機、「L.U.C 1860」のお目見えが1997年。スモールセコンド付き2針の自動巻き時計。シンプルでクラシックなモデルはマイクロローターで巻き上げ、ツインバレル、約65時間のパワーリザーブという性能。他ブランドや時計のプロたちが驚いたのは最初からジュネーブシール取得、COSC認定クロノメーターと、精度でも美観でも最高級のお墨付きを得て、格の高さを示していたことだ。誰が見てもショパールL.U.Cの本気度に疑いを差し挟む余地はなかったのだ。

写真は「L.U.C ルナ ワン」。2005年に初登場、その後2012年に外装がブラッシュアップされて再発表された。ムーブメントは当初より変わらず、L.U.C96.13‐L。マイクロローターで巻き上げる自動巻き。パワーリザーブは約65時間。COSC認定、ジュネーブシール取得。特徴的なのは軌道式と呼ばれるムーンフェイズ。6時位置のサブダイヤルは秒針も兼ねるが、この秒針の軸を中心として、さながら軌道をたどるように月が新月から次の新月まで1周する。122年に1日の誤差という高精度も特筆ものだ。

月齢表示のみならず、サブダイヤルの中を軌道を描くように周回するムーンフェイズ付きの永久カレンダー時計。独特のローマンインデックス、ベゼル部分のアールなど細部に凝り、格を語るうえで必須の要素であるクラシシズムとエレガンスを見事に体現している。

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edit & text:d・e・w
photograph:Shoichi Kondo