「ボーイフレンド」シリーズの初出は2015年。当初はそのモデル名からもわかる通り、マスキュリンテイストのレディースモデルとして扱われていた。けれども時代を捉えたジェンダーフリーのシンプルデザイン、その絶妙なサイズはもはやメンズ、レディースの区分すら無意味化し、後景に押しやってしまった。時代の美意識に敏感な男たちは我が物として受け入れたのだ。
写真の「BOY・FRIEND SKELTON」(ボーイフレンド スケルトン)は、直線とサークルを組み合わせ、アートと見紛う見事な造形が印象的。アールデコデザインの極みといえるだろう。見た目だけではない。自社製のスケルトンムーブメントを搭載し、パワーリザーブは55時間。リュウズにはオニキスのカボションが光る。
「J12」が登場するまで、セラミックスの高級時計などは“非常識”でしかなかった。それを常識に変えたのはシャネルだ。そして今、いまだ信じられている感性のジェンダー、そのフリー化を先取りしているのもシャネルだ。メンズ、レディースという常識的なものの見方は、とうに現実に追い越されている。シャネルの感度の良さ、美意識の高さを「ボーイフレンド スケルトン」に見る。
edit & text:d・e・w
photograph:Shoichi Kondo